ご存知の方もいるかと思われるが、NFLプロボウルに3年連続で日本人の大学コーチが参加している。甲子園ボウルプロジェクトチームとハワイ州観光局の主導で続いてきたこのプログラム。今年は2012年シーズンの学生日本一、関学大の大村和輝氏(41)と、法大の飯塚啓太氏(28)の両コーチが選ばれた。


 プロボウルはオールスター戦で、細かい戦術などは見ることができないのはしかたのないこと。それでも、このプログラムの意義が薄れるわけではない。何と言っても世界最高峰の選手の集まるリーグのオールスターを間近で見られるというまたとない機会なのである。


 2003年から一年半の間、ハワイ大にコーチ留学をしていた大村氏は、カレッジもNFLもやること自体にさほど違いはないとしながらも、プロの選手は「頭が良く、遂行能力が高い」ことに驚いたという。昔から外国人コーチを招へいしてきたことで自身がアシスタントヘッドコーチを務める関学大も、コーチングに関しては「アメリカと遜色ないレベルにあると思う」と話した。それでも、キッキングなどは日本ではまだ「これ」という(コーチ)方法が確立されておらず、学ぶべき点は少なからずあったと語った。


 一方の飯塚氏も、ハワイ大の語学学校に通っていたことがあるという。現役時はキッカーとしてアメリカのアリーナフットボールリーグでもプレーし、現在、法大ではキッキング、オフェンス、ディフェンスと全般的に指導している。戦術などの「内容」よりも、いかにチームを準備させていくかといった「形式」の方に目が行ったという。試合本番でも「選手がどのように準備するのか。コーチらが選手にどのように言葉をかけるのか。ゲームの中身よりもそういった取り組む姿勢を見たい」と話した。


 今年で3回目となるこの日本人コーチ派遣プログラムだが、派遣されている両氏の責任はとりわけ大きいかもしれない。NFLヨーロッパがなくなり、昨年はこれまで日本人選手の海外挑戦の窓口となってきたNFLジャパンが解散し、海外リーグへのつながりがなくなりつつあるからだ。


 そんな状況だからこそ、NFLという世界最高峰のリーグの選手やコーチ、彼らの練習やゲームへの取り組みを間近で吸収し、それを持ち帰ることは、日本のフットボールの発展を止めないようにするために非常に重要なことではないか。
 プロボウル当日、大村氏と飯塚氏はそれぞれ担当のNFCとAFCに分かれてサイドラインに立つ。2人がそこで何を見聞きし、何を感じ、そしてどんなアイデアを持って帰るのか。われわれ日本人としては、フィールド上での各選手のパフォーマンスと同様に興味深い。(ジャパンタイムズ 永塚和志)


【永塚和志(ながつか・かずし)のプロフィル】
1975年生まれ。北海道出身。英字紙・ジャパンタイムズ運動部記者。担当は主に米スポーツ。フリーのスポーツライターとしても活動し、専門誌「アメリカンフットボールマガジン」(ベースボールマガジン社)等にも寄稿。

【写真】セインツのP、トーマス・モーステッドと話す関学大の大村コーチ=ホノルル、撮影:Kazushi Nagatsuka