これまでに、何度も同じことを書いてきた。また書く。「ああ、またあれか」と、思われる方がおられると思う。そう、またあれなのである。


 8月の下旬、全米大学体育協会(NCAA)フットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)の開幕を前に、米国のAP通信社が今季の開幕前ランキングを発表した。


 ご存知の通り、ランキングはさまざまなメディアが、FBSの128校の中でどこが強いのかを独自の取材から割り出し、その上位の25校に順番をつけて発表する仕組みである。
 中身はさまざまで、一つ一つを比べ、検討していくと誠に興味深い。それぞれに個性的なのだが、これを寄せ集めて集計し直すと、意外にも個性はどこかへ消えてしまい、極めて常識的な順位表が出来上がっていく。


 統計学か何かの専門家に言わせると、そんなの当たり前といわれそうである。しかし、米国の雑誌何冊かを集めて、その何冊分かを集計すると、その作業の都度、今述べた事実に突き当たって感動してしまうのである。


 今、手元にはこのAP通信のランキングと、スポーツ放送の専門局ESPNのランキングが並べて置いてある。ほかにもスポーティングニューズ誌のものや、スポーツイラストレーテッド誌のものが開幕前にはいっぱい出るのだが、いざシーズンが始まってから、週ごとにこのランキングが更新されるのは、APとESPNに限られる。
 つまり開幕以後、AP、ESPNのランキング以外は使わないので、この点はご承知おきいただきたい。


 この両ランキング、APは全米各地の有力紙のフットボール記者60人余りにベスト25の投票を依頼している。ESPNはFBSチームの有力監督64人に同様の依頼をしている。
 投票はともに25校連記で、その各チームに1位25点、2位24点、3位…25位1点を与える。これを各校ごとに集計して、各週のランキングが出来上がる。


 1位票の数字を見れば何人が投票しているのか、満票だと何点になるのかなどが、すぐわかる仕組みである。投票者の中には少し異なるランキングを、と考える向きもあるだろうが、これだけの人数の中では、そのような目論見も六十分の一として埋もれてしまうのが普通である。
 もっとも埋もれなかった例、というよりも脚光を浴びた例もある。これも以前に書いたが、オクラホマ大のバリー・スウィッツアー監督の逸話である。


 オクラホマ大が敗戦1を記録しながら、全米のチャンピオンに挙げられた年、スウィッツアー監督は、自校ではなく、他の全勝校に自らの1位票を投じたのである。
 誰もが満票と見ていたオクラホマ大はそうならなかった。“犯人探し”が行われた。むろん同監督が名乗り出て「全勝というのは1位の値打ちがあるものだ」と報道陣を煙に巻いたのである。


 なお今回、APの1位票は61だった。それにもかかわらず、「60余り」などとあいまいな表現をした。そのわけは、これまでに投票者が奇数だった年が、あまり私の記憶になかったからで、とりあえずこう表記した。
 第1週、第2週と回を重ねれば、はっきりしてくるだろうから、その時点できちんと書くつもりである。ご了承いただきたい。


 多くの人が投票すると、だいたい常識的な範囲に落ち着いていくのだが、もう一つ長い間カレッジフットボールのランキングなどを目にしていると、理由はないのだがお互いに影響しあっているな、と思うことがある。
 理屈はない。そう感じるのである。あえて言えばお互いに人間である以上仕方がない、ということか。今回ESPNは早々と7月30日にランキングを発表した。
 これまでカレッジの各リーグの予想を書いてきて、ランキングがどうだとか、ああだとか述べているところは、すべてESPN発表分のお世話になった。雑誌も使ったが、名前が長くなるので、いたずらに字数が増えてもと、必要最小限にとどめた。


 このESPNランキングが、今回8月23日発表のAPランキングにどう影響したかは、もちろんわからない。しかし、ベスト25を比べると、両ランキングとも順序こそ違え、そっくり同じチームの名が25校挙がっていた、ということだけは覚えておいていただきたい。

 さて、本稿の最大の目的、開幕直前のランキングに取り掛かろう。1位はこれまでに繰り返し語ってきた通り、ビッグ10東のオハイオ州立大である。
 新方式が採用されたばかりの昨季の選手権戦を制し、2014年度は通算14勝1敗。AP、ESPN両ランキングはともに同校を首位に据えた。


 APでは投票者の全員61人が1位に推し、1525点が入った。ESPNでは64人中62人が1位票を投じ、1598点を獲得している。こちらは満点が1600点なので、1位票を2位チームに入れた人と、3位に入れた人は、どちらもオハイオ州立大を2位に推しているのがわかる。


 両ランキングの2位は、ビッグ12のテキサスクリスチャン大(TCU)、3位は南東リーグ(SEC)西のアラバマ大と続き、4位にはビッグ12のベイラー大が入った。
 APもESPNもここ4位までは全く同じだった。これは決して珍しいことでもなんでもなく、ランキングの上位は大体このようになることが多い。


 TCUは前回の個人賞のくだりで述べたハイズマン賞最有力のQBトレボーン・ボイキンを擁するチーム。攻撃力の評価の高さに基づく高順位である。「わずか一人のことで」と疑問に思われる向きもあろうが、昨年、一昨年のフロリダ州立大のQBジェーミス・ウィンストンの例でお分かりだろう。
 スーパースターの存在は無視できないのである。むろん「一人では何も…」となるケースも多い。いちいちは書かぬが、このへんを監督の手腕として見守りたい。


 5位から7位までは順位こそ違え、顔ぶれは同じだった。APの5位はビッグ10東のミシガン州立大、6位はSEC西のオーバーン大、7位が太平洋12大学(Pac12)北のオレゴン大である。
 ESPNの方はオレゴン大、ミシガン州立大、オーバーン大と、両者はわずかに違う。8位から10位も同様だった。


 APの8位はPac12南の南加大、9位にSEC東のジョージア大、10位に大西洋岸リーグ(ACC)アトランティック地区のフロリダ州立大と続いた。
 ESPNではジョージア大を中に挟んで、8位フロリダ州立大、10位南加大である。注目したいのはジョージア大のRBニック・チャブだ。しかしゲームを直接切り盛りするQBとは違って、RBはどうしても「QBあってこそ」という側面があるので、このあたりが微妙でもある。


 11位と12位は両ランキングとも同じチームが顔をそろえた、11位が独立校の雄ノートルダム大、12位がACCアトランチック地区のクレムソン大。微差でこの順位を占めているのではなく、10位と11位、12位と13位の得点がそれぞれ開いているのが面白い。


 13位と14位は同じ大学が逆の順序で並んでいる。APはPac12南のカリフォルニア大ロサンゼルス(UCLA)が13位、SEC西のルイジアナ州立大(LSU)が14位で、ESPNはこれが反対になっている。2校から3校がこのように一つのグループを作る傾向はこうして最後まで続く。


 15位から17位も同様である。APはPac12南のアリゾナ州立大が15位、ACCコースタル地区のジョージア工科大が16位に続き、17位はSEC西のミシシッピ大の順だ。
 ESPNはそのミシシッピ大が15位で、以下アリゾナ州立大、ジョージア工科大の順である。その次の3校も一団で、APは18位にSEC西のアーカンソー大、19位にビッグ12のオクラホマ大、20位にビッグ10西のウィスコンシン大と並ぶ。
 ESPNの方はウィスコンシン大、オクラホマ大、アーカンソー大とAPをひっくり返した形だ。


 21位、22位は両ランキングとも同じ順序で同じチーム。Pac12北のスタンフォード大が21位で、同リーグ南のアリゾナ大が22位だ。
 23位と24位は両者が逆。APは山岳西部連盟(MWC)山岳地区のボイジー州立大、SEC東のミズーリ大の順。ESPNは23位ミズーリ大、24位ボイジー州立大となっている。“締め”の25位は無論、両ランキングとも同じチームが登場する。SEC東のテネシー大である。


 リーグ別にベスト25を振り分けてみる。多いのはSEC。3位のアラバマ大から25位のテネシー大まで8校が勢ぞろいだ。うち西地区が5校で東が3校である。
 次いでPac12の6校が名を連ねる。北地区が2校で南が4校だ。あとの有力リーグ、オハイオ州立大のビッグ10、TCUのビッグ12、フロリダ州立大のACCは、仲良く3校ずつ分け合う形となった。残る2校は独立校ノートルダム大と、MWCのボイジー州立大である。


 このほかベスト25からは外れているものの、26位以下のチームにも私は目を通している。今季のランキング外のチームは、APでは19校、ESPNでは31校の名がそれぞれ挙がった。
 両方からの投票を得たチームは16校あり、このあたりを整理し直すと、34校が26位以下にうごめいていた。
 これらのチームはこのまま消え去るのか、それともやがて日の目を見るのか。外電はこうしたチームを省略しないで送って来るので、シーズンを通してじっくり見ていくのも面白い。

【写真】2年連続の全米タイトルを狙うオハイオ州立大のアーバン・メイヤー・ヘッドコーチ(AP=共同)