私の仕事はAP通信の記事を開くことから始まる。まずは「目次」として主だった競技名が並んでいる。フットボールの項目を選び、さらに全米大学体育協会(NCAA)フットボールをクリックする。するとランキングチームの成績と、主な試合の記事とが並んで出てくる。その記事の下には、囲みで短い言葉が10ほどひとまとめになっている。


 ベスト25の成績表は全体を知る大切な項目なので、真っ先に目を通し、番狂わせはないか、大一番の成行きはどうか、というところを真っ先に頭へ入れる。
 次いでトップ記事の見出し。囲みも必ず見る。今週、つまりNCAAフットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)の第5週の主だった試合の献立のようなものだからだ。


 1部Aの第5週は10月1日から3日まで、全米各地で行われた。中身の点検にこの短い「メニュー」は判断の大事な指針になる。この日も「どれどれ」とチェックを始めたものの、1箇所でハタと止まってしまった。
 ビッグ10で、ランク外のアイオワ大がAPランキング19位のウィスコンシン大に勝った試合を表す「言葉」である。


 「アイオワは4TOを力に、19位ウィスコンシンを下す」とまあこんな言葉である。不勉強な私は「TO」という略語を知らなかった。「タイムアウト」というのはすぐ思いついたが、ここにその言葉を当てはめてみたところで、かえって意味不明になるばかりである。分からぬものは仕方がない。記事そのものを開けた。


 いきなり答えそのものが出た。「ターンオーバー」である。「なーんだ」と思った。そして海の向こうでは「TURNOVER」を略して「TO」と表現することがあるのを、このとき初めて知った。
 執筆者の一員でありながら、いささか間抜けな話である。念のためフィルスティールズ誌の目次のページに載っている「略語一覧表」を見ると「TO」は「ターンオーバー」または「タイムアウト」とあった。


 かなり昔になるが、まだ現役のスポーツ記者だったころ、部長に頼まれて旺文社の辞典づくりを手伝ったことがある。無論、フットボール関連用語の定義づけで、相当の分量をこなした。
 懐かしい思い出が残るが、今、この辞書を開けてみると、残念ながら「turnover」もしくは「turn over」を、フットボール関連用語として採用していないのが分かった。


 当時は用語としては認識されていたものの、「インターセプト」と「ファンブルリカバー」をまとめて「ターンオーバー」とするケースが少なかったせいではないかと思う。
 ただ共同通信社編集の「運動用語仮名表記」には、スポーツ全般用語として「ターンオーバー」が載る。向こうの発音に近い「ターノーバー」に切り替えるかどうかは、今後に待たねばならない。


 ま、堂々の市民権を得ているわけではないが、タッチダウンを「TD」と表記するのと同様に、ターンオーバーをTOとする日も意外に近いのかもしれない。
 ルールブックにはない言葉で、これを定義づけるとすれば、守備側から見れば「相手の攻撃権を奪い取ること」となるし、攻撃側から見れば「相手に攻撃権を奪われること」になる。そのどちらになるかも今後にかかる。さ、いつまでもわき道をうろうろするのは、これでおしまい。


 この試合は3日正午(東部標準時)からウィスコンシン州マジソンのキャンプ・ランドール・スタジアムに8万933人の、定員を大幅に超える観衆を集めて行われた。
 ランキングには出てこなかったが、アイオワ大もこの日まで4戦全勝で、勝ち星ではウィスコンシン大と並んでいた。いわば西地区の主導権争いでもあった。


 ゲームは守り合いの様相を見せた。ウィスコンシン大は自陣44ヤードからの最初のドライブを慎重に運び、5分2秒、12プレーを費やした末に、ブラジル出身のサッカー選手、ラファエル・ガガリアノンが46ヤードの先制FGを決めた。
 しかしアイオワ大は第2Qの残り5分14秒、リーグを代表するCBのデズモンド・キングがウィスコンシン大のQBジョエル・スティーブのパスを、相手の46ヤード地点でインターセプト。15ヤードをリターンした。


 アイオワ大最初のターンオーバーだった。相手陣31ヤード、この絶好の得点機をアイオワ大は逃さなかった。2分15秒後、数えて5プレー目、ゴール前1ヤードからQBのC・Jビザードがジョージ・キットルへTDパスを決め、7―3と逆転した。続くキックオフはタッチバックとなった。


 前半の残り時間は3分を切っていた。ドロップバックしたウィスコンシン大のQBスティーブは、ここでアイオワ大のDEのネート・マイアーのタックルを浴びた。
 ボールがその手からこぼれた。マイアーが自らその球をリカバーした。相手陣15ヤード地点での、二つ目のターンオーバーだった。
 しかしアイオワ大はボールを1ヤード進めただけで、第4ダウンに直面した。残り1分3秒、少し下がった場所から、マーシャル・ケーインが33ヤードのFGを決めて折り返した。


 後半、ウィスコンシン大はQBスティーブのパスを中心に反撃に転じた。1プレーか2プレーでダウンを更新するリズミカルな攻撃で、追いつくのも時間の問題と見えた。ところがここで三つ目のターンオーバーが出た。
 主役は再びキングである。31ヤード地点からスティーブが投げたパスを、11ヤード地点で奪い取ったのである。相手のリズムを断つ貴重なインターセプトだった。


 ウィスコンシン大に次の機会は訪れなかった。自陣45ヤードから始めた次のドライブには、もう先ほどのような勢いもリズムもなかった。4分26秒を費やし、10プレーをかけて進んだのはわずか27ヤード。結局は46ヤードのFGにとどまった。


 得点はアイオワ大の10―6。第4Q、4点差を追うウィスコンシン大は最後の猛反撃に出た。まずは守備陣。LBのジョー・ショーバートがビザードにタックルを浴びせてファンブルを誘い、その球を自らアイオワ陣27ヤード地点で押さえてお膳立てした。
 WRのデレク・ワットがランで3ヤードほど稼ぎ、次いでQBスティーブがTEオースティン・トレイラーへ13ヤードのパスを通し、ゴール前11ヤード。ここでアイオワ大の守りのかなめのキングが手痛いパスインターフェアを犯し、ボールは一気にゴール前4ヤード地点まで進んだ。


 ウィスコンシン大はRBタイワン・デールが3ヤードを進んだあと、QBスティーブがボールを手にした。しかし、アイオワ守備陣に追われたスティーブはどうしたことか、またもファンブル。これをアイオワ大のDTフェイス・エカキティエが5ヤード地点で押さえた。
 間違いなく四つ目のターンオーバーが記録された。とりわけTD寸前にまで迫っていた最後のファンブルは、逆転も夢ではなかっただけに、悔やんでも悔やみ切れまい。
 アイオワ大はこれでランク入りし、ウィスコンシン大はランクから姿を消した。


 ターンオーバーの話でかなりスペースをいただいてしまったが、このほかの大試合も簡単に触れておく。まずはビッグ10から。
 問題はランキング1位のオハイオ州立大だ。ランク外のインディアナ大を相手に順調に試合を進めていたが、終盤激しく追い上げられて34―27と薄氷の1TD差の逃げ切りとなった。その結果AP、ESPNの両ランクとも1位票を大きく減らしたものの、まだ首位である。


 ランク2位のミシガン州立大は、パーデュー大に食い下がられ、24―21の辛勝。こちらは遠慮なく2位から落とされた。西地区のもう1校のダークホース、ノースウエスタン大はミネソタ大を27―0と完封して全勝を守った。
 このほかようやくランク入りしてきたミシガン大がメリーランド大を28―0と完封した。2試合連続である。


 以前、米国では全勝の価値が大いに認められる話をしたが、完封も同様であることを思い出した。完封の場合は同時にその逆、つまり1点も取れなかった側の屈辱も大きい。ミシガン大はたぶん胸を張っていることだろうが、これからの道のり、決して楽ではない。


 ビッグ12はテキサスクリスチャン大(TCU)がランクの2位に戻ってきた。エースQBのトレボン・ボイキンが本領を発揮。テキサス大から5TDを挙げて、50―7と大勝した。
 ベイラー大も同様に大量得点した。ただこちらは失点も多く、テキサス工科大との試合は63―35だった。
 15位14位のオクラホマ大は23位21位の西バージニア大を44―24で撃破した。由緒ある古豪である。その昔は必ず全米の王座争いに顔を出していたチームだが、最近ではあまり強くないことが多い。 でもこうして土つかずの成績で登場すると、かつての無敵時代がよみがえりそうでもある。このほかオクラホマ州立大が36―4と小差でカンザス州立大を退けたゲームも話題となった。


 南東リーグ(SEC)では両ランク13位のアラバマ大が、8位6位のジョージア大に38―10と快勝した。復活の兆しを感じる。
 25位22位のフロリダ大が3位5位のミシシッピ大を偶然同じスコアの38―10で破る番狂わせも起きた。もう一つのランク校同士の対戦は14位15位のテキサス農工大が30―17で21位22位のミシシッピ州立大を下した。


 9位8位のルイジアナ州立大(LSU)は、東ミシガン大を相手に44―22で勝ち、フロリダ大、テキサス農工大とともに全勝を守った。


 大西洋岸リーグ(ACC)はアトランティック地区の2強が全勝を続けている。11位9位のフロリダ州立大はウェークフォレスト大を24―16で退けた。このカードにすれば接戦である。12位11位のクレムソン大は、独立校の6位7位ノートルダム大の反撃をかわして24―22で逃げ切った。


 太平洋12大学では7位10位に進んでいたカリフォルニア大ロサンゼルス(UCLA)が、ランク外のアリゾナ州立大に23―38で敗れ、初黒星がつく波乱が起きた。
 18位20位のスタンフォード大は、アリゾナ大に55―17の大勝。ユタ大と並んで全勝の両ランク24位のカリフォルニア大は、34―28でワシントン州立大を退けた。
 全勝校は20。勝ち星がまだないのは5校。この二つの数字は、当然のことだが今後さらに減っていく。

【写真】伝統の一戦でウィスコンシン大を破り、勝者に与えられる「ハートランド・トロフィー」を担ぐアイオワ大の選手たち(AP=共同)