骨のきしむ音が、スタンドまで聞こえてきそうなハードタックルを決めた相手を優しく抱き起こし「God bless you」―。日大フェニックスの守備の要、米国人DEデービッド・モトゥは、強豪チームの副将を3年から任されている「サムライ」だ。


 183センチ、105キロ。守備の最前列の端に位置し、長い手脚を生かしてアウトサイドから相手QBに激しくプレッシャーをかける。宿敵・関学大に敗れた昨年の甲子園ボウルでも大活躍。広い守備範囲でチームのピンチを再三救った。「日本人なら絶対に届かないロングゲインのパターンだと思ったら、追い付かれてしまう。対戦する側としては、とても厄介な選手」。関学大のあるコーチのモトゥ評だ。


 東京・中野の合宿所でチームメートと暮らしている。毎朝納豆を欠かさず食べ、大好物は「勝つ」にあやかって「かつ丼」。プレー中もサイドラインに下がるときも、いつも全力疾走。高校野球の選手ではないけれど、見ていてすがすがしい。


 「日大でフットボールをするのは、アメリカ人にとってはとても辛いことだと思う。他のアメリカ人ならすぐに辞めているだろう。でも、自分にはこのチームのスタイルが合っている。他の大学にはない独特の厳しい規律や練習も、すべて受け入れている。なぜなら僕はフェニックスが大好きで、愛しているから」。後輩からの人望も厚い心優しいハードヒッターは、流ちょうな日本語で熱く語る。


 ハワイのホノルルで生まれた。生後1カ月で軍人だった父の転属で沖縄の嘉手納基地に移り住む。その後、母国と沖縄を行ったり来たり。小中学校時代は基地内ですごした。日本が気に入っていたモトゥは、サンディエゴの高校を卒業すると、再び日本へ。8歳から始めたアメリカンフットボールで日本一を目指すため、日大への進学を決めた。才能はすぐに開花し、1年時からレギュラーで試合に出場する。


 「ご両親の教育が素晴らしいのでしょう。今どきこんな若者がいるのかというぐらい、しっかりした考えを持っている」。日大の高橋宏明助監督は、チームのリーダー役として、モトゥに全幅の信頼を寄せいている。「自分に厳しく他人には優しく」。イラク戦争で修羅場をくぐり抜けてきた父エセキアさんの教えを、今も忠実に守っている。


 日大は、11月11日に横浜スタジアムで行われた関東学生リーグ1部Aブロックの優勝を懸けた明大戦を14―0で制した。2週間後の25日の関東大学選手権は、同じ場所でライバル法大と関東王者の座を争う。「次の試合に必ず勝って、甲子園ボウルでリベンジしたい」。法大との試合当日は、テキサスに住む最愛の母タオアさんが、息子の勇姿を見に駆けつけるという。

【写真】日大守備をけん引した副将DEデービッド・モトゥ=11月11日、横浜スタジアム