米カレッジフットボールのレギュラーシーズンが終わった。全米大学体育協会(NCAA)フットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)は、12日の陸海両士官学校の対校戦で、今季のレギュラーシーズン全日程を終えた。
 この後は米国各地で盛大にボウルゲームが行われ、新春の11日にアリゾナ州で開かれる大学選手権決勝で2015~16年シーズンの幕を閉じる。


 陸軍士官学校と海軍士官学校の対校戦は、指折りの一戦とか、歴史的対校戦とか、その長い歴史に基づいてあれこれ飾り立てるものの、どのような試合だったのかということになると、いつもは無視して通り過ぎるのが一般的である。
 でもこれが有名な伝統の一戦であることは間違いない。今年はどうだったのか。たまには試合の中身を紹介することがあってもいいのではあるまいか。


 陸軍士官学校―海軍士官学校の定期戦は今年で116回を数える。両校はおおむねレギュラーシーズンの最後にこの試合を組み込み、締めの一戦として大事にしてきた。
 試合場所はペンシルベニア州フィラデルフィア。2003年に完成したリンカーン・フィナンシャル・フィールド(定員6万8532人)で行われる。それまでは同地のジョンFケネディ・スタジアムで開かれた。
 当時は全米最大級のスタジアムで、10万5000人の収容人員を誇った。かつてはこのスタンドが満員になり、その点でも名高い対校戦だった。


 試合は意外な展開となった。ここまで9勝2敗、ノートルダム大とヒューストン大に敗れただけで、ランキングは21位。その戦力を高く評価されていた海軍士官学校に対し、陸軍士官学校はランクとは全く無縁だ。
 その上、今季はこれまで2勝9敗。勝った相手といえば中部アメリカン連盟(MAC)の西地区で1勝11敗の東ミシガン大と、フットボール・チャンピオンシップ・サブディビジョン(FCS=旧1部AA)のバックネル大だけ。誰が見ても海軍士官学校の一方的勝利に終わりそうだった。


 それでもえらいもので、リンカーン・フィールドは6万9722人と定員を1200人ばかり上回る超満員の入りとなった。
 試合前の両校の士官候補生の行進など、この試合が持っているイベントの魅力などが観客を引き付けるのは確かだし、ファンにとっては欠くことのできないこの時期の年中行事でもある。それと同時に過去、この伝統の一戦で見られた数多くの「エピソード」から、今年もまた予想を超えた何かが起こるのでは、という期待もまた確かにあった。


 「何かが起こりそう」。この競技が持つ最大の魅力ではあるまいか。優位を予想された側も、劣勢とみられたチームも、お互いが全力を尽くして激突するときに感動が生まれる。
 もし海軍士官学校がボウルゲームの出場も決まったし、ランク入りも果たしたしと、このカードを単なる12試合目と考え、消化試合扱いしたとしたら、もはやこれが伝統の一戦だとは一切言えなくなる。
 陸軍士官学校だって同じこと。2勝しかできなかった年だからこそと、逆に燃え上がることで伝統が保たれる。


 お説教はこのぐらいにして。午後3時に始まった試合は陸軍が先制した。だから面白い。これで先々に期待が生まれる。第1Q8分31秒、ダニエル・グロシュースキが32ヤードのFGを決めて3点を先取した。
 だが海軍の反撃は素早かった。わずかこの32秒後、この4年間海軍の攻撃のすべてを支えてきたQBキーナン・レイノルズが自陣42ヤード地点からスパッと抜け出し、58ヤードを一気に走り切って逆転のTDを奪った。


 その3分48秒後、陸軍は82ヤードをドライブし、7プレー目にRBタイラー・キャンベルが29ヤードを駆け抜けて10-7と逆転した。第2Qに入ると今度は海軍が腰を据えて反撃。50ヤード線から7プレーを費やして陸軍ゴールに迫り、12分18秒にレイノルズが1ヤードを突進して、この日2本目のTDを挙げた。
 このまま推移するかに見えたが、2分8秒、QBクリス・カーターがWRエドガー・ポーへ39ヤードのパスを通し、17―14として折り返した。


 代わる代わるに点を取り合った前半とは対照的に、後半は一転守り合う展開となった。こうした時にはやはり、スター選手の能力がものをいう。
 第3Qの5分51秒レイノルズは攻守交代直後の50ヤード線からの第1プレーで、WRジャミール・ティルマンへいきなりパスを決め、そのまま逆転、決勝のTDを奪った。海軍21点、陸軍17点。これが最終スコアだった。


 チームの統計はほとんど同じ、ダウン更新の数が陸軍16で海軍は11。パスは陸軍208ヤードと海軍113ヤード。ランは陸軍が44回で137ヤード、海軍が41回で199ヤード。ボール保持時間は陸軍32分43秒、海軍27分17秒。互いにそん色のない数字が並んでいた。


 海軍士官学校はこれで2002年からのこのカードの連勝を14と伸ばして通算60勝目に達した。負け49、引き分け7である。
 立役者キーナン・レイノルズは、パスで113ヤード、1TD。自らのランでは21回走って136ヤード、2TDを記録した。併せてこの4年間、陸軍士官学校との試合は全て出場。攻撃の全部をプレーした唯一のQBとなった。


 また、第2Qの1ヤードのTDで、レイノルズは4年間通算85TDを挙げた。これはFBS,FCSを合わせて、つまり旧1部での最多TD記録である。細かく言えば、MACのマイアミ大(オハイオ州)のQBトラビス・プレンティスが1996年から99年にかけて記録した計78TDの更新である。
 既に新記録には達していたレイノルズだが、レギュラーシーズン終了のこの日、それが85に達したというわけである。面白いのはその内訳で、プレンティスはランで73、パスレシーブでは5本のTDを記録していたのに対し、レイノルズは85本すべてがランによるTDだった。なおレイノルズは「オールアメリカ」では3軍のQBに入っている。


 カレッジフットボールは、恒例の個人賞選定も次々と行われ、次いでボウルゲームに突入する。個人賞ではだれもが興味を持つハイズマン賞に、アラバマ大のRBデリック・ヘンリーが選ばれたのはご承知の通り。
 FBSのボウルゲームは12月19日(土)に開幕。日曜日とクリスマス当日を除いた各日にびっしりと予定が入り、選手権の準決勝と決勝戦を含めて合計41試合が米国の各地で開かれる。
 つまりFBS所属の128校のうち、実に80校が年末年始のイベントに出場して、それぞれが覇を競うわけだ。

【写真】伝統の一戦でボールを持って前進する陸軍士官学校のWRポー(AP=共同)