少年のような笑顔が魅力的な人である。安田秀一、47歳。躍進を続けるスポーツブランド「アンダーアーマー」の日本総代理店「株式会社ドーム」の会長は、9月1日付で、母校・法政大学のアメリカンフットボール部監督に就任した。


 「一番は母校のため。何とかしないといけないという使命感もある」。近年低迷する名門「トマホークス」の監督になった理由を、安田はそう説明する。


 監督になってまず着手したのは「人と人との信頼関係の構築」だという。
 「大事なのは、オープンなコミュニケーション。僕が毎日いろいろやり取りできるITツールを導入している。キャプテンから返信も来る。会社だったら、当たり前にやっていること」


 自らの役割は「大学をまともな組織にすること」と言う。
 「日本の大学の体育会は縦割りで、監督を頂点にしたヒエラルキーが出来上がっている。それではいけない。自分が監督になることで、大学スポーツの改革につなげたい。フットボールは、けががつきもののスポーツ。衛生面、食事の管理などを考えると、手弁当ではとてもやっていけない」とも語る。


 指導者としての実績はある。1990年代後半、勤務していた大手総合商社を退職し、当時欧州で展開していたNFLヨーロッパへコーチ修行に出かけた。
 そこで学んだノウハウは、「アンダーアーマー」との運命的な出会いとともに、安田の企業人としてのベースになっている。


 「僕らの頃は、学生オールスターがアメリカのチームを招いて試合をするなど、アメリカが身近にあったが、今は交流すらない」
 大学4年時に、東京ドームで開催された「アイビーボウル」に日本学生選抜の主将として出場した経験は、安田にとって本場を知る上で貴重な機会になったという。


 仕事の関係で、各競技の強豪校の指導者との付き合いも多い。「(帝京大学ラグビー部の)岩出(雅之)監督は、『学生は1カ月ですごく変わる』と言っていた。強いチームは、上下関係がうまくいっている。例えば、上級生と下級生の間でお金の貸し借りをしてはいけないといったことを、学生に教える必要がある。そうした基本的なことをしっかりやると、自浄作用が働いて組織はどんどんよくなる」


 「大切なのは教育。いい教育をするにはお金がかかる。教育とスポーツは分けられない。日本の大学は、アメリカに比べて資産を有効活用していない。フットボールは大学としての総合力を競うスポーツ。『安田の法政をつぶせ』というような流れができればいい」
 歯に衣着せぬ語り口で展開する持論は、ある種爽快感がある。


 法政大学は2006年を最後に、大学日本一を決める「甲子園ボウル」で勝っていない。
 今季は、第4節を終えて4戦全勝。次節(10月29日)は、関東のライバル日本大学(3勝1敗)との大一番を迎える。


 「日大戦に向けての準備は万端。チームとしての手応えも感じている」
 昔ながらの「頑固オヤジ」や「単なる戦術家」とは全くタイプの違うリーダーの登場で、日本のアメリカンフットボール界は俄然面白くなってきた。(敬称略)

【写真】今季初戦の中大との試合でサイドラインに立った法大の安田秀一監督=撮影:seesway