東京都内のホテルで行われた記者会見。日焼けした顔に、チームカラーであるオレンジのネクタイがよく似合っていた。
 6月13日に東京ドームで開催される「パールボウル」決勝に進出したLIXILの森清之ヘッドコーチ(HC)は、久しぶりのボウルゲームを楽しみにしている。


 前身の鹿島時代からチームを率いている森HCは、京大では大型LBとして活躍。卒業後は大学の後輩、富士通の藤田智HCとともに、水野彌一前監督の「懐刀」として、「ギャングスターズ」を学生アメリカンフットボール界屈指の強豪に育て上げた。


 鹿島が撤退し、メインスポンサーがLIXILに代わった時、森HCは冷静に現状を見つめていた。決してネガティブな発言はしなかった。
 企業チームからクラブチームへ。「最初の3年はきついなと覚悟していた」と当時を振り返る。理由は、選手のリクルーティングにあった。


 「シーガルズ(オービック)もリクルートが離れて、当初はいい選手が取れなかったのを見ていた。企業チームと違って、クラブチームは(就職を保証できるわけではないので)やたらに声をかけられない」
 鹿島時代はパールボウルで8度優勝、2度の日本一に輝いた強豪は、それまでの学生を選ぶ立場から選ばれる立場に変わった。


 LIXILになって3シーズン目。チームは鮮やかに復活する。「ここまで来られたのは、(主将の)鈴木(修平)を中心にした幹部が、相当な覚悟で意識改革をした結果。何をすればいいかではなく、今やっていることをどこまでとことん突き詰められるかを追求した」という。

 QBをはじめ、米国人選手がチームの中心的な役割を果たす傾向にあるXリーグだが、LIXILには外国人選手がいない。
 森HCは言う。「売り込んでくるアメリカ人選手はいるが、条件は日本の選手と同じと話すと去っていく。フットボールだけをする、実質プロのような選手を受け入れることはしていない」


 NFLヨーロッパでのコーチ経験もある森HCには、日本代表の指揮官というもう一つの顔がある。
 「日本の選手だけで勝ちたい」という思いは、代表の強化に通じるものがある。「京大イズム」とも言える反骨精神は今も健在。「たたき上げの意地もある」と、あえて時流に逆らったチーム作りをしている。


 「去年の世界選手権でも、アメリカの選手は試合をする度にコンディションを上げていた。それに比べて、日本の選手は疲弊していった。そこには選手の『耐久性』の差を感じた」という。


 国際大会で本場米国のチームを倒す難しさは、誰よりもよく分かっている。
 「うちのチームでは、選手に負荷をかける練習を心掛けている」。社会人では珍しく、フルコンタクトでの練習を多く取り入れている背景には、心身ともにタフな選手を育てたいという願いが込められている。


 雌伏の時を経て、晴れの舞台に帰ってきた「DEERS」の、新たな取り組みに注目したい。

【写真】主力選手とともに記者会見に臨んだLIXILの森清之ヘッドコーチ(中央)=撮影:Yosei Kozano