今年は誰に、どのような選手に注目すればいいのか―。毎年のように陣容が入れ替わる大学フットボールの世界で、チームの強弱を語る上で、やはりその軸となる選手の名前ぐらいは知っておきたい。


 そのような場合に使うのが、まず各連盟の「オールXXX」であろう。攻撃と守備の全ポジションにそのリーグを代表する選手の名前がズラリと並ぶ。
 かつては22人からキッキングチームを含めて25人ぐらいだったのが、近年では30人前後をリストアップするのが、普通になってきた。


 同時にこうしたリーグごとの「オールXXX」の全国版として「オールアメリカ」があるのはご承知の通り。
 それも1、2軍で終わるのもあれば、4軍までを発表するものもとさまざまである。前回ご案内した3誌でいうと、「ストリート&スミス」が1、2軍、「アスロン」が3軍まで、「フィルスティール」が4軍までと、いろいろである。


 このほか、レギュラーシーズン終了時のお楽しみとして個人賞がある。開幕時はその顔ぶれを探るのも話題の一つである。
 中でも全米のフットボール記者が投票する、最優秀選手賞の「ハイズマントロフィー」は、群を抜いて注目度が高い。


 この賞は1935年、ニューヨークのダウンタウン体育クラブで創設され、フットボール草創期の名監督ジョン・ハイズマン氏にちなんで命名された。トロフィーはボールを抱えて走路を切り開く選手の姿が彫刻されている。


 記者投票といえば、タッチダウン誌の創始者でオーナーだった後藤完夫さんが、日本で最初のハイズマン賞の投票者であったことはあまり知られていない。
 米国がフットボールを世界に広げようとしていた意図は、この時点で十分読みとれる。


 第1回の受賞者、シカゴ大のHBジェイ・バーワンジャー以来、今季は第82回を数える。これまでの受賞者はRB43人、QB33人、レシーバー5人でDB一人となっている。
 ポジションが多岐にわたり、花のある位置が限られるこのフットボールという競技では、そのシーズンを代表するプレーヤーがこうしたポジションから、最優秀選手として選出されるのは仕方のないことである。


 この片寄りを補うために、1946年にはラインの、それも内側の選手に候補を絞りOL、DL、LBあたりを対象にした「アウトランド賞」が誕生した。
 以後こうした個人賞は増える一方。各ポジションを網羅する勢いで現在に至っている。個人賞それぞれについては、今後必要に応じて紹介するが、今回はハイズマン賞の候補者に話を絞りたい。


 さてこれまでの受賞者は先に述べた通り、RBが断然多数派を占めたが、最近ではQB勢の追い上げが激しく、現在の10人差は間もなく逆転するのではなかろうかと思う。
 今世紀に入ってからでも、2001年のネブラスカ大のQBエリック・クローチを手始めにQBは13人で、RBは3人とかなり偏ってきた。したがって今年度の候補も量的にQBがかなり優勢だ。


 そのQB勢の中で注目されているのは、やはり昨季の受賞者、大西洋岸連盟(ACC)のルイビル大3年ラマー・ジャクソンだろう。2年連続受賞かどうかに、興味が集中しているからにほかならない。
 連続受賞、ハイズマン賞の長い歴史の中でその栄誉に輝いたのは、1974年、75年のオハイオ州立大のRB、アーチ―・グリフィンただ一人である。


 この年以降「連続」に挑んだ選手は、1978年のオクラホマ大のRBビリー・シムズを皮切りに8人を数えた。
 しかし翌79年、そのシムズが南加大のRBチャールズ・ホワイトに小差で敗れて以来、チャレンジャーはことごとく失敗している。


 今季のジャクソンは9選手目。成否の鍵は数字だろう。昨季は、パスで3543ヤード、自らのランで1571ヤードと合計5114ヤードをマーク。パスで30、自分が走って21、合計51TDを稼ぎ出した。今季はこの破格の記録を再現できるかどうかにかかっている。


 全米のあまたの候補者をご紹介したいが、それをやるとカタカナだらけになる。その危険を承知で何人かを並べてみる。


 QBはACCフロリダ州立大の2年、デオンドリ・フランソワーズ。南東リーグ(SEC)はオーバーン大の2年ジャレット・ステッドハム。ビッグ10はペンシルベニア州立大3年のトレース・マクソ―リー、オハイオ州立大4年のJT・バーレット。ビッグ12ではオクラホマ大の4年のベーカー・メイフィールド、オクラホマ州立大4年のメーソン・ルドルフ、テキサス大2年のシェーン・ブーシェール。太平洋12大学は多彩で南加大2年のサム・ダーノルド、UCLA3年のジョシュ・ローゼン、ワシントン州立大4年のルーク・フォーク、ワシントン大3年のジェイク・ブラウニングらの名が挙げられる。


 RB勢はペンシルベニア州立大の3年サクオン・バークリーのほかは、SEC勢が多士済々。ルイジアナ州立大(LSU)3年のダリュース・ガイス、アラバマ大3年のボー・スカボロー、ジョージア大4年のニック・チャブ、オーバーン大3年のカムリン・ペットウェーらの名が並ぶ。


 このほかレシーバー陣ではオクラホマ州立大4年のジェームズ・ワシントン。ディフェンスではアラバマ大のSSを務める3年のミンカー・フィッツパトリックの呼び声が高い。

【写真】2年連続の「ハイズマントロフィー」獲得を目指すルイビル大QBラマー・ジャクソン(右端)(AP=共同)