第48回スーパーボウルは、NFL最強のオフェンスを誇るデンバー・ブロンコスと、最強のディフェンスを持つシアトル・シーホークスの対戦だった。

 戦前はブロンコス有利と見る向きが多かったが(かくいう私もそう)、予想に反して43対8でシーホークスの圧勝。強力なディフェンスに、脱帽である。

 成功への青写真を作ったのは、ゼネラルマネジャー(GM)のジョン・シュナイダーと、ヘッドコーチのピート・キャロルだ。

 二人とも2010年の1月に就任し、1シーズン目に7勝9敗と負け越しながらもプレーオフ進出を決め、1年目から結果を残した。

 昨今、NFLに限らずアメリカのプロスポーツの世界では「2年以内に目に見える結果を」という短期的な成果を求める風潮が強まり、GM、ヘッドコーチたちには多大なる重圧となっている。シュナイダーとキャロルは1年目に進歩を見せ、ある意味でチーム作りの時間を稼いだ。

 それからシュナイダーは、シーホークスが求める人材を明確にして、過小評価されている選手たちを、ドラフトやトレードで獲得していった。

 今回の優勝では、クオーターバックとしては180センチと小柄なラッセル・ウィルソンに注目が集まったが、他のチームが「身長が低すぎる」と敬遠し、ドラフトで指名を見送るなか、シーホークスは2012年のドラフト3巡目で彼を指名した。

 キャロルによれば「2巡目指名しても良かった」というが、シュナイダーは他のチームが動かないと見越したうえで、3巡目の方が支払う年俸が安く済む―という極めてビジネス的な判断をしたという。

 リスクはあったが、ウィルソンは他チームに指名されず、結局このドラフト指名がスーパーボウル優勝につながることになった。

 また、シーホークスはディフェンスの選手にサイズとスピードを求めた。

 相手を挑発するなど、プレー以外でも注目を集めたコーナーバック(CB)のリチャード・シャーマンは、このポジションの選手としては大柄な191センチ。

 ここしばらく、CBは身長が低くても、運動能力が抜群の選手が起用されるトレンドが続いていたが、マッチアップするワイドレシーバーが大型化した傾向をシュナイダーは読み取り、いち早く大型選手を獲得する方向に転換した。これが大成功を収める。

 シャーマンに代表されるNFLナンバーワンのディフェンスを作ったのは、GMの青写真と実行力によるところが大きい。

 アメリカンフットボールの面白いところは、競技としてまだ発展する要素が多く残されているということだ。

 シュナイダーのように、発想を変えることで天下を取ることができる。リスクを取る勇気が必要だし、ヘッドコーチとの良好な協同関係も重要だ。

 しかし、4年という限られた歳月で結果を残したシーホークスには拍手を送りたい。

 NFLは、一つのトレンドが生まれると、他のチームも一斉にそちらの方向を向く傾向が強い。シーホークスの大型ディフェンス陣は、一つの成功モデルとなり、9月から始まる来季では、あっという間に広がっていくことだろう。

 果たしてそのとき、シュナイダー、キャロルがどんな戦略を打ち出していくのか、私は楽しみにしている。

 きっと、また裏をかいてくるだろうと、予想しつつ…。(スポーツジャーナリスト 生島淳)


生島 淳(いくしま じゅん)のプロフィル

 1967年、宮城県気仙沼市出身、スポーツジャーナリスト。五輪や、米国のプロ、大学スポーツなどを中心に執筆。著書に『箱根駅伝』(幻冬舎新書)など多数。また、黒田博樹らメジャーリーガーの本の構成も担当。NHKBS1の番組『BSベストスポーツ』ではキャスターを務めている。

【写真】スーパーボウル初制覇を喜ぶ、左からシーホークスのアレンオーナー、キャロルHC、シュナイダーGM=2日(AP=共同)