アトランタはアメリカでは珍しく、空港に電車が乗り入れられている。私は、電車を乗り継いでホテルに到着、無事チェックインを済ませた。入国のバタバタはあったものの、結果入国できたわけだし、一人レストランでディナーをとりながら、まずまずの出だしに一人にんまりした。


 翌日は、雪だった。アトランタでは年に1、2度は雪が降るらしい。つい先日も降雪による大渋滞で、24時間車に缶詰めになった人たちがニュースに流れていたように、アトランタに限らず、アメリカの交通機関は、雨、雪にめちゃくちゃ弱い。
 その事実を私が知ったのはこの数年後だった。トライアウトは午後7時から行なわれる。積雪は数センチ。とりあえず電車でトライアウト会場の下見に行こう。電車は「雪による安全確認」と称して、何度も止まりながら、通常の何倍の時間をかけて目的地に到着した。


 当時は、同時多発テロの前だったからか、なんのおとがめもなく、スルーで会場となる高校内に入り、見学することに成功した。
 どこにでもある普通の高校のアメフトフィールド。一番びっくりしたのは、ホームチーム用のトレーニングジムだけでなく、アウェーチーム用のジムまでもが完備されていることだった。


 数々の日本との違いに驚愕しながらも、ここで今晩行なわれるトライアウトを思うと、自然と胸が高鳴った。帰る頃には雪がやんでいたので、ダウンタウンを観光し、ホテルに戻った。


 ホテルで準備して、トライアウトへ行くためにタクシーを呼んだ。バブルの良い時代を過ごした世代の私は、日本でも飲めば必ず帰りはタクシーだったし、行きに予想の数倍も時間がかかったので、電車は時間が読めないと思った。なにより、大荷物の私はタクシーの選択しかなかった。


 昼間の雪で、路面は凍結しており、迂回に次ぐ迂回で、時間ぎりぎりにようやくトライアウト会場に着いた。最後タクシーの運転手さんがちょっと迷ったので、昼下見に来ていた私が誘導した。
 「ここ、ここで止めてください」というと、運転手さんは、「こんな危険な所では降ろすわけにはいかない」と言い出し、料金を受け取ろうともしない。ここでトライアウトがあることや昼も下見に来ていることを拙い英語で話したが、納得してくれない。


 「良く見てごらん、こんなに暗い。やっているわけがない」。押し問答が続く。いつまでもそうやっているわけにはいかないので、私は、現金を投げるように支払い、タクシーを飛び降りた。
 運転手さんが、走り去る私の後ろ姿に「何があっても僕のせいじゃないから。僕は何度もあんたに忠告したんだ」と叫んだ。最後は、「僕は警察に行きたくない!」と絶叫しながら走り去って行った。

【写真】レディコング時代のベティさんを応援する横断幕