「あ、やっぱり。えらいことになった」と思った。そして「しめしめ、今週はこれだな」と狙いを定めたそのとき、当方にもえらいことが起きた。愛用のパソコンが変になった。
 買ったところへ持参すると「壊れている確率が高い」「部品があるかどうか」「あっても下手をすると高くつく」「それに時間がかかるかも」と否定的な意見を浴びせられた。そこでやむなく、新しいのを買った。このため今回は10月10日中心の第6週に触れてから、第7週を紹介することになった。


 で、私が画面で目にした「えらいこと」というのはほかでもない。10日にテキサス州ダラスのコットンボウルで、テキサス大が24―17とオクラホマ大を破った試合のことである。
 カレッジフットボールに造詣の深いお方ならお分かりいただけると思う。全米大学体育協会(NCAA)のフットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)の数多いカードの中で、これぞ「伝統の一戦」と言われるものが幾つかあるのだが、この両校の対戦などは、間違いなくその中に入る。


 つまり、こうした試合は予想通りにゲームが進行せず、往々にして意外な結果を伴う。AP通信はこの試合について「番狂わせと驚きの歴史に彩られた110回目の対戦」と書いた。劣勢を予想された側が見せるプライド。それが予想を覆し、意外な結果を招く。


 オクラホマ大は開幕当初からランキングに名を連ねていた。勝ち星を着実に積み上げ、じりじりとランクを上げた。かつては豪快なランプレーのチームだったのを覚えているが、最近はQBベーカー・メイフィールドを軸としたパスが売り物という。
 ビッグ12をリードする強豪の一角にしっかり腰を据え、この日はAP通信のランクは10位だった。一方、テキサス大はこの日まで1勝4敗。むろんランクなど無縁だった。しかもこの決戦の1週前、テキサスクリスチャン大(TCU)に7―50の惨敗を喫していた。いくら「伝統」といっても今年ばかりは、というのが大方の見方だった。それが覆った。


 試合はこのところずっとコットンボウルで開かれてきた。この日はスタンドを埋めた9万1546人の大観衆の前で、テキサス大は気迫に満ちた攻守で主導権を握った。
 レッドシャツの1年生QBジャロッド・ハードがランプレーに奮闘。ゲーム序盤、自陣23ヤード地点からの攻撃を確実に進めた。一度パスをインターセプトされたが、相手の反則でドライブが続き、6分8秒、24ヤードのパスがWRマーカス・ジョンソンへ通って先制した。


 続いては守備陣がオクラホマ大のファンブルをリカバーしたのが大きく、ハードに代わるQBタイロン・スウォープスの3ヤードのTDランを生み、14―0とリードした。
 終始メイフィールドへかけ続けたプレッシャーが効果的で、実に6度のサックを記録。反撃を抑えた。テキサス大は後半、FGで差を広げ、TDパス一つを許したものの、第4Qにスウォープスが2ヤードのTDパスを決めて、差を開いた。スコアは24―17。見事な「番狂わせ」だった。


 なおこの週の波乱は、8日の木曜日のゲームで南加大が、ランク外のワシントン大に12―17と敗れ、10日の土曜日にはジョージア大もランク外のテネシー大に31―38と黒星を喫した。ランク校同士の対戦ではミシガン大がノースウエスタン大を38―0と完封し、ユタ大がカリフォルニア大に30―24と競り勝った。


 10月15日から17日にかけて行われた第7週では、ビッグ10のミシガン決戦を取り上げたい。この週はランク校同士の対戦が6試合ほどあった。シーズンが深まってくると密度の濃い日がこうして次々と出てくる。むろん接戦もあるし、一方的な試合もある。


 さて、17日に行われたこの決戦だが、競り合った末に奇跡的な幕切れを迎えた。ミシガン州アナーバーのミシガン大の本拠地として知られるミシガン・スタジアムは、例によって11万1740人の大観衆であふれかえった。
 開幕から3、4週ほど経ってからようやくランク入りしたミシガン大はこの日、リーグの優勝候補ミシガン州立大を迎えていた。ランクは無論ミシガン州立大の方が上である。試合は予想通りの大接戦。地元ミシガン大は23―21とリードし、残り4分54秒から始まったミシガン州立大の最後の猛攻を見事に耐え抜く。


 ミシガン大45ヤードまで進出したミシガン州立大は、ここでついに第4ダウンギャンブルに直面した。だが、QBコナー・クックからWRマクガレット・キングズへのパスは不成功。ミシガン大はあと1分47秒を消費すれば、めでたしめでたしとなるはずだった。
 エースのTBデバーン・スミスにすべてが託された。自陣45ヤードからのプレーで50ヤード線まで前進する。ミシガン州立大はタイムアウトで時間の消費を防ぐ。第2ダウンもスミスが2ヤードを稼いだ。ミシガン大もタイムアウトで慎重にプレーを確認、3度スミスを走らせた。1ヤードのゲインでボールはミシガン州立大の47ヤード地点へ進んだ。ミシガン大は再びタイムアウトを取って最後の1プレーに臨んだ。


 この慎重さ。しかしこれがミシガン大にとって、あだとなったのではあるまいか。第4ダウンあと2ヤード。自陣の38ヤード地点に位置したパンター、ブレーク・オニールへのスナップは低かった。ボールをお手玉した豪州生まれのオニールは相手を避けて外へ回り込んだが、蹴ることはできなかった。
 ボールが浮いた。オニールに殺到したジャレン・ワッツ・ジャクソンが、この球を右手で受け、まるで赤子のように抱え込んで、ミシガン大のゴールめがけて走り出した。見事なブロックが二つ、ジャクソンを助けた。


 エンドゾーンに描かれたトウモロコシ色の「M」(ミシガン大のロゴ)の上に倒れこんだジャクソンを祝福して、ミシガン州立大のチームメートが山を作った。38ヤードのファンブルリターンである。TFPは無論必要なし。スコアは27―23だった。なお殊勲のジャクソンは試合後、そのまま病院へ担ぎ込まれた。チームメートの喜びの山の中で腰を痛め、場合によっては手術も、という。


 2年前の2013年11月30日。最終プレーで、アラバマ大のFGミスをオーバーン大がリターンして、34―28と逆転勝ちしたシーンを思い出す人はさぞ多いことだろう。
 試合後、記者に囲まれたマーク・ダントニオ監督は「米国でフットボールに人気がある理由はこんなところにあるのだよ」と、上機嫌だった。


 ビッグ10ではこのほかオハイオ州立大がQBのJTバレットのリードで、ペンシルベニア州立大を38―10と退け、上り調子のアイオワ大はノースウエスタン大を40―10で下し、ミシガン州立大と並んで全勝を守った。


 組み合わせから見ても、ランキングの高さから言っても、南東リーグ(SEC)のルイジアナ州立大(LSU)とフロリダ大の対戦は、この日の目玉だろう。
 その期待通り、両校は一歩も譲らず28―28で第4Qへ。ここでLSUはキッカーを兼ねるトレンド・ドマングが16ヤードを走って決勝のTDを挙げ、リーグでただ1校、全勝をキープした。


 本領発揮のアラバマ大は立ち上がりから攻守にテキサス農工大を圧倒。インターセプトのTDに続く55ヤードの独走とビッグプレーを重ね、41―23と快勝した。フロリダ大、テキサス農工大はともに今季初黒星。
 このほか名門ミシシッピ大がアメリカン体育連盟(AAC)のメンフィス大に24―37で敗れる波乱が起きた。2TDで先手を取ったが、この後3TD、1FGを連続して奪われた。


 ビッグ12は、オクラホマ大が汚名返上とばかりにQBメイフィールドの大活躍でカンザス州立大から大量55点を奪い、守備は完封を記録した。
 ランク上位のベイラー大とTCUは攻撃こそすべて、と相変わらずの試合ぶり。ベイラー大は62―38で西バージニア大を、TCUは45―21でアイオワ州立大を退け、オクラホマ州立大とともに3校土つかず。


 太平洋12大学はスタンフォード大がカリフォルニア大ロサンゼルス(UCLA)を56―35で下し、北地区の主導権争いを一歩リード。南ではユタ大がアリゾナ州立大に34―18で勝った。
 ユタ大はランキングではAP通信の1位票16を獲得、3位につけている。南加大はノートルダム大との伝統の一戦に臨んだが、第3Qに1TDをリードしたものの、第4Qに17点を奪われて31―41で涙をのんだ。山岳西部連盟(MWC)では、ユタ州立大がボイジー州立大を52―26で破る殊勲の星を挙げた。

【写真】逆転のファンブルリターンTDを挙げたミシガン州立大DBジャクソン(20)を、チームメートがエンドゾーンで手荒く祝福する(AP=共同)