東京モノレールを「大井競馬場前」で降り、馬のにおいをほのかに乗せた秋の風を感じながら、徒歩で約8分。大井第二球技場は、東京国体開催にともない、今シーズンの関東学生アメリカンフットボールリーグ前半戦の主会場になっている。


 プレスの受け付けを済ませてスタンドに上がってみると、記者席がない。これはいつものことなので、驚きはない。空いている席を探しているとぽっかりと空席が目立つ一角があった。そこにはロープが張られ、試合の運営を手伝う当番校やスカウティングの学生の席と書いてあった。最上段に学生さんが数人。座っていいかと尋ねたところ、あっさり断られた。よく見ると、通路の階段で数人の女性ファンが窮屈そうに座って試合を観戦していた。


 本末転倒である。連盟の理事の方にかけ合って、こちらはなんとか席を確保できたが、本来なら関係者がスタンドを巡回して、ファンが快適に観戦できるように配慮すべきである。どうもこうした意識が、関東連盟の方々には〝伝統的〟に欠落しているようだ。
 試合中に突然、「選手証、役員証で入場した方は芝生席で…」とアナウンスされ、すごすごと移動するのもばつが悪かろう。すべてにおいて配慮に欠けているのである。


 駆け出しの記者時代に取材した関西の学生フットボールは、当時から関東とは比べものにならないほど環境が整っていた。現在もご意見番として運営面などでアドバイスしている関学大OBの古川明さん(82)は、最後の記者が帰るまであらゆる要望に嫌な顔一つせず応えてくれた。手書きのスコアシートを、間違いがないか何度も読み合わせ、自らファクスでマスコミ各社に送信していた。米国で学んだ広告のノウハウを駆使してファンにアピールし、リーグの活性化につなげた。そうした「伝統」は、今も引き継がれている。


 思えば、関東の学生フットボールは甲子園ボウルで勝つことで「優位性」を保ってきた。「完全アウェー」の甲子園ボウルを制し、学生日本一になったチームがいるリーグこそが、学生フットボール界の「盟主」であると錯覚してきたのではないか。そこには、リーグ全体を見据えた「企業努力」は、残念ながら見えてこない。連盟幹部が先頭に立って汗を流している関西に学ぶべきことは多いと思うのだが、いかがだろうか。


 リーグ戦開幕前の記者会見に代表者が出席しない大学があるなどは、恥ずべき事態である。聞こえてくるのは内部の不協和音だけという状況は、あまりにもさみしい。

【写真】関東学生リーグの試合が行われている大井第2球技場