11月8日、日本ボブスレー・リュージュ・スケルトン連盟が発表した、2014年ソチ冬季五輪出場を目指すボブスレー男子日本代表候補の中に、Xリーグのアサヒ飲料に所属するDL和久憲三(28)の名前はなかった。海外遠征から帰国して間もない和久に、ボブスレー挑戦とアメリカンフットボールへの思いを聞いた。


 ▽五輪への憧れ
 和久がボブスレーへの挑戦を決意したのは、ロンドン五輪が開催された昨年。「アメフトは五輪競技ではない。フットボール選手として高めてきた身体能力を生かして、この舞台に立つことはできないだろうか」。五輪に出場するために選んだのがボブスレーだった。
 「氷上のF1」と呼ばれるボブスレーは、スタートダッシュが重要な競技。さらにそりと選手の総重量が重いほど加速がつくため、パワーとスピードを兼ね備えたアスリートが重宝される。当然、フットボール選手はこの競技への適性が高い。過去には日大やリクルート(現オービック)で活躍したTEの安部奈知さんが、2002年のソルトレークシティー五輪にボブスレー日本代表として出場している。


 ▽世界との差を痛感
 スピード派のDLとして活躍してきた和久は、競技を始めた当初は手応えを感じていた。実際、日本代表選考も3次までは順調に選ばれた。だが、実際の競技に近づいていくにつれて、次々に課題が出てきたそうだ。「走る距離が長くなると自分の限界が見えてきて、走り方を変える必要に迫られた」。陸上選手にマンツーマンでコーチしてもらい、ボブスレーに適した走り方を模索する日々が続いた。
 さらに、今年の9月にラトビアに遠征した際、世界トップレベルのラトビアの選手たちを目の当たりにして衝撃を受けたという。「パワーでは絶対に負けない自信があったが、ラトビアの選手たちはスピードもパワーも自分よりはるかに上だった。やはり本物は違う」。アメフットで米国挑戦時にNFLのドラフト指名が確定しているような、フットボールのトップ選手を見た時と同じ感覚だったとふり返る。


 ▽2018年の平昌も視野
 収穫もあった。「ボブスレーは、スタート時にいかにそりに力を伝えるかが重要。そこをつきつめていく中で、フットボールでも今までスピードやパワーを十分に相手に伝えられていないことが分かった」と和久は言う。
 そして、ボブスレーの挑戦を今後も続けるのか聞くと和久はこう答えた。「(2018年の)平昌冬季五輪(韓国)も、できればボブスレーの日本代表を目指したいと思っている。けれども、その前にフットボール選手として納得のいく結果が出せるかどうか。まずは2年後のアメフトの世界選手権に日本代表として選ばれるように自分を高めていきたい」


 ▽王者に全てぶつける
 カナダのカルガリーへ遠征中に日本代表落選の知らせを聞いた和久は、その日のうちに帰国。時差ぼけも解消されないまま9日にXリーグの第2ステージを戦うチームの練習に合流すると、10日のアサヒビール戦に出場した。
 「五輪出場という目標はいったん途絶えたが、まだフットボールで日本一を目指すことができる」。アサヒ飲料は17日に長居陸上競技場で行われるオービック戦に勝利すれば、最終ステージ進出の可能性を残す。「落ち込んでいる暇はない。2年連続で負けているオービックに全力でぶつかりたい」。最後に力強くこう言った。(共同通信社 松元竜太郎)

【写真】ボブスレーに挑戦したアサヒ飲料のDL和久憲三=7月、東京都品川区