前半は、立命が17―6で関学をリードして終えた。
 ハーフタイム。飲み物を買いにグラウンドレベルに降りると、立命の米倉輝ヘッドコーチ(HC)が自動販売機のそばで一人佇んでいた。


 「予想通り、すごい試合になりましたね」「ええ、胃が痛くなります」
 11月22日、大阪・ヤンマースタジアム長居で行われた、関西学生リーグの優勝をかけた大一番。試合の途中であれこれ聞くほど、こちらも無粋ではない。


 お茶を手に歩きだすと「セーフティーの上がりが早すぎる」と、米倉HCが他のコーチに指示を出す声が聞こえた。相手のプレーアクションパスに対して、慎重に対処しろという意味だろうと勝手に理解した。


 5階の記者席に戻るエレベーターで、今度は関学の大村和輝アシスタントHCと会う。「寒い試合です…」。いつもクールな理論派は、珍しく苦笑いを浮かべながらスポッター席がある4階で降りた。その表情は、「胃が痛い」と言いながらも、どこか余裕を感じさせた米倉HCとは対照的だった。


 試合は終始立命のペースだった。主将の田辺大介、仲里広章らチームが誇るDL陣が関学オフェンスの前に立ちはだかる。


 焦る関学はミスを連発。臙脂のユニホームが攻守に圧倒し、5年ぶりのリーグ制覇を果たした。30―27。3点差だが、内容は立命の圧勝だった。
 交流戦で関東学生リーグを制した早大に0―24で敗れるなど、春は散々だった。どん底だったチームは見事に立ち直り、大舞台でライバルを蹂躙する会心の勝利だった。


 前半に2度あった自陣ゴール前でのピンチを、ともにFGでしのいだ。ここでTDを奪われていたら、展開は違っていただろう。
 看板のDLだけでなく、奥田凌大らDB陣の活躍もあり試合巧者・関学の持ち味を封じた。


 2年生のエースRB西村七斗を中心にしたラン攻撃が面白いようにゲインを重ねる。要所で、こちらも2年生のQB西山雄斗がパスを決め、テンポよくファーストダウンを更新する。
 一度立命に傾いた流れは、最後まで変わることはなかった。


 勝っても負けても、この試合の後に米倉HCに聞きたいことがあった。それは「関学にあって立命にないものは何か」という、1年前に投げかけた問いに対する答えだった。


 2位に終わった昨シーズン。「パンサーズ」は新設された「TOKYO BOWL」に出場した。甲子園ボウルへの道を閉ざされ、目標を失ったチームはここからもう一度奮起。関東2位の法政を41―7で下し、関西の意地を示した。
 この時、東京・アミノバイタルフィールドで米倉HCに向けた質問が「関学にあって立命にないものは…」だった。


 米倉HCの第一声は「関学にあって立命にないものはまだ分からない。これからも、もがきながら探していくことになる」というものだった。


 「あの試合(TOKYO BOWL)があったから今がある。うちのチームを考える、いいきっかけになった」という。
 「関東のファンに立命のフットボールを見てほしかった」。昨年度の山本貴紀主将の記者会見での言葉は、今でもよく覚えている。なかなか言えることではない。


 今シーズンは地に足を付けたチーム作りをしてきた。「春は体作りに専念した。勝つための近道はない。結局は、一つ一つの積み重ねが大事。今日も、選手には感情に流されず等身大のプレーをしようと諭した」と米倉HCは話してくれた。


 フィジカルを徹底的に鍛え上げ、高度な戦術に落とし込む。そう、立命には立命の「流儀」があるのだ。
 関学の後追いをするなどは、強豪としてのプライドが許さないはずである。自らのスタイルを貫き、チームは鮮やかに復活した。


 パンサーズの魅力は、なんと言ってもパワフルで野性味あふれるプレースタイルにある。
 日本選手権(ライスボウル)で、最後に学生が社会人に勝ったのは、2008年度の立命である。
 伝統を受け継ぎ、抜群の守備力でレベルの高い関西を制した今年のチームは、どこか当時の「アニマルリッツ」に似ているような気がしてならない。

【写真】関学戦で選手に指示を出す立命の米倉ヘッドコーチ=撮影:seesway