アルファベット順に追いかけてきた、本年度の米大学アメリカンフットボールの展望記事も、ようやく太平洋岸に到達。今回はPacific12Conferenceを取り上げよう。
 また昔話になるが、共同通信時代、リーグの名前を日本語に翻訳、というよりも置き換えるとき、他に比べてここは楽だったことを思い出す。「太平洋12大学」、これで十分だった。あとはこれに「リーグ」を付けるか、「連盟」を付けるかだが、このへんになるともうどうでもよかった。


 幸い日本ではずっと以前から大学野球の世界で、「東京六大学」とか「関西六大学」といったリーグの呼称の習慣があり、これがバッチリ普及していたからである。
 同じ数字がのっかったリーグでもBig10」はしばらく悩みぬいた揚句、「ビッグ10」とするのが精いっぱいだった。
 「ビッグ、って何や」と突っ込まれると、もはや返事はできない。普通名詞の「ビッグ」に「十」または「10」をくっつけただけだからである。そんなわけだから、改めて「ビッグ10大学」とやってみても同じことである。


 当時、アメリカンフットボールをもっと配信しよう、という流れが共同通信の中でもできはじめた。NFLの方は問題なかった。大リーグと同じようなものだし、チームの呼称も大リーグに準じて、何の差支えもなかった。
 参考資料も結構巷に出回っていた。偉い人から「あんたがやらんでも、だれでもできるから」と言われて、カレッジの担当を命じられた。前にも述べた。
 資料はプロとは比較にならぬくらい少なかった。それでも、外電をきちんとフォローしさえすれば、なんということはなかった。ただカレッジ担当として学校名、組織名といったところを手始めに、さまざまなルールを作っていかねばならなかった。


 そうした資料が整理部にたまった。共同と連絡を取りに来た全国紙の方が、整理部のデスクでそのような資料を見つけて、「あ、これ参考になりますね。もらっていっていいですか」と、お持ち帰りになられることが、よくあった、という話を聞いたことがある。


 そのころ、カレッジフットでは太平洋岸になじみがあった。洋書店「イエナ」で求めた最初のストリート・アンド・スミス誌では、1967年のハイズマン賞最有力候補の、カリフォルニア大ロサンゼルス校(UCLA)のQBゲーリー・ビーバン(そのまま受賞)が表紙になっていた。
 翌1968年には南加大のRB、O・Jシンプソンの記事があふれかえった。ボウルゲームといえば、これはもうPac8とBig10(当時)のローズボウルだった。


 それにもう一つ。分かりやすかったこともある。どういうことかというと、太平洋岸の各州とも、アカデミックな色が濃いとされる「○○大」と、実業色が濃いといわれる「○○州立大」との2校が、セットで加入していたからでもある。
 北からワシントン大とワシントン州立大、次いでオレゴン大とオレゴン州立大、カリフォルニアの4校はこれには当てはまらぬが、州北部と南部とにきちんと分かれて北部は州立のカリフォルニア大と私立の名門スタンフォード大、南へ下がって州立のUCLAと私立の雄、南加大。米国の学制になじみのない日本の新聞記者としては、形態が整っていることだけでも救いだった。


 1978年には形通りの組み合わせで、アリゾナ州のアリゾナ大とアリゾナ州立大の2校が加わった。太平洋とはつながっていないが、内陸への第一歩かな、というように感じた。
 リーグの名はPac10となった。その後ユタ大、コロラド大の2校が参加して「12」となったのはご存知の通りである。


 話が少し変わる。これまでこのようにリーグが拡大するとき、大体2校ずつ増えていることに気付かれた方は多いと思う。無論例外も多いが、これが奇数だとリーグ戦で相手がいないために、休みを取らざるを得ないチームが出てくる。それを避けるためなのである。
 1シーズンで1週ほど休むケースは決して珍しくはない。その休みが自らの意志で決まったものなら、それもありだが、逆に自分たちと関係のないこと(相手がいないこと)で休めと強制されたらどうだろう。米国のことだ、そうした事態が起こらぬよう、手を尽くすに違いない。つまり組織の偶数は基本なのである。日本も同様である。今さらの話であった。 


 太平洋12大学は6校づつ南北2地区に分かれ、最後に地区1位校同士が優勝決定戦を行う。多くのリーグと同じである。リーグ戦の原則は外部3試合。同一地区とは総当たり5試合、他地区とは4試合で、これもわかりやすい。


 さすがにここは全国区、つまり全米のランキングに名を出してくるチームが多い。北地区でオレゴン大とスタンフォード大の2校。南地区は南加大、UCLA、アリゾナ州立大、アリゾナ大の4校である。  
 北からいく。昨年から始まった勝ち抜きの全米選手権で 、初代王者の一番手に挙げられながら、QBマーカス・マリオタを抑え込まれて準優勝に甘んじたオレゴン大だが、評価は相変わらず高い。例の向こうの雑誌だが、2誌がベスト10に、こう一つも11位なのだから、決して悪くない。注目の後任QBはバーノン・アダムズ。1部AAに当たるFCSの東ワシントン大から転じた逸材である。


 このほかRBにはリーグを代表するロイス・フリーマン。レシーバーではWRバイロン・マーシャル、TEエバン・ベイリスら攻撃陣のスターには事欠かない。
 とりわけ守備が昨年以上との声もある。11月14日のスタンフォード大との試合がヤマだろう。QBケビン・ホーガンがリードするスタンフォード大は、オレゴン大に比べて攻撃のタレントが入れ替わった。デービッド・ショウ監督がこのあたりをどう立て直すか。リーグをリードするLB、DB陣の踏ん張りも見どころである。


 首位争いはこの2校で、3番手にはワシントン大、カリフォルニア大がきそう。特にカリフォルニア大のQBジャード・ゴフからWRケニー・ロウラー、ブライス・トレッグスへのパスがいい。
 これにRBダニエル・ラスコーを加えた攻撃力は迫力十分だが、反面守りが手薄なのが気になるところだ。ワシントン大はRBデュウェイン・ワシントンの脚力にすべてがかかる。ワシントン州立大とオレゴン州立大は、下位の順位争いか。


 南地区は南加大。雑誌の全米ランキングは一桁台でそろった。リーグ選手権はオレゴン大との決戦が予想される。妙な言い方をするが、ジョン・マッケイ時代の南加大は、強いと評価されたときは間違いなく強かった。現在のスティーブ・サーキシアン監督はどうか。
 こんな「大昔」と比べられても困るだろうが、攻守にいいメンバーがそろっていることだけは確かである。攻撃では第一にQBがいい。コディ・ケスラーをオールアメリカに推し、ハイズマン賞でも有力候補に挙げる雑誌は多い。受ける方はWRジュジュ・スミス、RBはポール・パーキンスが軸になる。


 守りの方はPac12随一。ラインも、LBも、DBも文句なく一級品で、あえて言えばスペシャルチームが少し甘いかもしれない、とされている程度だ。
 南地区2番手はUCLA。全国的には10位台から20位前半のランキングを得ているが、南加大以上の声もある。


 RBにポール・パーキンス、WRにはジョーダン・ペイトン、TEにトーマス・ドーティと攻撃陣は多士済々だが、問題はQB。上級生にこれといった人材がいない。新人ジョシュ・ロウゼンにすべてを託す形だ。  評価は高いものの、すべては実際に指揮を執ってからだろう。なお守備は強い。11月28日の南加大との決戦は一段と盛り上がりそうだ。


 アリゾナの2校は、まずアリゾナ州立大が2誌から10位台中ごろの評価を得た。守備の安定度が高く買われたためだ。攻撃ではRBのデマーリオ・リチャードが光る程度で多くは期待できない。
 アリゾナ大の方は1誌が10位台半ばに推した。QBアヌ・ソロモンやRBニック・ウィルソンを擁し、スターには恵まれているからだろう。


 しかし、肝心のラインが非力。守備でもDB陣の弱さが目立つ。ユタ大はデボンティ・ブッカーという全米級のRBを持ち、強固な守備陣を誇る。アリゾナ勢の一つは切り崩したいところだ。コロラド大は今季も特徴に乏しく下位は免れそうにない。


 今回は最後に独立校3校を取り上げる。注目は10位前後にランクされる名門ノートルダム大。ここ数年の開幕前のランクでは最も高い。
 10月17日の南加大との伝統の一戦を乗り切ってランクを上げれば、選手権出場も夢ではなくなる。QBはマリク・ゼイーラ、RBにタリーン・フォルストンと好選手を持ち、ディフェンスも強い。


 ブリガムヤング大(BYU)はQBタイソン・ヒルが注目される。ランキングからは少し遠くて、ボウルゲーム出場が目標。序盤の強行軍をうまく乗り切れば、好成績が望める。
 陸軍士官学校は花形選手に乏しく多くは期待できない。フィラデルフィアで開かれる有名な海軍士官学校との対抗戦は12月12日にある。

【写真】昨季のハイズマン賞に輝いたオレゴン大QBマリオタは今季、NFLのタイタンズでプレーする(AP=共同)