米国カレッジフットボールの幕が上がった。全米大学体育協会(NCAA)フットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)は9月3日、各地で2015年度の火ぶたを切り、4、5、7の各日に第1週のスケジュールを消化した。


 第1週は記者投票のAP通信、監督投票のESPN放送の両ランキングに名を連ねる25校すべてが登場する予定だった。
 しかし、5日に米南部を襲った雷のため、ルイジアナ州バートンルージュでのAP14位、ESPN13位のルイジアナ州立大(LSU)―マクニーズ州立大の試合が、行われぬまま中止となって、ランク校25全部の開幕週での開催は実現しなかった。
 なおこの試合は両校の今後のスケジュールなどから、日程に組み込むのが難しく、このまま中止。LSUのシーズンは11試合になる。

 ジョージア州アセンズでのジョージア大ールイジアナ大モンロー戦も、雷のため第4Q半ばで打ち切られた。この時点まで51―14と大量リードしていたジョージア大がそのまま勝ちとなった。


 第1週で最も話題に富んだ試合の一つは、前年度の王者でランク1位のオハイオ州立大とバージニア工科大の対戦。結果はオハイオ州立大が42―24で順当勝ちした。
 ランク校同士は1試合だけ行われ、3位アラバマ大と20位18位のウィスコンシン大はアラバマ大が35―17で快勝した。


 ランキング校とFBSの有力リーグ所属校との対戦は10試合ほどあり、おおむねランキング校が順当勝ちしたが、その中で両ランク21位のスタンフォード大がビッグ10のノースウエスタン大に6―16で、15位16位のアリゾナ州立大が17―38でテキサス農工大に敗れる「波乱」」も起きた。


 またランク校と、フットボール・チャンピオンシップ・サブディビジョン(FCS=旧1部AA)校との対戦は5試合で、ジョージア工科大がオールコーン州立大を69―6で下したのを皮切りに、ミシシッピ大が76―3でテネシー大マーチンを、クレムソン大が49―10でウォフォード大をそれぞれ破った。
 ミズーリ大は南東ミズーリ大を34―3と退けた。オレゴン大は東ワシントン大と激しい点取り合戦を演じ、61―42で突き放した。


 話題たっぷりのビッグ10東のオハイオ州立大と、大西洋岸リーグ(ACC)コースタル地区のバージニア工科大のゲームは7日夜、バージニア州ブラックスバーグのレーン・スタジアムに6万5632人の観衆を集めて行われた。
 両校はというより、昨年度の王者オハイオ州立大は、昨シーズン終盤、爆発的な得点力で勝ち進み、アラバマ大、オレゴン大を連破して14勝1敗の好成績を収めた。シーズン唯一の「汚点」となったこの黒星こそ、昨季の開幕第2戦、バージニア工科大に21―35で敗れた試合だった。それも地元オハイオ州コロンバスで喫した黒星だった。
 フットボールファンは無論のことだが、誰を差し置いても当の両チーム全員が雪辱か、返り討ちかを意識したのは間違いない。


 もう一つ、オハイオ州立大にはファンの興味を引く話題があった。先発QBは誰か、である。あれは7月だったが、米国各地、各リーグの展望をお知らせしているときに取り上げたが、オハイオ州立大には、どこへ出しても恥ずかしくない一流のQBが3人もいる、などとご紹介した記憶がある。
 海の向こうでも同じことで、明日は誰が出るのか、などという記事が流れていた。QBの力量から言って、第1戦の先発QBともなると、これはもうほとんど正QBまっしぐらでもある。


 昨季苦杯を喫した相手のフィールドで、果たしてどのような雪辱を果たすのか。先発に起用されたQBはカーディル・ジョーンズだった。長身の3年生で、196センチ、113キロと体躯に恵まれたQBである。
 オハイオ州立大は第1Q、このジョーンズの奮闘でドライブをつなぎ、5分16秒にはWRカーティス・サミュエルへ24ヤードのTDパス。8分21秒にはエースRBのエゼキエル・エリオットが80ヤードの独走を演じて14―0とリードを奪った。


 出遅れたものの、地元バージニア大は第2Qの初めにパスでTDを返し、さらにFGで差を詰めた。残り5分を切った後のドライブはパントに追い込まれたが、これをリターンしたオハイオ州立大の大黒柱エリオットのファンブルに恵まれたのは幸運だった。
 相手の38ヤード地点でこれをリカバーしたバージニア工科大はいきなりQBマイケル・ブリューアーがWRイザイア・フォードへパスを通してゴール前2ヤードに迫り、3プレー後TEライアン・マレックが1ヤードのパスを受け、17―14と逆転して前半を終えた。


 第2Qを無得点で終わったオハイオ州立大だったが、後半に一工夫を見せて、試合の主導権を取り返した。立役者はジョーンズとQBの座を争っていた最上級生のブラクストン・ミラーである。しかもその活躍の場はQBではなく、WRだったのである。
 ミラーの左オープンへのランが1ヤードに終わった後、ジョーンズがドローで20ヤードを稼いだ。続いてジョーンズからミラーへの鮮やかなロングパスが決まった。後半開始早々、54ヤードもの逆転TDを奪ったオハイオ州立大は、これで波に乗った。


 12分42秒には、ファンブルを相手の47ヤード地点でリカバーし、その最初のプレーでミラーが左オープンを見事に走り抜けた。今度は53ヤードものビッグプレーだった。
 11点差をつけた第3Qの終盤、DBタイビス・パウエルがパスを奪い、第4Qの9プレー目に今度はジョーンズがミラーに負けじとボールをキープ。15ヤードを走って加点。さらに当初はQB争いの一番手に挙げられていたQBのT・Jバーレットが登場し、マイケル・トーマスへあっさりと26ヤードのTDパスを決めた。42―17となってはもう勝負ありである。バージニア工科大はこの後1TDを返したが、地元で昨シーズンの敵を取られてしまった。


 なお後半に出てきてジョーンズとこの試合を二分したミラーは、RBとして6度走り53ヤードのTDを含めて計62ヤード、レシーバーとしては2本受けて、TD1と合計78ヤードの距離を稼いだ。


 5日夜、中立地のテキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムに6万4279人の観衆を集めたランク校同士の対戦は、南東リーグ西のアラバマ大が順当に、ビッグ10西のウィスコンシン大を退けた。
 アラバマ大ではエースRBのデルリック・ヘンリーと、今季いよいよ正QBとして先発出場したフロリダ州立大からの転入生ジェイク・コーカーがともにいい働きを見せた。


 ヘンリーは第1Qの9分6秒、37ヤードのランで先取点を挙げると、第3Qの3分18秒には56ヤードの独走、続いて9分43秒は2ヤード突進と、3本のTDを決めた。
 QBコーカーは7―7とされた第2Qの8分22秒、2年生WRロバート・フォスターへ勝ち越しの17ヤードTDパスを決めている。TDパスはこの1本だけだったが、パスは21本投げて15を通し、計213ヤードを記録した。インターセプトは1本もなく、アラバマ大の安定した攻撃の原動力として、高く評価された。


 一方のウィスコンシン大も、ビッグ10の所属校としての意地を見せ、第2Q3分54秒、QBジョエル・スティーブがWRアレックス・エリクソンへ6ヤードのパスを決めて同点とした。しかし、続くアラバマ大の粘り強い攻撃を食い止めることができず、コーカーのTDパスで勝ち越された。


 5日には、太平洋12大学(Pac12)の2校のランク校に土がつく番狂わせが起きた。Pac12北のスタンフォード大はイリノイ州エバンストンへ乗り込んだものの、地元ビッグ10西のノースウエスタン大のペースに巻き込まれてしまった。
 ノースウエスタン大は第1Qの終盤、ジャック・ミッチェルが31ヤードのFGで同点とし、第2Q半ばの8分42秒、レッドシャツの1年生クレイトン・ソーソンが42ヤードを駆け抜けて、貴重な勝ち越しTDを奪った。第4QはFGの応酬となったが、ノースウエスタン大に傾いた流れは動かなかった


 中立地区のテキサス州ヒューストンでは、SEC西のテキサス農工大とPac12南のアリゾナ州立大が顔を合わせ、テキサス農工大が快勝した。
 SECでの上位校としての力が定着し、ランキングから外れていてもその力は侮れない。ランク外のチームも得点が発表になっていないので念のため調べてみると、APもESPNも27位だったことがわかった。強いはずである。ランク校同士の試合に準じてもおかしくない。


 ゲームはテキサス農工大が先手を取って押し切った。第1Qの残り20秒、2年生のQBカイル・アレンがRBトラ・カーソンへ9ヤードのパスを通して先制した。これで勢いづいたか、第2Q2分9秒、新人のWRクリスチャン・カークが79ヤードのパントリターンを演じ、14―0と主導権を握った。
 アリゾナ州立大は5分4秒、QBマイク・バーコビシーがTEコディ・コールへの4ヤードのパスを通して追い上げたが、一歩ずつ先行される形は変わらず、後半も同様の展開。第3Q9分41秒にテキサス農工大がFGを決めた後、アリゾナ州立大はQBバーコビシーが自ら19ヤードを走って、その差3点とした。
 しかし、善戦もここまで。テキサス農工大は第4Q6分28秒、アレンが自ら12ヤードを走って差を広げ、アリゾナ州立大のFGの後、アレンがカークに66ヤードのパスを決め、さらにカーソンが10ヤードを走ってとどめを刺した。


 これらの試合終了の翌日の9月8日にランキングが発表され、両ランキングともに2ランク程度の上下があった。上位ではアラバマ大がテキサスクリスチャン大(TCU)を抜いて2位に上がったのが目立った。
 黒星がついたチームは、スタンフォード大とアリゾナ州立大が両方のランクから姿を消し、アラバマ大との決戦に敗れたウィスコンシン大もAPのランクからは落ちたものの、ESPNのランクでは24位に辛くも踏みとどまった。


 入れ替わって新たにランキング入りしたのはテキサス農工大とユタ大。アリゾナ州立大に快勝したテキサス農工大はAPでは一気に16位へ、ESPNでは19位へ上がった。
 一方、ビッグ10の名門ミシガン大を24―17で倒したPac12のユタ大は、APでは24位に、ESPNでは25位に入った。このほかAPではミシシッピ州立大が25位へ顔を出した。

【写真】敵地で昨シーズンの雪辱を果たしたオハイオ州立大(AP=共同)