米国の大学でどこが一番強い? 前週はその展望を、ランキングを通して紹介してみた。今回からはそれぞれのリーグで、どこが優勝の一番手になるのか、という予想をのぞき見しようと思う。


 今のところネタ元は前回紹介した2誌である。この間、丸善を訊ね、紀伊国屋をのぞいたが、3冊目はもうちょっと先のようだった。
 かつては銀座にドイツの名門大学の名を付けた「イエナ」という書店があった。会社への通勤路に近く、途中で立ち寄るのに便利だったせいもあって、シーズンともなると、頻繁に利用した。品ぞろえも米国のフットボール関係についていうといたって豊富だった。姿を消して久しい。現在、洋書専門店を何軒か回って満足できないと、なぜか懐かしく思い出す。


 さて米国の専門誌だが、買い求めている大半が、前回も申し上げた通りイヤーブックである。日本語で申し上げると「年鑑」ということになるが、漢字で書いてしまうと、立派な硬い表紙の百科事典のようなものを想像されかねないので、あえてカタカナのイヤーブックで押し通している。


 定型はなく、週刊誌の「スポーツイラストレーテッド」などは、毎週出しているうちの一冊がイヤーブック的な編集になっているし、同様に週刊の新聞紙タイプの「スポーティングニューズ」は、イヤーブックだけを雑誌タイプで出している。


 各リーグを紹介する順番もいろいろである。かつては「ビッグ10」を展望すれば、次はその周辺のやや水準の落ちるリーグ、例えば「ミッドアメリカン」に触れる、といった編集で、どちらかというと地域でまとめるのが普通だった。
 くどくなるのを承知で、私の印象を申し上げると、大体が以下の通りだった。ただしここに並べる組織は、昔の名前である。この点はご承知おき願いたい。今の呼び方にしない理由はあとで申し上げる。


 独立校中心の東部。伝統を誇る「ビッグ10」と「MAC」の中西部。大平原に陣取る「ビッグ8」と「ミズーリバリー」、向こうの雑誌は「Midland」などと表現することが多かったので、こちらは内陸部などと翻訳していた。


 名門「サウスイースタン・カンファレンス」は深南部とよく呼ばれていた。普通に南部の一員としてまとめられることもあって、そのときには大西洋岸リーグの「ACC」が、お供のようにくっついてきた。
 ついでに旧1部のAとAAとが分かれる前は、当時の「サザン・カンファレンス」も登場していた。


 テキサス州とアーカンソー州の「サウスウエスト・カンファレンス」は南西部。太平洋に面した3州の太平洋8大学「パック8」とその周辺の「太平洋岸体育協会」は太平洋岸としてまとめられた。
 残りは「西部体育連盟」でこれが山岳部。扱いはそれまでの5地区に比べて少し下だった。


 最近はこうした地域別の編集ではなくて、リーグ名のアルファベット順で並んでいることが多い。昔のように組織が必ずしも地域ごとに固まっておらず、随分離れた場所の大学同士が、連盟をつくっているからでもある。
 先ほど組織名を昔のものでご紹介した理由でもある。そこで私も、向こうの雑誌に倣って、ABC順に書くことにした。


 となると一番目は言いうまでもなく「アメリカン・アスレティック・カンファレンス」、略称AACである。新しい組織で、今季は創立3年目。ただ母体はそれなりに由緒がある。
 前週述べた「ビッグイースト」の流れをくむ組織なのである。では東部でいいではないか、と言われると困る。とても東部では収まらない。範囲がめちゃ広いのだ。


 一番東に位置するのがコネティカット大で、これは考えるまでもなくコネチカット州。次いでペンシルベニア州フィラデルフィアにあるテンプル大。東部にあるのはこの2校でおしまいである。
 南へ下がってフロリダ州の2校。南部、南西部に飛び石のように点在する大学をチェックしながら西へ進むと、テキサス州へ行き着く。こういうリーグなのだ。


 AACの参加校は12。これが6校ずつ東西2地区に分かれる。昨季は11校で地区制は取っていなかった。
 今季AACに海軍士官学校が加盟して6校ずつの地区が誕生、レギュラーシーズン終了直後のリーグ優勝決定戦ができるようになった。
 ただし海軍士官学校があるのはメリーランド州、地区割りで西に入ったが、地理的に言うと間違いなく東である。もっともこんなことを言い始めると、方々で次々と食い違いが出てくるので、あまり詮索はしない。


 米国の陸海空三軍の士官学校は、空軍が山岳西部連盟(MWC)の一員で、その前身の西部体育連盟時代からのメンバーだった。
 だが一方、陸軍も海軍もチーム創設当時から独立校として長い伝統ある歴史を歩んできた。その海軍が今季、これまでの「殻」を脱ぎ捨てて、新しい連盟入りをしたわけで、これはやはり歴史的な出来事だと言えよう。


 改めてAACの勢力分布図を見る。東地区はアスロン、スポーティングニューズ両誌ともシンシナティ大を首位に挙げる。2番手は中央フロリダ大とテンプル大の競り合いで、東カロライナ大が続く。
 コネチカット大と南フロリダ大は下位争いと見られる。西地区はヒューストン大とメンフィス大の争い。これに海軍士官学校が割って入る。上位3校と4位以下の間には少し開きがありそう。南メソジスト大(SMU)、チュレーン大、タルサ大の順で落ち着くかである。


 注目の海軍は昨季8勝5敗の好成績。AAC随一の呼び声高いQBキーナン・レイノルズが、かなり期待できそう。
 同時に要所を上級生で固める守備を持つのが強みで、うまく戦えばシーズン末の優勝決定戦出場も夢ではない。


 なお米国の「Navy」は、日本では「海軍兵学校」と訳すもの、と思い込んでおられる向きが、結構多い。辞書など統一しているのではないかと、思うほどである。
 しかし「兵学校」と呼んでいたのは、日本ではほかに「海軍機関学校」「海軍主計学校」といった士官養成の教育機関があったためで、軍艦そのものを操る教育機関である「兵学校」は、その意味で区別が必要だった。


 米国ではこのクラスの教育をアナポリスの「Naval Academy」が一手に引き受けており、陸軍、空軍と同じように「士官学校」とするのが筋だと考える。
 確かこの話は昨年も書いた。面倒だとお考えの方は読み飛ばしていただいて結構である。


 さて、AACはここまで。次は大西洋岸リーグ、略称ACCに触れる。別に小出しにしているわけではないが、10組織プラス独立校をいっぺんに片づけるには、スペースが必要となろう。それで、今回はACCを簡単に展望して終わりにしたい。


 AACに比べ、ACCはランキング校、つまりベスト25に入る強豪が今季は3校も顔をそろえた。それだけに注目されるリーグでもある。
 昨季、史上初の全米大学体育協会(NCAA)FBS(旧1部A)の選手権大会へ出場を果たしたフロリダ州立大は、今季も強力でイヤーブック2誌からACCのトップと予想された。


 全国ランキングは2誌とも9位と高い評価だ。注目の新しい正QBは3年生のショーン・マグワイア。ただ、攻撃陣は昨季の先発メンバーが大きく変わったのが、不安材料と見られている。反面、守備力はリーグ有数の安定感を誇るのが強みだ。


 ACCの地区制は他リーグのように東西、南北という名がついておらず、フロリダ州立大が所属する方はアトランティック地区、もう一方はコースタル地区と呼んでいる。それぞれ7校ずつで、合計14校のリーグだ。


 アトランチック地区ではもう1校ランク校に挙げられたクレムソン大が、フロリダ州立大のライバルとして地区1位の座を狙う。
 以下ルイビル大、北カロライナ州立大、ボストンカレッジが続き、下位はウェークフォレスト大とシラキュース大が競り合う。


 コースタル地区は名門ジョージア工科大の独走、との声が高い。ランキングはアスロン誌では18位と並だが、スポーティングニューズ誌は12位と意外に評価が高い。
 理由はQBジャスティン・トーマスがリードする攻撃力。リーグ随一の破壊力との呼び声が高いためだ。リーグ制覇の鍵は、守備力の強化に尽きるとも言われている。


 2番手はバージニア工科大と見られる。またデューク大を推す声も高く、このあたりは混戦模様。4位以下はピッツバーグ大、北カロライナ大、フロリダのマイアミ大の3校がほぼ一団の順位争い。バージニア大はどこまでこの順位争いに加われるかだ。

【写真】昨季までフロリダ州立大のエースQBだったウィンストンは、NFLバッカニアーズにドラフト1位指名された(AP=共同)