重厚感のある魅力的な低音は「VOICE OF FOOTBALL」と呼ばれた。落ち着いた語り口で米国のフットボールファンから絶大な人気と支持を集めたスポーツアナウンサーのパット・サマーロール氏が4月16日、心不全のため亡くなった。82歳だった。
 NFLのナンバーワンを決めるスーパーボウルの実況を16回務めた。2002年まで21年続いた名解説者ジョン・マデン氏とのコンビは、米プロスポーツの頂点に立つNFLの醍醐味を余すところなく伝えた。NFLで選手としても活躍した、極めて珍しい経歴の持ち主でもあった。


 サマーロール氏は1930年5月10日、フロリダ州レークシティーで生まれた。アーカンソー大ではDE、TE、キッカーとしてプレー。52年にドラフト4位でライオンズに入団。その後カージナルス、ジャイアンツで主にキッカーとして10シーズンNFLに在籍し、557得点をキックで記録した。
 「彼はどんなドラマチックな場面でも、さわやかな声と短い言葉で的確にそれを表現することができた。選手、コーチ、オーナーの誰からも尊敬された。ファンとの時間を大事にする、まさにキャスターの鑑だった」。親友でもあったカウボーイズのジェリー・ジョーンズ・オーナーは、米メディアのインタビューにこう答えている。


 実況アナウンサーとしての才能は、フットボールだけにとどまらなかった。ゴルフのマスターズトーナメント、テニスの全米オープンでも的確でよどみのない語り口で人気を博した。NFLフィルムズが制作した名場面を集めたビデオは、サマーロール氏のナレーションによって、どれも名作の輝きを放っている。


 同時多発テロがあった2001年シーズンを最後に第一線から退き、アルコール依存症に苦しんだ時期もある。誰もが認めるフットボール界のレジェンドも、それなりの葛藤があったようだ。


 サマーロール氏を「盟友」と呼ぶマデン氏は、こう振り返る。「長い付き合いだったが、彼とは一度も言い争いをしたことがない。決して不平不満を言わないし、常にジョークを忘れない特別な存在だった。我々にとって、彼はこれからも『VOICE OF FOOTBALL』であり続けるだろう」。昨年9月に他界した、NFLフィルムズの2代目社長スティーブ・セイボル氏に続く巨星の死は、一つの時代の終わりを感じさせる。

【写真】スーパーボウルの実況を16回務めたサマーロール氏(AP=共同)