ロサンゼルス近郊に住むようになって、ボディービル関係の仕事をする機会に恵まれた。最初は、プロのボディービルダーのトレーニングや食事シーンをビデオで撮影、編集しDVDにして販売していた。
 カリスマトレーナーや栄養士のインタビューも撮った。アメリカ国内だけでなく、ヨーロッパにも何度も出かけた。


 そんなことが縁で、ボディービル専門誌に原稿を書いたり、アメリカに来る(日本のみならず)海外からのボディービルダーをサポートするようになった。
 大学時代に勉強した栄養学なんて、カリスマ栄養士の栄養理論に比べたら、ほんと初歩の初歩、お話しにならないレベルだった。自分の体で実験するボディービルダーの栄養学が、最も進んだ栄養学だと私は思っている。


 けれども、アメリカに来た当時は、そんな知識は全くなかった。スポーツ選手にとっても、肉、野菜、ご飯…と、バランスの取れた食事が一番だと思っていた。しかしルームメートのキャプテン「メジャー」と、ニュージャージー出身のバイスキャプテン「ジャージー」の二人は、完全なるボディービルダー食だった。


 初練習の後ジャグジーに入って、夕食は電子レンジでチンしたチキンの胸肉とブロッコリーとブドウだった。でもその日は普通に満足だった。


 翌朝、二人は早朝4時にトレーニングに出かけた。前日倒れた私は、この日は免除。自宅でゆっくりしているように言われた。「冷蔵庫の中にあるもの、なんでも食べていいからね」


 お昼近くにノソノソと起きてきて、冷蔵庫をのぞく。きのう食べたチキンの残りがちょっと、大量のサラダ(アメリカは野菜を切ってサラダになった状態でビニール袋に入って売られている)と、大量のブロッコリー、大量のブドウだけだった。
 仕方ないので、チキンをざらざらしたパンにはさんで、食べた。パンは全粒パンで美味しくないし、バターもマヨネーズもないので、ドレッシングをかけて食べるしかなかった。


 メジャーとバイスは、練習以外の日は、チームのために働いていた。あちこちを回ってスポンサーを集めたり、チケットの販売を行なっていた。
 女子のプロリーグは、チームによって形態がまちまちだ。各選手が株主というチームもあるし、チーム全員がスポンサー活動をするチーム、オーナーが全てを負担しているチームなどなど。
 「デイトナビーチ・バラクーダス」は、まだ見ぬオーナーが全てを負担していた。でもなぜかこの二人だけがチームのスポンサー集めをやっていた。


 帰ってきた二人をつかまえて「買い物に連れて行ってほしい」と頼むと、「何が欲しいの? 何でも私たちのものを使ってね。食べるものも冷蔵庫にまだまだたくさん入っているでしょ? 好きなのを食べて」と、あっさり却下された。


 「なんもないじゃん! おかしいなあ」。次の日、彼女たちが何を食べているか見張ることにした。
 早朝トレーニングの後、彼女たちが口にしたものは「プロテインドリンク」だった。そして昼寝をして、スポンサー活動の前に大盛りサラダ、途中、もう一度プロテインドリンクを飲んで、夜はチキンかツナ缶と温野菜。
 毎日好きなものを好きなだけ食べていた私にはとうてい無理な食生活だった。あちこちあさり、棚から見つけたパスタを毎日食べながら、彼女たちの買い出しの日を待った。


 そしてやっとやってきた待望の買い出しの日! スーパーでシャンプーを買おうとするも、「私たちのを使って」と、これまた却下。
 肉も赤肉は体に悪いと言われ、またもや大量に鶏胸肉を買い込むビルダー、じゃなかった女子フットボーラーたち。そして私の買おうとしたパスタも、パスタソースも彼女たちが支払ってしまい、遠慮しながらの日々はまだまだ続くのだった。


 今回は食べ物の話で終わってしまいました…。来週はアメフトの練習のお話。

【写真】ベティさんが撮ったボディビルダー、山岸秀匡さんのDVD