秋の北陸に咲いたブルーのビクトリーフラワー。10月27日、北陸学生秋季リーグ戦第3節で20連覇を狙った金沢大を破った福井県立大が、最終節で富山大を14-10で下し初優勝を果たした。県大がこの一戦で敗れた場合、金沢、県大、富山が3勝1敗で並び3校同率優勝となり、金沢の連覇の可能性は残っていたものの、県大が接戦を制し全勝優勝を飾った。北陸のアメリカンフットボールの歴史が動いた瞬間だった。

 ▽接戦続き
 県大は春の交流戦では26-0で富山に完勝していたが、富山も同率優勝の可能性を残していたこともあって、緊迫した展開となった。県大ショットガン攻撃を率いるエースQB塩谷圭右(3年)がけがでベンチスタートとなり、ファンブルロストなどのミスも絡んで攻めあぐんだ。一方、富山はじっくりと時間を消費しながら攻撃をすすめ、第2QにリバースフェイクからWR水島隆(4年)が36ヤードを走って先制のタッチダウン(TD)。ワンチャンスをものにした。
 ただ、県大は今季の躍進を支えたエースRB安藤賢司(2年)が先制を許した直後に同点につながるTD。金沢大との大一番でも先制された直後にリターンTDを決めた勝負強さをまたも発揮した。第4QにはWR柴田聡(4年)が勝ち越しの48ヤードTDを決め、反撃も1FGでしのぎきった。計5ファンブル4ロストとミスが目立ったが、守備陣が最後まで粘ったのが勝因だ。
 WR柴田、RB安藤の攻撃の軸が活躍する一方で、若手のWR、RB陣が要所で好プレーを見せ、エースに的を絞らせない。1、2年生が半数を占める守備陣はゲインを許しながらも容易には得点させない-。21-16金沢、21-13福井と初戦以外すべて1TD以内の差ながらも勝利をものにしてきた今季の戦いを象徴する一戦となった。梶野秀元主将(4年)は「入部以来、金沢大を倒すこと、優勝することだけを目標にしてきた。OBや支援してくれた多くの人への感謝の気持ちを勝つことで伝えたかった。それがかなった」と話した。

 ▽感無量
 県大アメフット部は1992年に創部。中野純三さん(40)=石川県在住=らが立ち上げた。現在は1部5チームだが、当時は2部リーグ制で試合を行うほど参加チームが多く、2部下位のチームに0-100で負けるほどだったという。それだけに中野さんは「部が継続してきただけでもありがたいのに、ここまで成長してくれるとは。優勝という部の念願がかなったことが創部者として何よりもうれしい」。2代目主将をつとめた宮谷太郎さん(38)は「20年前からの目標だった北陸制覇が今日達成されたと思うと感無量です」と笑顔だった。
 武田喜治ヘッドコーチ(2005年卒)は「守備では、成長してほしいと1年生も試合で使い続けながら戦ってきたがよくやってくれた。全ポジションがうまくかみあった。努力すれば勝てるということを選手たちに教えられた」と目を細める。「チームに関わっていただいた多くの方のためにも、来年以降も優勝したい」と話した。

 ▽北陸の底上げに
 県大は2001年の1部昇格から11季で2位7回と毎年のように打倒・金沢の1番手と目されてきた。それでも壁を越えられずにいた。まさかの3位となった昨季終了後から、トレーニングを一から見直して体作りをスタート、フィジカルで負けない土台をつくった。
 守備コーディネーターにはXリーグの強豪・アサヒ飲料チャレンジャーズでプレーしたOBの飯田恭崇さんが就き、今夏からは福井在住で同じチャレンジャーズの堀泰宏さんを攻撃ラインアドバイザーに迎え、教えを受けてきた。飯田さんは「技術や戦術はもちろん、チャレンジャーズの精神を伝えたつもり」という。
 県大は新入部員獲得には力を入れており、全学生数1600人ながら今季リーグで最も多い32人の部員が所属。エースRB安藤をはじめ、攻守ともに1、2年生が活躍している。
 一方、国立の金沢大は全学生約8千人にもかかわらず部員は20人。今季、苦しい戦いを強いられた要因が、部員数にあることは疑いがなく、まずはリクルーティングにも力を入れていく必要がありそうだ。
 県大メンバーは4年生3人が抜けるのみで、戦力ダウンはない。むしろ今季のようなミスは減り、プレーは洗練されていくはずで、来季以降の北陸学生をリードしていくだろう。
 東海学生との差は大きいが、連覇を目指す県立大、巻き返しを図る金沢大を中心に、北陸学生のアメフットはもうひとつ上のレベルに上がると信じている。


【近藤洋平(こんどう・ようへい)のプロフィル】
 1976年生まれ。北海道大学卒。2000年福井新聞社入社。編集局社会部などを経て、メディア・システム局で電子サービス「福井新聞D刊」を担当。大学からアメリカンフットボールを始め、在籍時は北海道4連覇、北日本3連覇。2年時に地方大学リーグによる地区対抗王座で優勝。現役時のポジションはオフェンスライン。

【写真】タイムアップの瞬間、喜びを爆発させる福井県立大の攻撃陣=撮影:Yohei Kondo