今シーズンのアメリカンフットボールも、残るのはNFLだけとなった。19日午後(日本時間20日午前)にアメリカン・カンファレンス(AFC)、ナショナル・カンファレンス(NFC)の順でチャンピオンシップが行われ、第48回スーパーボウル(2月2日)に出場するチームが決定する。


 生島淳さんが、このコーナーでAFCのデンバー・ブロンコス(第1シード)対ニューイングランド・ペイトリオッツ(第2シード)について、見どころを紹介されていた。この両チームの戦いは、ペイトン・マニングとトム・ブレイディという、卓越したQB同士の戦いでもある。ペイトリオッツはレシーバー陣の流出や負傷に悩まされたシーズンだったとはいえ、長いNFLの歴史の中でも五指に入るであろう2人のパスの達人には、プロスタイルのパス攻撃の神髄を見せてもらいたい。


 他方、NFCのシアトル・シーホークス(第1シード)対サンフランシスコ・フォーティナイナーズ(49ers、第5シード)の戦いは、似通ったバックグラウンドを持ったヘッドコーチ(HC)やQB、RBらによる、力強くハードノーズなフットボールの激突だ。


 ▽名門大から転身したHC
 シーホークスのピート・キャロル、49ersのジム・ハーボー両HCに共通するのは、前職がカレッジ名門校のHCだったということだ。
 キャロルは1999年にペイトリオッツのHCを解任され、その後2001年から09年まで、南カリフォルニア大(USC)のHCを務めた。9シーズン中7シーズンで11勝以上という「USC王朝」を築き、2004年には13戦全勝で全米王者にも輝いた(後にNCAAの規則違反で剥奪)。QBカーソン・パーマ-、DBトロイ・ポラマル、RBレジー・ブッシュらスター選手をNFLに次々に送り込んだ。


 ハーボーは2007年から10年までスタンフォード大HCを務め、2006年に1勝11敗だったチームを立て直し、2010年には12勝1敗で全米4位に導いた。DBリチャード・シャーマン、QBアンドルー・ラック、OLデービッド・デカストロらNFLの次世代を担うスターを輩出した。


 2人はともに、素質のある選手がそろう強豪校の利点を生かしたチーム作りをした。戦術に頼らず、ファンダメンタルを重視し、攻守のラインに大型の強い選手をそろえ、強固なラン攻撃と強い守備を構築。そこに優れたポケットパサーが最後のピースとして加わったシーズンは優秀な成績を残すという形だ。それは現在のシーホークスと49ersにも引き継がれている。


 USCとスタンフォード大は同じPAC10カンファレンスに所属して毎年必ず対戦するライバル校。2人がコーチとして重なった3年間は2勝1敗でハーボーに軍配が上がっている。2009年からNFLに復帰したキャロルを追うように、ハーボーもプロのHCに。
 プロに舞台を移した後の2人の対決は、3シーズンでハーボーの49ersが4勝2敗とリードしている。しかし、シーホークスの本拠地センチュリーリンク・フィールドでは熱狂的なファンによるクラウドノイズが有名だ。直近2シーズンのホームゲームに限れば、シーホークスは49ersに、42-13、29-3と圧勝している。今回はシーホークスがホームだ。


 ▽走力と勝負強さを併せ持つQB
 シーホークスのラッセル・ウイルソン、49ersのコリン・キャパニックも多くの共通点がある。先発2年目、脚力があって、冷静で勝負強いことだ。走るQBはパスがうまくないというNFLの常識がこの3シーズンほどで変わりつつある。2人はその代表格だ。
 2人はともにドラフト時にQBの中では6番目に指名と、評価は決して高くはなかった。ウィルソンはウィスコンシン大時代にロバート・グリフィン3世やアンドルー・ラックを上回って、QBのレーティングで全米1位となったが、180センチに満たない背の低さが敬遠された。
 キャパニックはネバダ大の最終学年で1シーズンにラン1000ヤードとパス3000ヤードを同時に達成したが、まだNFLに「リードオプション旋風」が起きる前で、成績は評価されなかった。


 ウィルソンはプロ2年目ながら、プレーアクションパスやパンプフェイクも得意でベテランQBのような落ち着きを見せる。ルーキーシーズンから2年で先発した32試合を24勝8敗という勝利数がNFL新記録となった。また、レーティングがルーキーシーズンから2年連続で100を超えたのも史上初だ。
 プロ3年目のキャパニックは、過去2シーズンで23試合に先発して17勝6敗と、勝率はウィルソンに匹敵する。特筆すべきは、通算で1.7%という被インターセプト率だ。3%が先発QBの目安とされ、ブレイディやマニングでもシーズンを通じて2%以下になったのは、先発として5年以上キャリアを積んでからだ。


 ▽タフでパワフルなRB
 シーホークスにはマショーン・リンチ、49ersにはフランク・ゴアというエースRBがいる。ともに3年続けて1000ヤード以上のランを記録。それほど体が大きいわけではないが、タフでパワフルなプレースタイルは共通している。相手守備が前陣強調でボックスに多数の守備選手を配置しても、タックルをはねのけ、かいくぐって前進する。


 「野獣」のニックネームを持つリンチは、トラブルメーカーだった時代もあったが、シーホークスにトレード入団後は、しっかりとチームの大黒柱になった。プレーオフも含めた過去2シーズンにランでタッチダウン(TD)を記録した試合は、チームが16勝4敗。QBウィルソンの安定したプレーもリンチのランがあってこそだ。
 9年目のベテランRBゴアは5月で31歳になる。今季の1000ヤードラッシャー13人の中では最年長だった。衰えは見えず、3年連続でオールスターのプロボウルに選出、ロジャー・クレイグの持っていたラン獲得ヤードとTDのチーム記録も更新した。足りないものはスーパーボウルの優勝だろう。


 シーホークス、49ersが所属するNFC西地区は、10年ほど前は強い地区とは言いにくいところもあった。2001年からの10シーズンで地区内4チーム中2チーム以上が勝ち越したのは2シーズンだけ。キャロルが就任した2010年にはシーホークスは7勝9敗と負け越しながら地区優勝した。
 しかし、今季は地区3位のカージナルスでも10勝6敗。最下位ラムズでも7勝9敗だ。両チームの競争がリーグ屈指の強豪地区に押し上げた。


 AFCの「マニング対ブレイディ」対決は、黄昏の趣がする。チャンピオンシップでの対決は最後になるかもしれない。しかし、シーホークス対49ersは、地区ライバルを超えて、新たなドル箱カードになっていくのではないだろうか。(毎日新聞社・小座野容斉)

【写真】49ers戦に向けてコメントする、シーホークスのキャロルHC=16日(AP=共同)