高層ビルが建ち並ぶニューヨークのミッドタウン。観光名所でもあるタイムズスクエアの北側に、堀古英司さんが最高運用責任者を務める「ホリコ・キャピタル・マネジメントLLC」のオフィスはある。日本を離れて20年。「フットボールは私の原点」と話す堀古さんは、その大半を生き馬の目を抜くような、ヘッジファンド運用というシビアなビジネスの世界に身を置いてきた。


 堀古さんは1984年から87年まで、関西学院大の名WRとして活躍。甲子園ボウルでの「ミラクルキャッチ」を覚えているファンは少なくないだろう。
 社会人のアサヒビール・シルバースターでも日本選手権(ライスボウル)に出場した経験がある。大学を卒業後、東京銀行(現三菱東京UFJ銀行)で為替資金部のディーラーなどを歴任。93年9月にニューヨーク支店に異動し、その傍らニューヨーク大学大学院で金融を学んだ。


 99年2月に銀行を辞め、経営学修士(MBA)を取得する1カ月前の2000年4月に現在の会社を立ち上げた。サクセスストーリーを体現してきた堀古さんは、為替市場の動向とともに、「日本のアメリカンフットボールはレベルが高いのに、なぜ広く普及しないのかがいつも気になっていた」という。


 「大学の選手やコーチは、勝つことに必死になり、一般のファンに注目してもらう仕組み作りまで手が回らない。OBも母校に行きにくい雰囲気があって、フットボールから遠ざかって行く傾向がある」。そんな現状を憂い、交流サイトのフェイスブックで「日本のアメフト復興会議」というグループを設立。登録メンバーは2月13日現在で4144人に上っている。
 大学や社会人でフットボールに携わった人材を、堀古さんは「資源」と呼ぶ。「出身校などの枠にとらわれない、自由な意見を取り上げたいという思いで『復興会議』を作った」と振り返る。


 経済アナリストとしても活躍する堀古さんは、日本の民放の番組で、ウォール街の情報をリポートし、企業での講演などで年に6、7回は帰国する。
 多忙な日々を送る中で、日本のフットボール界にとってエポックメーキングなイベントの開催を提案、自ら大会実行委員長に就任する。「ハドルボウル」と名付けられた大会は、川崎球場で各大学のOBがフラッグフットボールで対抗戦を行うという画期的なものだ。
 収益金は、「難病と闘う子どもが持つ夢の実現を手伝う」を目的に設立されたボランティア団体「Make A Wish Foundation」の日本支部にすべて寄付される。


 開催日は、当初予定していた1月14日が大雪のため中止を余儀なくされ、3月3日に仕切り直しとなったが関西学院大、京都大、立命大、日大、法大、明大など関西、関東の強豪校をはじめ23チームがエントリー。日本のフットボールシーンを彩った往年の名選手が、大会に向けて本気で練習に取り組んでいる。


 「トップリーグの試合が面白ければ、競技の人気が出ると考えている関係者は意外に多い。そうではなく、子どもや女性を取り込んで、地域を重視した普及活動が大切。今回はその一環になれば、と思っている」


 個人的な人脈もあり「ハドルボウル」は古巣である三菱東京UFJ銀行の協賛が決まった。CS局でのテレビ放送も予定されている大会は、チャリティーイベントとは思えない盛り上がりを見せている。ニューヨークで、大学時代にプレー経験のある日本企業の駐在員とフラッグフットボールを楽しむ堀古さんは、当日の天気を気にしながら、ひな祭りの日を心待ちにしている。(宍戸博昭)

※写真協力:堀古英司

【写真】2011年にフェイスブックグループ「日本のアメフト復興会議」を設立し、「ハドルボウル」の大会実行委員長を務める堀古さん