タッチダウンを決めてはじける笑顔。“名誉の負傷”でリタイアを余儀なくされ、チームメートに慰められ引きつる笑顔。3月3日に開催されたチャリティーイベント「第1回ハドルボウル」の舞台となった川崎球場は、終日笑顔に包まれていた。


 各大学の往年の名選手が、防具を着けないフラッグフットボールで対決した。プロモーションビデオで、大会の顔として紹介されたQB松岡秀樹さん(50=日大OB)の選手宣誓でトーナメントは幕を開けた。当初、このイベントは1月14日に予定していたが、大雪で延期になった。1カ月半後に仕切り直しになったことで、各チームの練習時間が増え、それぞれが確実にチーム力をアップしていた。
 関西学生リーグ伝統の一戦「関学大―京大」、「日大―関学大」の東西ライバル対決は、当時を思い起こさせるような迫力に満ちていた。板井征人さん(42=京大OB)は、現在関大のヘッドコーチを務めている。NFLヨーロッパ(NFLE)でWRとしてプレーした経験もある。ダブルエントリーで、母校京大では31番、海外でのプロ経験のある選手を集めた「スーパードリームス」では87番をつけて登場。抜群のスピードとキャッチングで、難しいパスを鮮やかに捕球する姿は、詰めかけた大勢のファンのため息を誘った。


 年齢を重ね、体型は丸みを帯びても、走り方やパスの投げ方は変わらないものだ。松岡さんの弾丸パスにスタンドからどよめきが起こり、明大のサウスポーQB渡辺弘幸さん(47)のしなやかなフォームから繰り出されるパスは、甲子園ボウルでの勇姿を彷彿とさせた。
 プライドがそうさせるのか、試合はどれも真剣勝負。しかし、プレーが成功しても失敗しても最後は笑顔、笑顔。決勝の法大―神戸大は、優勝を決めるにふさわしいハイレベルな攻防を展開。26―14で初代王者に輝いた法大は試合終了間際、大会前の練習でアキレス腱を断裂したメンバーが、松葉杖を置いてフィールドに出たが、これは審判団の判断でプレーはかなわなかった。


 「HUDDLE(ハドル)」とは、アメリカンフットボール用語で攻守のチームが円陣を組んで次の作戦を練ることを意味する。関学大OBで大会の実行委員長を務めた堀古英司さん(47)の提案で実現した大会は、予想以上に盛り上がり、その幕を閉じた。スーパードリームスで出場した中村多聞さん(43=NFLEライン・ファイアー)が、持ち前のタレント性を発揮したオークションは大いに盛り上がった。出場選手をよく知る、スポーツアンカー近藤祐司さんのユーモアを交えたフィールド実況も、大会に彩りを添えた。「みんなの笑顔がいい。自分も楽しんだし、素晴らしいイベントだった」。審判役を買って出た日本選手権(ライスボウル)で主審を務めたこともある馬島敦さんの言葉が、この大会を総括していた。フラッグフットボールというスポーツの奥深さも実感できた一日だった。


 「ハドルだよ、全員集合!」。疎遠になっていた各大学の仲間が久しぶりに集まり、目標に向けて結束する。心地よい疲労を感じながら、夕闇迫るフィールドでは旧交を温める写真撮影が続く。何ともいい光景だった。


 最後に一言。初戦で慶大に敗れ、試合中ただ一人笑っていなかった堀古さん。スーパーアスリートぶりは健在でした。勝負は時の運とも言います。ニューヨークに戻ったら、次回の秘策を練ってください。「子どもたちに夢を与える」をスローガンに開かれたイベントで、おっさんフットボーラーも元気をもらいました。お疲れさまでした、そしてありがとうございました。

【写真】選手宣誓を務める、日大ーレナウンで活躍した名QBの松岡さん=3日、川崎球場