「今日の敗戦は非情に悔しい。もう少しできると思っていた」。京大の西村大介監督は関大に3―40で敗れた試合を振り返った。


 10月11日、関西学生リーグの関大―京大が行われた大阪・エキスポフラッシュフィールドのスタンドは、両校のファンでいっぱいだった。
 第2節でライバル・関学大を苦しめた京大に「復活」を期待したファンや関係者は少なくない。リードする場面もあった王者・関学大との試合は16―35で敗れたが、勢いに乗って優勝候補の一角・関大と、どういう試合をするのかに注目していた。


 試合開始のキックオフ。京大は激しいタックルで関大リターナーのファンブルを誘発、そのボールを押さえ敵陣深くから攻撃権を得る。
 しかし、この絶好のチャンスに思うようにオフェンスが機能せず、パスをインターセプトされてしまう。結局得点は、その後の攻撃シリーズで挙げたFGによる3点にとどまった。


 前半、関大に何度もランプレーでロングゲインを許し、そのままエンドゾーンまで持っていかれた。「いちかばちかでアグレッシブなディフェンスを仕掛けた。サインとしては外れていなかったが、選手個々の力の差が出てしまった」。西村監督は分析した。


 「2年前に立命に勝った時より、今年関学と対戦したときの方が、いろいろな部分でチームが前に進んでいると感じた」と西村監督は言う。ただ「本当はいけないのだけれど、うちのチームのDNAがそうさせるのか、関学の青を見ると他の相手とは違う力が出る」のだそうだ。


 リーグ戦開幕前の記者会見。マイクを握った西村監督は、連盟が掲げる「今季の総観客動員目標5万人」にあえて苦言を呈した。「我々が学生時代は、関学と京大の試合だけで3、4万人入っていた。目標設定の低さに愕然としている」


 国内の学生アメリカンフットボールの歴史で、京大が世間に与えたインパクトの大きさは計り知れない。全盛期を知る西村監督は、チームの強化だけでなくフットボール界全体の発展を見据えている。
 「フットボールは、本当に面白いスポーツ。(人気が出る)ポテンシャルを持っているし、みんながいろいろ学べるスポーツでもある」。秋のリーグ戦では、なかなか実現できないが、米国のように「ホーム&アウェー」方式の導入など、さまざまなアイデアを持ち、提案している。


 「ラグビーのワールドカップでの日本代表の活躍を見ていて、元気をもらった。我々(京大)が頑張れば、フットボールって面白いなと思ってもらえるのではないか」。リーグ内の同年代の指導者と力を合わせて、フットボールを盛り上げたいという思いを打ち明ける。


 監督に就任したばかりの2012年秋。西京極での関学戦後に話を聞いた。完敗して肩を落とす学生を横目に口にした「これから大学に戻って練習です」という言葉は、今も強烈に印象に残っている。
 監督として4シーズン目。前任の水野彌一現OB会長からは「お前の思うとおりにやれ」と言われているという。


 「水野彌一という師匠は、今更ながら格好いいなと思う。何か言いたいところだと思うが『お前がチームを変えないといけない』と、一切口出しをしない」
 以前、自分は水野さんにはなれないので、180度違うやり方をすると話していたが「気がつくと、あれ、これは水野さんがやっていたな、ということがよくある」という。肩の力が抜け、指導者としてより視野が広がった、ということなのかもしれない。


 京大生の長所は「まじめさ」にあるのだという。「(タックル、ブロックなどの)ヒットする練習はきついが、それを黙々とやるのが京大のいいところ」。そうした練習を徹底して積み重ねていくチームのコンセプトは、今も昔も変わらない。


 難しい入学試験に合格して「ギャングスターズ」の門をたたく学生は、毎年60人に上るという。「九州などから、元気のある子をリクルートしている。OBの協力も大きい。国立大学の体育会のモデルになっているのでは」と、人材確保の面でも順調にチーム作りは進んでいる。


 リーグ戦はあと3試合。既に3敗の京大に甲子園ボウル出場の可能性は残されていないが、京大にしかできないことはたくさんある。37歳の青年監督は、それらを実現するために常に前を向き、挑戦し続ける。

【写真】京大OBの板井関大監督(左)と言葉を交わす西村監督=撮影:山岡丈士