アメリカンフットボールを見始めたのがNFLだったせいか、スーパーボウルが終わらないと、どうもシーズンエンドという気がしない。今季を振り返る気も起こらない。「守備範囲」の外だが、今回はスーパーボウルにまつわる話を書いてみたい。


 今年の第48回スーパーボウル、AFC王者のデンバー・ブロンコスとNFC王者のシアトル・シーホークスの戦いは、対照的なQBの対決でもある。ブロンコスのペイトン・マニングと、シーホークスのラッセル・ウィルソンは、過去の対戦チームの先発QBの中でも、多くの点で「最も差のある」2人だ。


 ▽年齢
 マニングは1976年3月24日生まれで、37歳10カ月。ウィルソンは1988年11月29日生まれで、25歳3カ月。12歳7カ月の年齢差は過去最大だ。これまで最も年が離れていたのは第43回(2009年)のカート・ワーナー(アリゾナ・カージナルス)とベン・ロスリスバーガー(ピッツバーグ・スティーラーズ)の10歳8カ月差だった。


 ▽通算パス成績
 マニングは、パス6万4964ヤードで491タッチダウン、ウィルソンは6475ヤードで52タッチダウン。この差も過去最大だ。


 ▽年俸
 正確な金額は不明だが、米国の情報サイトによれば、マニングは今季の年俸は1500万ドル、サラリーキャップへのヒット額は1750万ドル。ウィルソンは年俸52万6000ドルで、キャップヒットは68万ドル。
 プロ2年目のウィルソンはドラフト3巡指名で入団したルーキー時の契約で働いており、活躍からすれば信じられないほど年俸が安い。過去の選手を調べきれなかったが、年俸の差、約1446万ドルはおそらく過去最大だろう。


 ▽身長
 マニングは6フィート5インチの約196センチ。ウィルソンは5フィート11インチで約180センチ。身長差16センチ弱も、これまで最も大きな差となる。ちなみにウィルソンはスーパーボウル先発QBの中で、最も背の低いQBとなるようだ。これまではフラン・ターケントン(ミネソタ・バイキングス)、ジョー・サイズマン(ワシントン・レッドスキンズ)、ドリュー・ブリーズ(ニューオリンズ・セインツ)らの6フィート、183センチだった。


 ▽背番号
 マニングは18番、ウィルソンは3番。差は「15」。これも過去最大だ。
 背番号と身長を除けば、2人の差は実績の差だ。しかし差がない数字もある。それは過去2シーズンに先発した試合の勝敗数。ポストシーズンも合わせると、マニングは28勝7敗、ウィルソンは27勝9敗だ。


 私がウィルソンを初めてテレビで見たのは、2011年秋のウィスコンシン大学時代の試合だ。昨今の米カレッジフットボールは、ショットガンからのパスオフェンスが主流だが、ウィスコンシン大はパワーランが主体で、Iフォーメーションなどのセットバック隊形が多く、その中でRBを生かす術に長けたQBだった。
 プレーアクションパスが巧みで、ラッシュをかわす能力が高く、脚力もあるのに無理に走らない。なによりも常に落ち着いていた。パスを多投する攻撃ではなかったが、QBレーティング191.8は全米1位となっただけでなく、今でもNCAA1部(フットボール・ボウル・サブディビジョン=FBS)の最高記録でもある。


 このシーズン、大学フットボールには、アンドルー・ラック、ロバート・グリフィン3世という2大スターQBがいたが、私は2人よりもウィルソンの方が巧みで冷静にプレーしているとさえ思えた。しかしドラフトは3巡75位、QBでは6番目の指名だった。


 本場米国ではQBに能力以外のさまざまなものを求めがちで、身長は特に重視される。大型化する攻撃ラインの頭ごなしに守備を読み、レシーバーを探さなければならないというのが表向きの理由だが、チームの顔とも言うべきQBは「見栄え」が大事で、背の高さはその一つというのもあるのではないか。
 入団後、ウィルソンはプレシーズンゲームから大活躍し、先発の座をきっちりつかんだ。惑わされずに彼の能力を見極めた、ヘッドコーチのピート・キャロルも偉かったと思う。


 パスを決める能力という点では、マニングはNFL史上最高のQBといって間違いない。しかし試合をマネジメントし、勝つ能力では、ウィルソンは決して劣っていないと思う。スーパーボウルはきっと好勝負になるだろう。


 最後に、話を日本のフットボールに移す。マニングに相当するQBは、Xリーグ史上最強パサーと言ってもいいIBMビッグブルーのケビン・クラフトだろう。
 ウィルソンは誰か。小柄ながらパスに秀で、脚力もあり、そしてなによりも冷静で勝負強い。オービック・シーガルズの菅原俊という声もあるだろうが、私は一昨年の関学大のエース畑卓志郎の姿がウィルソンとダブる。


 4月には久々に日本代表が招集される。来年は世界選手権のシーズンでもある。社会人フットボールでプレーし、そして代表QBの座も目指す「日本のウィルソン」畑の姿を撮影したい。無理なお願いではないと思っている。(毎日新聞社 小座野容斉)

【写真】2年目でスーパーボウルに初めて出場するシーホークスのQBウィルソン=1月30日(AP=共同)