洋の東西を問わず、守備チームの健闘が勝負を左右することは、いくらでも例を挙げることができる。米大学体育協会(NCAA)のフットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)の第8週は24日まで全米各地で熱戦を展開した。


 これまでの週に比べると比較的波乱が少なく、唯一のランキング校対決は南東リーグ(SEC)のゲームで、APランキング24位のミシシッピ大が同15位のテキサス農工大に23―3と快勝した。
 互いに攻撃の出力が高いチームだが、このスコアからテキサス農工大を封じ込めたミシシッピ大の守備が光っていた、という結論が出てくる。


 APでは3位、ESPNのランクでは7位の高位にあったユタ大が、ランク外の南加大に24―42と大敗した「番狂わせ」も守備のビッグプレーからだった。
 ロサンゼルス記念スタジアムの7万2000余の観衆が見守る中で、地元の南加大は先取点は取ったものの、ユタ大にパスとランで2TDを奪われ、後手に回った。
 しかし第2Q、まずはMLBキャメロン・スミスが、ユタ大45ヤード地点でQBトラビス・ウィルソンのパスを奪って41ヤードリターン。4プレー後、RBソマ・ベヌークの1ヤードの突進で追いついた。ここから南加大のペースとなった。


 ランキングという飾りを取り払うと、南加大の方がはるかに強い、と考える人の方が圧倒的に多いだろう。先だってのテキサス大とオクラホマ大の試合ケースとは逆で、昔から南加大はランキングで飾り立てられているのが普通だった。


 その昔のイメージに立ち返った南加大は、RBロナルド・ジョーンズ二世の18ヤードのランで勝ち越すと、今度はスミスがインターセプトから度肝を抜く54ヤードの独走を演じて見せた。
 攻守にユタ大を圧倒した3連続TDだった。スコアは28―14となった。スミスは第4Qにも42―17の直後に、この日3本目のインターセプトでユタ大の反撃意欲をくじいた。チームとしては計四つのパスを奪う堅守で、これが大きな勝因だったことは言うまでもあるまい。
 キックオフ、パント、フィールドゴールといったキッキングゲームに携わるユニットを「スペシャルチーム」と呼ぶが、これもボールを持っている方を「攻」、相対する方を「守」と考えるのもありだと思う。


 大西洋岸リーグ(ACC)ではAPランク9位のフロリダ州立大が、ランク外のジョージア工科大に16―22で敗れた。この「波乱」も「守」のビッグプレーからだった。
 それも前々週のミシガン州立大―ミシガン大の対戦同様、ファイナルプレーでの大逆転である。前半を10―16で折り返したジョージア工科大は後半、フロリダ州立大の攻撃を抑え込む一方、2本のFGで追いついていた。
 延長の色は濃厚だった。ただ、フロリダ州立大は相手の38ヤード地点まで到達し、56ヤードのFGでけりをつける構えだった。


 蹴らせてなるものかと、ジョージア工科大はキッカーのロバート・アガヨに殺到し、パトリック・ギャンブルが見事にブロック。この球をDBランス・オースティンが22ヤード地点でキャッチし、そのまま78ヤードを走り切った。見事なFGリターンだった。
 アトランタのボビーダッド・スタジアムを埋めた約5万5000の観衆は大喜びだった。フロリダ州立大はついに今季初黒星を喫した。


 ACCではランキングの下位にデューク大が顔を出し、バージニア工科大と大接戦。4度の延長の末、デューク大が45―43で勝った。
 24―24で延長に入った試合は、FGとTDを代わる代わる取り合った末の第4延長、先攻のバージニア工科大がまずTDを挙げた。勝利を狙って2点のコンバージョン。これに成功すれば、デューク大にプレッシャーをかけることができる。しかしその目論見は崩れ去った。


 逆に気分的に優位に立ったデューク大は大黒柱のQBトマス・サークが、いきなりエリック・シュナイダーにパス一発。これがそのまま決まって1プレーでTD。キックでおしまいのはずだったが、なぜか2点のTFPに出てQBサークが突進。難なく2点をもぎ取った。
 この日のサークはパスはもとより、走ってもエースの貫禄を見せつけていた。チームで圧倒的最多の18回を走り、109ヤードを獲得している。蹴るよりも、と考えたのかどうか。


 ACCではこの日、クレムソン大がフロリダのマイアミ大に58―0と記録的大勝を収めた。フロリダ州立大の脱落でACCの全勝はこれでクレムソン大ただ一校。しかもワンサイド勝ちときてはやむを得ない。
 監督投票のESPNのランクは前週と同じだったが、記者投票のAPでは3ランク上がって3位に据えられた。


 全勝校を少し点検する。第8週を終えてただいま12校。内訳はビッグ10とビッグ12が各3校。このほかアメリカン体育連盟(AAC)が3校を擁している。
 あとの3チームはACCのクレムソン大のほか中部アメリカン連盟(MAC)のトリド大とSECのルイジアナ州立大(LSU)と、あちこちに散らばっている。
 LSUは4位、トリド大は20位である。太平洋12大学はこの日、ユタ大が敗れて全勝校は姿を消した。ランキングが最も高いのはここではスタンフォード大の8位。


 AACはいずれも7戦全勝でメンフィス大、ヒューストン大、テンプル大。むろんランキングの中ほどに顔を並べている。
 ビッグ10はトップのオハイオ州立大。QB争いも決着がつき、JTバーレットに落ち着いたようで、連覇に向けて、これからがいよいよ正念場となろう。
 APの6位に座るミシガン州立大もオハイオ州立大と並んで8戦全勝。西地区はアイオワ大が7戦全勝でAPの10位に頑張る。


 ビッグ12の3校はいずれも7勝で、APランクは2位ベイラー大、5位テキサスクリスチャン大(TCU)、12位オクラホマ州立大。ランクからいくとベイラー大が選手権選考の最短距離だが、なんとこの日のアイオワ州立大戦で、スターQBのセス・ラッセルが頸椎を損傷し、戦列を離れることになった。手術が必要で全治6か月という。選手の故障もまた、洋の東西を問わず、悲しい話である。


 悲しいといえばまだ勝ち星に恵まれないチームが3校。AACの中央フロリダ大が8戦全敗、ビッグ12のカンザス大と、サンベルト連盟(SBC)のニューメキシコ州立大が7戦全敗と低迷している。

【写真】ユタ大に快勝して喜ぶ南加大の選手たち(AP=共同)