アラバマ大が全米大学フットボールの王座に就いた。2016年1月11日、アリゾナ州グレンデールのフェニックス大スタジアムで開催された大学フットボール選手権決勝で、選手権ランキング2位で南部の名門組織、南東リーグ王者のアラバマ大は、同ランキング1位、大西洋岸リーグ優勝のクレムソン大を45―40で破って3年ぶりのチャンピオンに輝いた。
 ニック・セイバン監督としては、2009年、11年、12年に次いで4度目の栄冠である。これで今季の通算成績はアラバマ大、クレムソン大ともに14勝1敗となった。


 全米大学体育協会(NCAA)フットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)のチャンピオンを決める方法が、選ばれた4校によるトーナメント戦の形をとるようになって、今季はようやく2年目。それまでは歴史と格式に彩られた俗に言う4大ボウルが、回り持ちで王座戦の場を提供し、さらには1試合だけの選手権戦を付け加えて、現在の形に近いものが次第に姿を現し始めていた。


 またそれ以前は、ボウル・チャンピオンシップ・シリーズといって、4大ボウルなどの結果に基づき、幾つかのランキングの最終分を計算し直して順位を決めた。
 この辺りは今世紀に入ってからだが、20世紀末にもボウルゲームの結果と王者とを直接結び付けるために、ボウルコリション(提携ボウルゲーム)あるいはボウルアライアンス(ボウルゲーム同盟)といった仕組みを作って、ランキングのみに委ねてしまわない王者の誕生目指して努力を重ねていた。


 重ねて申し上げるが、それまではランキングがすべてだった。一つは全米各地のフットボール記者らの投票によるAP通信のランキング。もう一つはAP通信のライバル社だったUPI通信が各地の高名な監督に投票を依頼し、それを集計するランキング(その後、USAツデー紙とスポーツ放送のESPNとの組織へ移行)。この二つで全米のチャンピオンが決まっていた。
 年によっては王者が食い違うのは、やむを得ないことだった。これに高名な評論家などが独自に発表するランキングなども加わった。


 AP通信が20位までのランキングを発表したのが1936年からで、UPI通信は戦後の1950年からだった。この両社のランキングを突き合わせるだけでも、食い違いが幾つもできた。1935年以前はもう論外である。


 アラバマ大が王座に就いたのを「3年ぶり」としながら、回数をお知らせしていないのは、実はここまで述べてきた通り、スパッと割り切れない点が年度によって、たくさんあったからに他ならない。
 誰もが納得できるチャンピオンは果たしてどれなのか。米大学フットボールの長い歴史の中には、あいまいな部分が山のようにありますよ、という事実を心得ていただいた上で、あらためて王座獲得の回数に触れた方がいいと思ったからである。


 今回のアラバマ大の優勝を、私が整えたデータに従って表現するとこうなる。「アラバマ大は3年ぶり、1925年の初タイトルから数えて20度目の王座に就いた」と。
 外電を訳した共同通信の記事ではたぶん「3年ぶり」の後が、外国通信社(たぶんAP)の表現に従って「6度」ぐらいになるはずである。


 超満員とはいかなかったが、7万5785人の大観衆に見守られた試合は、激しい点の取り合いに終始した。
 準決勝の2試合が、どちらも一方的になったので決勝もこうなるのではと案じたが、それは杞憂に過ぎなかった。きめの細かい試合だったとは言えないものの、互いに取っては取り返す興味深い展開となった。


 前半は14―14。第3Qが終わって、クレムソン大が24―21と3点のリード。そして第4Qは両校合わせて大量40点が記録されるという「激戦」となった。


 試合前の展望は攻撃のクレムソン大に対し、守備のアラバマ大という言葉で飾られた。NCAAのチームの統計を見ると、確かに攻撃はクレムソン大が14試合平均38・5点、510・8ヤードを稼いで15位なのに対し、アラバマ大は34・1点の422・5ヤードで39位だった。
 逆に守備はアラバマ大が失点14・4点、258・2ヤードで全米3位を占めた。クレムソン大の方は20・2失点で295・7ヤードを進まれ18位だった。


 この統計の平均値をそのまま比較するわけにはいかないが、いずれにせよ予想は接戦だった。両校合わせると85点。TDは「11」に達した。
 アラバマ大の「6」に対して、クレムソン大は「5」。FGはアラバマ大「1」でクレムソン大が「2」。ただクレムソン大は第4Qに1度、2点のコンバージョンを試みて失敗している。


 先取点はアラバマ大だった。第1Q8分25秒、ハイズマン賞のRBデリク・ヘンリーがラインの右サイドにポッカリ開いた走路を巧みにすり抜けて50ヤードを独走。エースがエースらしい走りを見せて、TDを挙げたのは貴重だった。
 一方クレムソン大はQBデション・ワトソンが大黒柱にふさわしいリードぶりで、5分42秒には右に出たWRハンター・レンフローへ31ヤードのTDパス。9秒には内側へコースを取ったレンフローへ11ヤードのパスを決めて勝ち越した。


 だがアラバマ大も譲らない。第2Qの10分14秒にはゴール前1ヤードのギャンブルでヘンリーが難なく同点のTDを挙げて、勝負を後半へ持ち込んだ。
 アラバマ大は第3Q13分21秒、QBジェイク・コーカーが自陣47ヤード地点から右のゾーンへ抜け出したTEのOJハワードへパスを決め、53ヤードのTDで21―14と勝ち越した。


 クレムソン大も10分21秒にグレッグ・ヒューゲルの37ヤードのFGで差を詰めた後、5分26秒にはゴール前1ヤードで、RBウェイン・ガリマンがラインの右をついて勝ち越しのTDを奪った。
 第4Q10分44秒、アラバマ大はアダム・グリフィスが33ヤードのFGを決めて追いついた。淡々と試合を指揮してきたセイバン監督が、ここで勝負に出た。
 アラバマ大の監督に迎えられて9季目。この間3度の全米王座に導き、最高額のサラリーを得ている監督としての真髄発揮の瞬間だったとみる。


 オンサイドキックだった。クレムソン大のダボ・スイーニー監督も油断していたわけでも何でもあるまい。しかしボールを押さえたのはアラバマ大のマーロン・ハンフリーだった。
 アラバマ大はヘンリーのランの後、すかさず決定的なプレーを畳みかけた。10秒後の10分34秒、QBコーカーから左のゾーンを駆け上がるハワードへ、51ヤードのTDパスを通したのである。


 クレムソン大はこの後、ヒューゲルが31ヤードのFGを決める。さらに追加点できれば第3Qの再現だが、流れに乗ったアラバマ大には、思いがけないビッグプレーが味方した。
 ドレークのキックオフを受けたアダム・グリフィスが95ヤードのリターンを演じたのである。38―27と11点の差がついた。決定的とはいえないまでも、ほとんどとどめといってよさそうである。


 それにしてもヘンリーの50ヤードの先取点に始まり、後半最初のハワードへ決めた53ヤードのTDパス、第4Qのオンサイドキック後の51ヤードのハワードへの2本目のTDパス、さらにはこのキックオフリターンである。ビッグプレーを連発するアラバマ大のすごさには目を見張る思いがする。


 5分2秒、クレムソン大はWRアータビス・スコットがTDパスを受けたが、2点を狙ったワトソン自らのランは失敗した。
 この後、アラバマ大はヘンリーが三つ目のTDを記録し、クレムソン大もWRジョーダン・レゲットへTDパスが通ったが、大勢には影響しなかった。

【写真】勝利を祝うスポーツドリンクシャワーを浴びるアラバマ大のセイバン監督(AP=共同)