全米大学体育協会(NCAA)フットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)128校の2015年の展望も、いよいよ最終段階となった。
 今回ご紹介するのは強豪ぞろいの南部の雄、南東リーグ(SEC)と、比較的新顔で、地域的に南の方に広がるサンベルト連盟(SBC)である。無論重要なのはSECの方である。SECは現時点では1部Aの中で最強の組織と思えるからだ。


 代表的存在はご存知アラバマ大。しかし、今年の全米のランキングではオハイオ州立大の後塵を拝し、テキサスクリスチャン大やベイラー大らと競り合って、全米3位あたりをうろうろしている。
 この1校だけを取り上げれば、特段のこともないのだが、同校の近年の実績、所属する組織の顔ぶれなど、周辺がなかなかのものなのだ。


 まず、アラバマ大が所属する西地区の顔ぶれは、ランク校が勢ぞろいしているのだ。スポーツ主体の放送会社ESPNが主催する、全米有力校の監督64人の投票を集計する全米ランキングは、3位アラバマ大に次いで、7位にオーバーン大、13位にルイジアナ州立大(LSU)、15位にミシシッピ大、20位アーカンソー大と、5校が名を連ねているのだから壮観でもある。


 ランキングはベスト25を発表するのが普通で、そこから見ると全体の五分の一を、SEC西の面々が占めているということになる。
 監督投票ランキング一つだけでこうだから、その他多くのランキングから拾い上げると、西地区の7校全部にベスト25の順位が付いてしまうことになる。


 六つ目としてミシシッピ州立大を挙げるが、同校はESPNのランキングでは次点の26位、アスロン誌は21位、スポーティングニューズ誌では25位となっている。
 7番目の、つまり地区の最下位のテキサス農工大はアスロン誌が20位を与えた。西地区全部がランク校と言ってもいいような塩梅なのである。


 ことのついでに東地区のランキングを見ておこう。西ほどではないが、ESPNのそれでは9位のジョージア大を筆頭に、23位のミズーリ大、25位のテネシー大と3校が顔を並べる。SECの全14校の内10校に多かれ少なかれ「ランキングマーク」が付いているのは、やはり大したものだと言わざるを得ない。
 ちなみに開幕前に、ベスト25に入れてもらえなかったのはフロリダ大、南カロライナ大、ケンタッキー大、バンダービルト大の東地区4校だが、このあたりも一つ波に乗ると、すぐさまランクインしてくるのは間違いない。


 まずアラバマ大から。SECの優勝争いの常連で、最近では2011年度にLSUを、翌12年度にノートルダム大をそれぞれ倒して、2年連続の全米王座に就いている。
 その前に今世紀に入ってからの全米王者は、少し大げさに言えば、SECの寡占状態ということも付け加えておきたい。2003年度のLSU、06年度フロリダ大、07年度LSU、08年度フロリダ大、09年度アラバマ大、10年度オーバーン大と続いて、アラバマ大の連覇と、7年連続の栄光に輝いている。


 そしてこの栄光の時代に、アラバマ大の現監督ニック・セイバンが果たした役割もついでに書き添えておこう。まず2003年、LSUの監督だったセイバンは今述べた通り、同校を全米の王座に導いた。その後NFLのドルフィンズの監督を経て、2007年、大学フットボール史上最高額の給料でアラバマ大の監督に迎えられた。
 話題となったが、実績は上記の通り。見事というほかない。なお07年、大学側と交わした契約は、8年間で3200万ドル。年俸にすると400万ドル。9年目の今季は年俸716万ドルに達したといわれている。


 わき道にそれた。まず今季のアラバマ大の日程をおさらいしておく。初戦が要注意で、ビッグ10のウィスコンシン大というランク18位の難敵と激突する。
 1週おいて、同じSEC西地区でランク15位のミシシッピ大、1週挟んで10月になるとSEC東地区の優勝候補でランク9位のジョージア大。続いて同一地区のランク校、またはそれに準ずるうるさい相手と次々に顔を合わせ、12試合目の11月28日にはランク7位の宿敵オーバーン大との対決に至る。

 SEC西地区の面々はここまで厳しいかどうかは別にして、似たり寄ったりの強行軍であることは間違いない。これを無傷で勝ち抜くと王座は目の前ということになる。
 さてアラバマ大の戦力はひと言でいうと、攻守とも強い、だろう。攻撃ではQBをはじめ、タレント性豊かな層を持つ。


 まずはQBだが、全米ランクトップのオハイオ州立大がそうだったように、ここでも正QB争いが展開されて、昨年フロリダ州立大から転校していたジェイク・コーカーが、その座を勝ち取った。
 ドロップバック型のQBで、とにかくでかい。身長196センチで体重は105キロ。109キロとする雑誌もあるほどで、同校のパワーの部分を強調する存在となるかもしれない。


 ランプレーは全米級のRBデルリック・ヘンリーが引っ張る。TEにO・Jハワードという大物を据え、WRはクリス・ブレークがリードする。
 ラインは攻守ともに申し分なしだ。こうしたランキング上位の強みはむしろ守備で、DTアショーン・ロビンソン、LBにはレジー・ラグランド、DBはエディ・ジャクソンと各列に花形を配し、サイズ、スピードとも言うことなしと、関係者は口をそろえる。またパンターのJ・Kスコットは全米クラスである。


 オーバーン大はQBジェレミー・ジョンソンとWRダキール・ウィリアムズのコンビがいい。RBジョボン・ロビンソンの脚力も見逃せない。
 ただシーズン半ばの取りこぼしには気をつけないと、大詰めのアラバマ大との決戦が無になりかねない。首位への挑戦者争いではLSUもまた有力な存在。全米級のRBレオナード・フォーネット、WRのトラビン・デュラルらの花形を、QBブランドン・ハリス、アンソニー・ジェニングスがどう生かすかが鍵と見られている。


 ミシシッピ大がこの2校にどう割り込むかも、注目される。昨季はいい線までいったが、終わりで息が切れた。とはいえ、最後までその勢いを持続させることもまた至難の業だが。
 ミシシッピ大はサイズ、スピードともリーグ有数の攻撃ラインを持ってはいるが、QBに今一つ力がないのが悩み。WRラクオン・トレッドウェルやTEエバン・イングラムといった逸材の力を生かしたいところだ。


 このほかアーカンソー大はRBアレックス・コリンズとジョナサン・ウィリアムズのランの威力が見ものだろう。攻撃ラインがいいので、期待は大きい。
 QBブランドン・アレンのパスと脚力も大いに楽しめそう。ランクはあまり高くはないが、波に乗れば面白い。


 ミシシッピ州立大は全米級のダク・プレスコットというQBを持ち、昨季はパスにランにミシシッピ州立大の攻撃を一人で支えていた。今季も雑誌の方ではオールアメリカの1軍ではなくとも、必ず2軍か3軍に名を連ねて、プレスコットに敬意を払う形になっている。
 テキサス農工大も2年生のQBカイル・アレンが光り、WRジョシュ・レイノルズ、リッキー・シールズ-ジョーンズを使ったパスは威力がある。


 東地区はジョージア大に尽きそうである。その中心にいるのがRBニック・チャブ。2年生だが、オールアメリカの1軍のRBとして予想誌すべてが掲載している。無論ハイズマン賞の最有力候補の一人でもある。
 いいパサーがいいレシーバーを育てるようなもので、ジョージア大の攻撃ラインは、チャブのおかげで、リーグ随一のスピードと当たりを兼ね備えてきた。QBはプライス・ラムジー。WRマルコム・ミッチェルへのパスで、どこまでチャブを支援することができるか。リーグの王座戦は、恐らくアラバマ大だろうが、あの強力な守りをどれだけかわせるかが、優勝への鍵になる。


 2位争いはランキング通りに行けば、ミズーリ大とテネシー大になる。ミズーリ大はQBのマーティ・マウク、RBのラッセル・ハンスブローといった看板スターを持つ。
 テネシー大もRBジャレン・ハード、WRマーケス・ノースらが鍵となる。こうした花形がいかに本領を発揮するか。10月10日のテネシー大とジョージア大、翌週17日のジョージア大―ミズーリ大が、東地区の山場だろう。4位以下は守りが堅いフロリダ大、次いで南カロライナ大、ケンタッキー大、バンダービルと大となりそうだ。


 最後になったSBCは、どうもとりとめのない組織である。東は大西洋岸から西へアラバマ、ルイジアナ、テキサスの各州を通って、ロッキー山脈に入り、ニューメキシコ、アイダホといった各州のチームが校名を並べているのだから、どうもピンとこない。
 ただ、傾向を見ると、フットボール・チャンピオンシップ・サブディビジョン(旧1部AA)からFBSへ昇格したチームが、まずここで小手調べをするような場所となっているようなリーグでもある。


 今季は11校。地区はなく組織の10校の中から8校とゲームをし、あとは外部と戦う。評判がいいのはアーカンソー州立大とアパラチアン州立大。ジョージア南部大が続き、ルイジアナ大ラファイエット、らで優勝争い。
 テキサス州立大、南アラバマ大、ルイジアナ大モンロー、トロイ大は中ほどの順位争い。下位の競り合いはニューメキシコ州立大、アイダホ大、ジョージア州立大となりそうだ。

【写真】「感謝デー」でファンと交流するアラバマ大のニック・セイバン監督(AP=共同)