早いもので、あと2カ月もすれば、海の向こうで2015年のカレッジフットボールシーズンの幕が上がる。前週ご紹介したマニュアル通りにやれば、だれでも成績の集計ができる。
 そんなことを申し上げたが、言うは易く行うは難しだ。必要に迫られて、コツコツやり始めたが、結構めんどくさい。かといって真面目にやっておかないと、先々で困る。嫌いじゃないから、まあいいか。


 最初に手元の雑誌で、私たちが取り上げる大学を数える。前回私の作業を「よくやることよ」と驚嘆してくれた後輩氏は、あの広い米国全土を思い描いて、その中から有力校を拾い上げているように思われたものと思う。
 だが、実際フットボールチームを持っている全大学に目を通すなんて、ちょっとやそっとでできるものではない。アプローチするためのカギがあるのだ。組織である。日本でも同じだが、フットボールチームの組織、連盟とかリーグとか、たくさんある組織の中で、最も有力な組織をつかみ出せば、一丁上がりなのである。


 毎年のカレッジフットボールのおさらいになる。熟知されておられる方は「またか」と思われるだろうが、初めての方には、少し説明をしておかないと、米国の大学フットボールを二度と振り向いていただけなくなるので、この時期の決まりものとして、ここはひとつご辛抱いただきたい。
 それによくあることだが、「分かってる分ってる」と飛ばし読みをしてしまうと、数字が毎年変わるのを、見逃しかねない。と脅かしておいて、さて・・・。


 米国の4年制の大学の中で、フットボールチームを持っているのは、650校を超え、700校に近い。ほかに2年制のジュニアカレッジ、つまり短大が山ほどあって、4年制への選手供給源の一つになっている。
 ただ、チームの数を聞かれると困る。フットボール記者の長い生活の中で、一度も数えたことがないからである。高校となると、さらに数字不明と申し上げておく。
 しかし、雑誌ともなるとえらいもので、高校卒業生の中のスター候補を、これでもか、とばかり拾い上げて紹介してくれるのだから、脱帽せねばなるまい。


 本筋に戻る。650を超す大学のほとんどが、全米大学体育協会(NCAA)に所属する。ほかに全米大学対抗競技協会(NAIA)に属するチームもある。
 両者を綿密、かつ平等に取り上げていると、肝心の部分の紹介がおろそかになりかねないので、取捨選択をする。何も難しい作業ではない。ズバリNCAAの一番上を取り上げるのだ。これだけのことである。
 捨てるものは捨てる。何でもかでも拾い上げていると、最後には、最近世間でよくいわれている「ゴミ屋敷」に行き着く。


 1、2部制をやめて、5リーグ並列などいう、不思議な代物を押しつけてきた組織が40年ほど昔にあったが、途端に私たちの仲間がそっぽを向いたのを思い出す。
 きっぱりと精算しないままに、1、2部制へ戻しはしたが、それがために今もなお、そっぽを向かれたままだということに、気付こうとしない、いや気付きたくない、という組織は困ったものである。


 カタカナで「ビッグ」とか「トップ」とか表現した挙げ句に、「はい、どちらが上位でしょう」と言われても、答えようがありませんからね。世の中には反対語というのがあってね。「トップ」の反対は「ボトム」だし、「ビッグ」の反対は「スモール」か「リトル」でしょ。


 道草を食った。私たちが取材対象とするNCAAの一番上というのは、間違いなく1部校である。現在手元にある今季の「イヤーブック」は、スポーティングニューズ誌のと、アスロン誌の2種類。これによると253校になる。


 米国では1970年代ごろから「メジャー」と呼ばれた有力校が、急速に増えだし、そのため明確な1、2部制が導入された。
 1部校の増加はそれでも止まず、1982年には1部校を1部Aと1部AAに分けた。名門アイビーリーグが1部AAに回ったのも、このときである。
 日本のフットボール担当の新聞、雑誌記者は、遠慮なくこの時点で100校を少し下回った1部Aを取り上げることにしたが、それもつかの間、すぐさま翌年に100校を超えた。


 現在1部Aはフットボール・ボウル・サブディビジョン(略称FBS)と呼び、本年は128校。出入りはあったが数字の上では昨年と同じになった。
 1部AAはフットボール・チャンピオンシップ・サブディビジョン(略称FCS)で125校である。両者ほぼ同数だが「TURNONER」が対象にするのは無論のことFBSである。
 ちなみにこのへんの文字で表現する方式が、関東学連の分かりにくい「トップ」と「ビッグ」の手本だったのかな、という気もしている。


 結構私が校数を気にしているのにお気づきの方もいらっしゃると思う。増えているのかどうか。新入りがいるのかどうか。毎年の数字を押さえておくと、当然傾向が見えてくるし、その中のリーグの消長も分かりやすくなる。


 さて、その128校である。「この中でどこが強いのか」。このあたりが最大の関心事であろう。便利なことに雑誌ではその疑問に真っ先に答えてくれる。ランキングである。
 開幕直前から選手権戦決勝が終わった直後までの半年に近い間、AP通信は全米のフットボール記者60人に依頼して、25校連記の一覧表を毎週出し、1位25点…、25位1点の点をつけて、集計したものを発表する。
 もう一つESPNというスポーツ専門の放送会社がスポンサーになっているランキングがあって、これは全米有名校の監督62人に同様の投票を依頼。記者投票と同じ集計で順位を出す。


 2015年はどうか。2誌ともビッグ10のオハイオ州立大をトップに据えた。連覇するだろう、という期待感の表現と見てもいい。選手権戦が始まったのは昨年からだが、それまでのランキング制の時代を見ても、連覇というのはそれほど難しいわけではない。
 それに主力選手が多数残っているあたりからも、「強い」と評価されるのには、何の不思議もない。


 2位以下は混戦である。昨季選手権準決勝でオハイオ州立大に屈した南東リーグ(SEC)のアラバマ大はアスロン誌では2位に推されているが、スポーティングニューズ誌では5位。同リーグのアラバマ大の好敵手オーバーン大は4位と3位を占める。
 ビッグ12のテキサスクリスチャン大(TCU)はスポーティングニューズ誌で2位に挙げられ、アスロン誌でも5位と高位を占めているのが目立つ。


 そのライバル、ベイラー大はアスロン誌では3位とTCUを上回りながら、もう一つの方では7位と低かった。このほか太平洋12大学リーグ、つまりパック12で名門南加大が2誌からそろって6位に挙げられている。


 こうしたランキングでは、間違いなく有力リーグの優勝候補が名を連ねる。その有力リーグは五つあって、米国中西部、つまり地図などでおなじみの五大湖周辺から西の各州の代表校が集まる「ビッグ10」、深南部の代表的な大学が集まるSEC。大西洋岸各州の有力校の集まり大西洋岸リーグ(ACC)。
 ミシシッピ河流域からロッキー山脈までの大平原に位置する「ビッグ12」。太平洋岸とそれに隣接する州の有力校中心の「パック12」。
 この5リーグが常にぬきんでた存在として知られている。前にも触れたが、これに独立校のノートルダム大を加えれば、FBS(旧1部A)の主だったところは網羅できるのである。


 有力リーグとこの独立校の校数は今季は計65校。FBS全体の半分になる。ランキングで昨季大いに騒がれたACCのフロリダ州立大は、今季は両誌ともそろって9位だった。
 有力リーグとは言っても、少し低く見られるACCとしてはぎりぎり一けたのチームが出て、面目を保った形だった。


 ランキングは両誌とも25校を選出している。今述べたこの有力リーグ別の集計を見ると、昨年同様、SECが圧倒的に多数を占めた。それも西地区がすごく、西の全チームの名が挙がっていたのには驚いた。


 いつまでも学校の名を並べてもわずらわしいばかりだ。ランキング校をリーグ別に並べて本稿を閉めたい。
 SECの西地区はアラバマ大、オーバーン大、ルイジアナ州立大(LSU)、ミシシッピ大、アーカンソー大、ミシシッピ州立大、テキサス農工大の7校全部。同東地区はジョージア大、テネシー大、ミズーリ大の3校である。


 ビッグ10は昨年までは伝統地区とか指導者地区といった地区分けをしていたが、今季からはネーミングをあっさり東西にして分かりやすくなった。
 ランク校は東地区がオハイオ州立大のほかミシガン州立大。西地区がウィスコンシン大と両地区併せて計3校。ビッグ12は先に述べたTCU、ベイラー大に、オクラホマ大を追加して合計3校。ACCはアトランチック地区がフロリダ州立大とクレムソン大、コースタル地区がジョージア工科大とこれも3校の名が挙がった。


 パック12は豊作で南地区は南加大、アリゾナ州立大、カリフォルニア大ロサンゼルス(UCLA)、アリゾナ大の4校。北地区は選手権準優勝のオレゴン大とスタンフォード大で、SECには遠く及ばないが、計6校がランク入りした。
 このほか有力リーグに続くグループの、山岳西部連盟の山岳地区をリードするボイジー州立大のランク下位登場が見られた。独立校のノートルダム大も中位以上に顔を出した。常連と言えばそれまでだが、さすがである。

【写真】2014年度の全米大学王者となり、トロフィーを掲げて喜ぶオハイオ州立大の選手=アーリントン(USA TODAY・ロイター=共同)