つまりイヤーブックなのだが、この1カ月余りの間に書店の店頭に並んだ米カレッジフットボールの雑誌を、3冊購入した。
 どこが強いか、注目すべきはどのチームか、とあれこれ詮索していると、あっという間に時間が過ぎ去る。今回もそんな作業の中から拾い上げた話題である。


 前回は大づかみにチームの勢力分布図を書いた。今回はどのような形で個々の選手が取り上げられているのか。専門誌3誌がピックアップした選手たちを一部紹介してみる。
 こうした雑誌は開幕前、注目の選手で表紙をを飾り、インタビューし、グループにしてその中で順番をつける。
 何を根拠にそのような扱いをするのか、理由がはっきりしている選手もいれば、それほどでもない選手もいて、結局はシーズン中の活躍が大いに楽しみ、ということになる。


 まずは「オールアメリカ」からいこう。野球で言えば「ベストナイン」。ラグビーで言えば「ベストフィフティーン」。サッカーだと「ベストイレブン」だが、アメリカンフットボールでこうした数字を使うと話が混乱する。理由を申し述べる。
 フィールドで戦う敵味方は、それぞれ11人ずつで、その意味では「イレブン」だが、ファンならこれでいいとはどなたも思うまい。同じチームに、攻撃チームと全く同格の、守備チームがあるからだ。


 では22人「ベストトゥエンティトゥー」でいかがか。いや大事な得点を担うキッカーが外れるのはどうか、パンターも忘れてはいけない。それではリターナーは? ホールダーは? と、とめどなくなる。
 こうしてベスト22、ベスト23、ベスト24などの表現は生まれることなく消え失せ、実際の呼び名は「オールアメリカ」「オールビッグ10」「オールSEC」となっていった。


 手元の3誌はすべて「オールアメリカ」または「オールアメリカン」である。それにしても膨大な数の、全米大学体育協会(NCAA)フットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)128校の選手たちの中から、よくぞポジションごとの「ベストプレーヤー」を探し出したものだと、いつも感心する。
 そして、それほど努力されたのだから、遠慮なく記事に使わせていただこう、という次第になってくるのである。


 「アスロン誌」は全体を1軍と2軍に分けた。攻撃12人と守備11人の2チームと、キッキングチームのスペシャリスト4人の名が挙がって、「ベスト27」。攻撃の内訳はQB、RB2人、WR2人、TE、C、OL4人、それにAPという選手が出てくる。直訳すると「多機能バック」。これが1人加えられている。


 ポジションというより、役割りとした方がいいかもしれない。RB、WRとなんでもこなし、とりわけキックのリターナーとして登場することが多いからだ。
 守備はDLが4人、LB3人、CBとSがそれぞれ2人。スペシャリストの項目はK=キッカーと、P=パンターのほか、キックオフリターナー(KR)とパントリターナー(PR)である。


 「スポーティング・ニューズ誌」は攻守に分けた1、2軍だけで、スペシャルチームはなく、キッカーは攻撃チームに、パンターとリターナーは守備チームに組み込まれて「ベスト25」として発表されている。


 専門誌としては歴史の浅い「フィル・スティールズ誌」は、細かい数字を載せているのが特徴の雑誌で、このオールアメリカも攻撃、守備、スペシャルの三つをそれぞれ1軍から何と4軍まで掲載している。
 攻撃チームはQB、RB2人、WR3人、TE、C、OG2人、OT2人の12人。守備チームはライン、LB、DB、いずれも4人ずつの12人。スペシャルチームは5人で、キッカー、パンターのほかキックオフリターナー、パントリターナー、そしてロングスナッパーが顔をそろえる。至れり尽くせりで、数の上では「ベスト29」と大掛かりである。


 もちろんこのようなリストに、数多くの選手を送り出しているチームは、前回ご紹介した通り、ランキングの上位に食い込んでいることが多い。
 1位のアラバマ大はQBにこそ名を出していないものの、WRのカルビン・リドリー、TEのO・Jハワード、OTのカム・ロビンソン。守備でもDEジョナサン・アレンやLBティム・ウィリアムズといったオールアメリカの選手が勢ぞろいだ。


 本物の「オールアメリカ」は、シーズン終了時にいろいろな有力組織からそれぞれ発表され、表彰されて、めでたしめでたしとなるが、もう一つ各ポジションごとの表彰もあって、これも話題として見逃せない。
 しかしあまりにも有名なのが一つあって、すべてはこの表彰式に持って行かれるので、あとどのようなのがあるのか、知られないままに、忘れられるということになる。


 有名なのはご存知の通り「ハイズマン記念トロフィー」で、1935年に始まってから毎年、表彰式はトロフィーを抱えた選手の写真とともに、大々的に報じられている。
 タイトルは「最優秀選手賞」である。といっても選ばれているのはほとんどがQBかRBで、まれにレシーバー。DBのケースも1度あった。


 しかし、こればかりは競技の性格上やむを得ないことと言える。近年、この賞ではQBの比重が一段と高くなる傾向があり、その中で、昨年のアラバマ大のRBデリック・ヘンリーの受賞などは、むしろ珍しいと言えた。


 今季はヘンリーとともに最終選考まで残ったクレムソン大のQBデショーン・ワトソン、スタンフォード大のRBクリスチャン・マカフリーらが有力候補の筆頭に名を連ねる。
 他の候補を挙げると、QBでは先に触れたオクラホマ大のベーカー・メイフィールド、オハイオ州立大のJ・T・バーレット、ミシシッピ大のチャド・ケリー、UCLAのジョシュ・ローゼン、、ベイラー大のセス・ラッセルらの名が挙がる。


 RB勢はルイジアナ州立大(LSU)のレオナード・フォーネット、フロリダ州立大のダルビン・クック、オレゴン大のロイス・フリーマンらが期待されている。


 個人賞はこのほかざっと20余りを数えるが、ハイズマン賞と並んで歴史のある「マクセル賞」をはじめ「ウオルター・キャンプ賞」など、最優秀選手を対象とする性格が同じような賞が数多くあって、ほとんどが同一選手に与えられている。今一つ盛り上がりを欠くことが多いのは、こんなところに理由がありそうだ。


 また近年は、ポジション別に表彰する方向で、次々と新しいものが出ているが、これで全ポジションをカバーできているのかどうか。ざっと当たってみると、全部ありそうにも見える。
 また選手だけではなく、監督、助監督への賞もあり、昨季は監督賞にクレムソン大のダボ・スウィニー氏が、最優秀監督に選ばれている。

【写真】昨シーズン「ハイズマン賞」を受賞したアラバマ大RBデリック・ヘンリー(AP=共同)