社会人Xリーグ、X1、X2入れ替え戦が12月15日に東京・アミノバイタルフィールドで行われ、太陽ビルが警視庁を17―16で下して1部昇格を果たし、ハリケーンズは電通を10―9で退け1部残留を決めた。実力が拮抗したチーム同士の対戦は、ともに1点を争う好ゲームだった。


 初めてXリーグの入れ替え戦を訪れた。1部昇格を目指す電通キャタピラーズを見るためだ。2008年に関学大のエースQBだった加納友輔が主将を務める電通は、同じく関学大の同期のRB石田康秀、早大出身のDB坂梨夏木など学生時代にトップレベルで活躍した選手が名を連ねる。しかし、チームの体制は整備されておらず、十分な練習量も確保できていない。選手個々の能力の高さを背景に勝ち上がってきたチームだ。


 1部昇格を達成した場合に、来季は会社がチームをバックアップするという。「素材」に「環境」が加われば、チーム力は飛躍的に向上する。電通の社長は高校、大学時代にアメリカンフットボール部に在籍していた石井直氏。会社のサポートの「本気度」によっては、来季以降X1でおもしろい存在になるかもしれない。そんな思いで観戦に出かけた。


 前半はともに守備が奮闘して3―3で折り返す。後半は電通の守備がLB谷彰太(関大出)を中心に好プレーを連発してモメンタムを引き寄せると、第4クオーター早々に加納がTDパスを決めて9―3とリードを奪った(TD後のキックは失敗)。だが、第4クオーター6分50秒の場面で、タックルを受けた加納が負傷。さらに次のプレーでパントのスナップが乱れて、自陣からの守備となる。ここでハリケーンズはランとパスを織り交ぜた粘り強い攻撃で、10―9となる逆転のTDを決める。


 この時点で勝負は決まったと思った。負傷したときの様子だと、加納のこの試合での復帰が難しいのは明らかだったからだ。だが、あばら骨にひびが入っていたという主将は、痛がる様子も見せずにその後もプレーを続けた。残り1分を切って迎えた最後のドライブ。逆転への望みをつなぐロングパスがインターセプトされると、サイドラインに立ち尽くしてハリケーンズのニーダウンを見つめる加納の姿があった。


 08年の関西学生リーグ最終戦、全勝同士の立命大との一戦。スターターとして出場した加納は、前半に負傷する。意地で再びフィールドに戻ったが、最後の攻撃をインターセプトされて、試合は終了した。ぼう然とする加納の姿が5年前の試合のそれとだぶった。
 「情けなくて涙も出ない」。試合後、加納は絞り出すようにこう言った。「このメンバーなら、もっともっといいチームになる」。会社の支援という外堀が埋まっていただけに、入れ替え戦敗退の悔しさがにじんだ。


 ここ数年、Xリーグで下位チームが上位チームに勝った例はほとんどない。トップチームとそれ以外の力の差は年々開いている。多少いい選手がいても、コーチングスタッフや練習環境など総合力で大きな差があり、容易に勝てないことは明らかだ。それでも本気で上を目指すチームが増えることを願わずにはいられない。フットボールに限らず、撤退や廃部など暗い話題ばかりだからこそ、上位を脅かす下位チームの存在は、リーグを活性化させる希望の光となるはずだからだ。(共同通信社 松元竜太郎)

【写真】試合終了へのカウントダウンを見つめる電通のQB加納(中央)=15日、アミノバイタルフィールド