波乱が起きた、といっても程度問題でもある。この種の番狂わせは毎週のように起きていることだし、その組み合わせに興味がなかった人にとっては、2016年秋の単なる「色模様」の一つにすぎぬのかもしれない。


 米大学体育協会(NCAA)フットボール部門のボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)の第8週。全米ランキングをリードするアラバマ大に、ピタリとつけてきた両ランク2位、ビッグ10のオハイオ州立大が10月22日、ペンシルベニア州立大に21―24と逆転負けを喫した。


 この週はランキング校20が顔をそろえ、そのうち南東リーグ(SEC)のランク校6校が対戦する「大一番」3試合が注目されていた。
 中でも両ランキング1位のアラバマ大が、同6位のテキサス農工大を迎え撃った全勝対決が興味の的だった。しかし、古豪アラバマ大はそつのない戦いぶりで、33―14とテキサス農工大を突き放した。
 このほか21位24位のオーバーン大が両ランク17位のアーカンソー大を寄せ付けず、56―3で大勝。25位23位のルイジアナ州立大(LSU)は、23位22位のミシシッピ大に38―21で競り勝った。


 ランク外のペンシルべニア州立大がランク2位の常勝オハイオ州立大を倒したゲームは、絵に描いたような逆転劇だった。
 オハイオ州立大は第2Qに1TDと2FGで12点を先取。ペンシルベニア州立大にTDを返されたが、後半に入るとTDとセフティーの計9点を加え差を広げた。
 14点差をつけられたペンシルベニア州立大だったが、地元ビーバースタジアムを埋めた10万余の観衆の前で見事な逆転劇を演じて見せた。


 第4Qに入ってすぐ、ペンシルベニア州立大はQBトレース・マクソ―リーがゴール前2ヤードから、自らのランで差を詰め、その4分後にはオハイオ州立大陣深く攻め込み、タイラー・デービスが34ヤードのFGを決めた。


 しかし差は4点。TDがどうしても必要だった。時間がどんどん経過する中で、オハイオ州立大は45ヤードのFGを狙った。
 残り時間は4分半、ペンシルベニア州立大の守備陣がここで燃え上がった。タイラー・ダービンのキックを、FSマーカス・アレンが見事にブロック。これを40ヤード地点で手にしたCBグラント・ハーリーが、残りの60ヤードを一気に駆け抜け、貴重なTDを挙げた。


 実はペンシルベニア州立大は、私にとっては懐かしいチームである。苦杯を飲まされたオハイオ州立大のファンの方々には申し訳ないが「やはりペン州立だな」と感慨を新たにした。
 1993年にビッグ10入りするまでは東部独立校の旗頭だった。ジョー・パターノという勝利数で全米の上位に入る高名な監督がいて、白星の山を築いていた。関西では神戸の「サンテレビ」からよく放送された。


 関学の武田建さんがしゃれた解説をしておられたが、専門分野のご研究で何度目かの渡米をされるときに、つなぎに私を指名された。このようなわけでペンシルベニア州立大としばらくお付き合いした。
 白いヘルメットが印象的で、濃紺の線が縦に一本書き込まれているのが粋だった。そのチームが殊勲の番狂わせを見せてくれた、ということで満足だったのである。


 アラバマ大は全勝対決を難なく制した。立ち上がりはFGを重ねた後、TDを決めてリードした。テキサス農工大は第2Qから第3Qにかけて2TDを奪って逆転したが、第3Qからは再びアラバマ大のペース。ファンブルのリターンを含め、難なく3TDを重ねた。


 主役は1年生QBジャレン・ハーツで、164ヤードを投げて2TD。ランでは21回走って93ヤード、第4Qには1TDを記録した。
 ハーツは2週前のアーカンソー大、1週前のテネシー大、そしてこのテキサス農工大と3試合連続して6TDを挙げた。いずれもランプレーからだった。


 地元タスカルーサで、ファンはこの若いQBの活躍を生で見ることができたわけで、この日はさぞかし満足だっただろう。
 アラバマ大はトータルで452ヤード、ランは286ヤードを稼ぎ、守備ではテキサス農工大をトータル278ヤードに抑えたのは見事だった。


 ビッグ10は3位4位のミシガン大がイリノイ大を41―8で退けて東地区をばく進。西ではネブラスカ大が27―14でパーデュー大を下して土つかずの7戦全勝とした。
 ビッグ12ではオクラホマ大がテキサス工科大とまれにみる得点争いを演じ、66―59と合計125点の乱戦を展開した。全勝のウエストバージ二ア大はテキサスクリスチャン大(TCU)を34―10で破った。


 アメリカン体育連盟(AAC)では両ランク11位のヒューストン大がランク外のサザンメソジスト大(SMU)に16―38で敗れる波乱があった。
 このリーグは24位25位の海軍士官学校が注目で、この週もメンフィス大に42―28で勝った。


 中部アメリカン連盟(MAC)のウエスタンミシガン大は45―31でイースタンミシガン大に競り勝ち、白星をキープ。山岳西部連盟(MWC)は20日の木曜日、ボイジー州立大がブリガムヤング大(BYU)から28-27と際どく勝ち星を挙げた。


 太平洋12大学(Pac12)はワシントン大の独走状態が依然続き、41―17でオレゴン州立大を退けて全勝をキープした。
 19位18位のユタ大は52―45でカリフォルニア大ロサンゼルス(UCLA)を下した。昔の感覚からすると、ワシントン大の全勝はともかく、UCLAがなぜユタ大と激しい得点争いを演じた末に競り負けるのかが(ユタ大には失礼だが)いまひとつピンとこない。


 USA連盟のライス大がチャンピオン・サブディビジョン(FCS=旧1部AA)のプレアリービュー大を65-44で破り今季初白星。FBSでの全敗チームは「0」となった。

【写真】全米ランキング2位のオハイオ州立大に勝ちファンと喜びを分かち合うペンシルベニア州立大のフランクリン監督(中央)(AP=共同)