アメリカンフットボールの最高峰、NFLがいよいよ佳境を迎える。1月第1週からプレーオフが始まり、残るは4チームとなった。

 アメリカ時間の19日には、各カンファレンスのチャンピオンシップが行われ、2月2日(日本時間2月3日)に王座を決める「スーパーボウル」が開催される。アメリカのスポーツメディアはいま、NFLの話題で持ち切りだ。

 カンファレンスチャンピオンシップで楽しみなのは、AFCのデンバー・ブロンコスとニューイングランド・ペイトリオッツの顔合わせ。

 注目されるのは、ブロンコスのクオーターバック(QB)ペイトン・マニングだ。

 37歳になるマニングは、昨年の『スポーツ・イラストレイテッド』誌が選ぶ「スポーツマン・オブ・ザ・イヤー」に輝き、衰えを見せるどころか、円熟期を迎えている。

 マニングはコルツに在籍していた2006年のシーズンに一度、スーパーボウルチャンピオンに輝いているが、2011年には首のけがでシーズン全休の憂き目に遭った。その影響もあって、2012年にブロンコスに移籍。チームの司令塔に収まると、常勝チームを作り上げた。

 生まれた時代が違っていれば、マニングはすでに複数のスーパーボウル制覇を達成していたと思う。しかし、その前に立ちはだかってきたのが同じカンファレンスのペイトリオッツだった。

 その仇敵と、今週末にスーパーボウル進出をかけて争うのだから、ファンとしてはたまらない。過去10年以上にわたって「マニング対ペイトリオッツ」という構図がAFCでは展開されてきたからだ。

 私から見ると、今回の対戦は「組織」と「個人」の激突に見える。

 組織の代表が、ペイトリオッツだ。ヘッドコーチのビル・ベリチックは、父親がアメリカンフットボールのコーチで、小さい頃から家でビデオの分析をするのが習慣だった。ただし、選手としては大成せず、大学時代さえプレー経験がない。

 しかし、分析力と経験を積むことでヘッドコーチとして成功し、強力な組織を作り上げた。もちろん、マニングに優るとも劣らないQBブレイディを得たことも幸運だったが、長年にわたって好成績を残しているのは、システムが機能しているからにほかならない。

 まさに「王国」と呼ぶにふさわしい。このあたりの事情は亡きデービッド・ハルバースタムの傑作ノンフィクション「The Education Of A Coach」に詳しい。

 これに対し、マニングの場合は、コルツ時代から「個人」としてペイトリオッツに対抗しているように見えるのが面白いところ。

 もちろん、アメリカンフットボールは組織のスポーツであり、マニングはコルツ、そしてブロンコスのマネジメント、コーチングスタッフ、そして同僚の選手たちに支えられているわけだが、周囲の人間を動かしたのは、マニングという人間の存在が大きい。

 抜群のリーダーシップ、そして試合中の的確な状況判断など、見ていてほれぼれする。

 果たしてマニングという超人的な司令塔が、ペイトリオッツ相手にどんな戦いを仕掛けていくのか、興味は尽きない。

 これまでペイトリオッツとマニングの対決はレギュラーシーズン、そしてプレーオフも含めて14回あり、ペイトリオッツの10勝、マニングの4勝となっている。

 プレーオフの成績は以下の通り。

 ▽2003年AFCチャンピオンシップ

ペイトリオッツ23―13コルツ

 ▽2004年AFCディビジョナルプレーオフ

ペイトリオッツ20―3コルツ

 ▽2006年AFCチャンピオンシップ

コルツ38―34ペイトリオッツ

 ペイトリオッツの2勝1敗だが、もっとも印象深いのは2006年の試合だ。

 初めてプレーオフでペイトリオッツに勝った瞬間のマニングが、静かに喜びをかみしめていた表情が忘れられない。その勢いのまま、マニングはたった一度のスーパーボウル優勝をつかんだ。

 今季もまた、ペイトリオッツが立ちはだかる。世界中を見渡してみても、これだけ期待が高まる試合は滅多にない。

 キックオフは、日本時間の1月20日の午前5時。その時が待ちきれない。(スポーツジャーナリスト・生島淳)


生島 淳(いくしま じゅん)のプロフィル

 1967年、宮城県気仙沼市出身、スポーツジャーナリスト。五輪や、米国のプロ、大学スポーツなどを中心に執筆。著書に『箱根駅伝』(幻冬舎新書)など多数。また、黒田博樹らメジャーリーガーの本の構成も担当。NHKBS1の番組『BSベストスポーツ』ではキャスターを務めている。

【写真】スーパーボウル制覇の歓喜を分かち合うコルツ時代のQBマニング(右)とダンジー監督=2007年