「伝家の宝刀」「お家芸」「必殺○○○」。チームを象徴するプレーや選手の得意技を表現する時に使う言葉は、ピタリとはまると気持ちいい。体操、レスリングは昔から日本のお家芸と言われている。趣の違うところではジャイアント馬場の16文キック、あしたのジョーのクロスカウンターといったところ。水戸黄門の印籠と同じで、それが出るとなぜかほっとする不思議な魅力がある。


 12月16日に行われた甲子園ボウルは、関学と法政が学生日本一を決めるにふさわしい熱戦を展開した。組織力の関西に個人技の関東が挑む構図は今年も同じだったが、劣勢を伝えられていた法政の健闘は、見る者の心を打った。17―20。3点差に泣いたトマホークスの面々の涙には、胸が熱くなった。


 法政と言えば伝統の「オプション攻撃」だ。QBがRBにボールを渡すか、自分で走るか、さらにはもう一人のRBにピッチするかを選択する、文字通りのオプションプレー。守る側からすれば、的が絞りにくく厄介な戦術である。試合後半は、この「伝家の宝刀」が関学守備をほんろうする。QBはランの得意な4年生の寺村健吾とパスがうまい2年生の近藤濯(あろう)の二枚看板。甲子園ボウルの敢闘選手に選ばれた近藤の言葉を借りれば「オプションを操れないQBは法政ではやっていけない」という。


 近年主流になっているショットガン隊形からとはいえ、勢い込んで入ってきた関学ディフェンダーをあざ笑うかのようにゲインを重ねるオフェンスは、実に小気味がよかった。「分かっていても、出されてしまう。法政のオプションはよく考えられていて、本当に怖い」。学生時代、名QBとして鳴らした関学・小野宏コーチの試合後の感想である。


 法政が初めて甲子園ボウルに登場したのは、ちょうど40年前の1972年。当時のチームは、オプションは採用していなかったがパワーの川口久、スピードの高田洋一、万能型の石井英介というタイプの違う3人のRBを擁し、強力なラン攻撃で関東のライバル日大を撃破。その勢いで関学を34―20で破り、初の日本一に輝いている。


 オフェンスラインに機動力を求めるブロッキングスキームは、長年の経験と知恵から作り上げられている。驚くほど精密にできていて、抜群の爆発力を秘めている。「伝家の宝刀」のコンセプトは脈々と受け継がれ、今でもトマホークスの攻撃の中核を担っている。1990年代前半。「オプションの申し子」と言われたQB今手義明が、導入したばかりの「フリーズオプション」を駆使し、独走TDを連発して観客の度肝を抜いたシーンは、フットボールファンの間では今でも語り草になっている。


 学生も社会人もショットガン隊形からのパスを攻撃の中心に据える近代フットボールで、オプション攻撃は少数派になりつつある。しかし、スピード豊かで華麗なグラウンドアタックに酔いしれるファンは、少なくない。弟分の法政二高も、伝統のフリーズオプションで鮮やかに復活を遂げている。一ファンとして、法政は切れ味鋭いオプション攻撃にこだわり続けるチームであってほしい。それが「HOSEI TOMAHAWKSの流儀」なのだから。

【写真】オプション攻撃を操り、ロングゲインを連発した法大のQB寺村=16日、甲子園、撮影:Yusuke Ogata