ちょうど2週間前の6月10日、同窓会の東京支部の事務所で、関学アメリカンフットボール部OB会の東京支部幹事会があった。
 連絡を受けて、こんな年寄りの幹事なんてお笑い草だ、と思って支部長へ電話したら、遠慮しないでどうぞ、という返事があった。要するに暇を持て余しているのだろうから、元気だったら遊びにいらっしゃい、ということらしい。


 この日は1957年卒の私から、今世紀初めの卒業生まで10人が集まり、1時間ほどで議事を終えた。あとは事務所が入るビルの、3階にある蕎麦屋で懇親会となった。
 運悪くか、幸運にもか、私は体質的に一滴の酒も飲めない。体内にアルコールが入ると、そのまま二日酔いである。頭はガンガン痛いし、気分は悪くて今にも店開きしそうになる。

 それでも旧交を温めるためには、大いに付き合おうと決めている。もちろん、酒も飲めないのに、よく付き合いますなあ、とあきれられることも多い。
 年寄りにウロウロされても困るのだろう。大体出入りのしにくい席に座らされる。ウーロン茶のコップをあげて、にぎやかに会が始まった。私の前には若いOBが座った。こんな爺の相手では話題に困るだろうと考えていたら「あんな細かいこと、どうしたらできるのか」といきなり質問が飛んできた。


 「TURNOVER」の読者だった。カレッジフットボールの1部校を取り上げ、強い方のチームが集まるFBS(フットボール・ボウル・サブディビジョン=旧1部A)と、一段下のFCS(フットボール・チャンピオンシップ・サブディビジョン=旧1部AA)とに仕分けた上で、それぞれのリーグ、その所属校を振り分ける。
 1校ずつ勝負をチェックし勝敗表を作り、順位を確定しシーズン最後のボウルゲーム出場を確かめ、その勝負を示し、ランキングを確認する。この「膨大な」作業を1部250校前後、特にFBS120~130校余りについて、大づかみにまとめる。


 文字にすると七面倒くさいが、手順でやればそれほど複雑ではない。ただ数が多いので、右から左へ瞬時に出来上がるというものではない。
 「でもね、手間さえ惜しまなければそんなに難しいものじゃないよ」と、その質問者を説得にかかったが、結果は駄目だった。もともと酒の席で話すような話題ではない。じゃあ、その辺りはTURNOVERで説明するから、一度読んでみておいてくれ。スポーツ記者だからといって、特別な手品を使うわけではないのだから…。そう言って話題を変えた。というようなわけで、今回は舞台裏を語ることにした。


 カレッジフットボールの成績をどうまとめるか。まずしなければならないのは、向こうの雑誌を購入することである。雑誌といってもイヤーブックで、シーズン開幕を前に、大づかみの展望があれこれと載っている。これが重要なネタ帳なのである。
 プロのNFLの方が種類は多いが、カレッジのでも幾つか手に入れることができる。何冊あればいいのかと聞かれると、ある程度多い方がいいと答えるのが親切だろう。


 さて、雑誌を手に入れて、次にするのは各イヤーブックのランキングを並べてみることだ。大体どこも25位までを並べて、その雑誌独自のランキングとしている。
 私たちは最終的にはAP通信と、ESPNのものを使って、毎週上がった下がったと、読者の皆さんにお知らせしている。


 雑誌のランキングは、あくまでも開幕前の米国の情勢を知るためのもので、シーズンが始まってしまうと、もうお呼びではない。
 毎週リポートするランキングは、毎回説明している通り、APが記者60人の投票によるもので、25校を連記して1位に25点、2位24点、3位23点…、24位2点、25位1点と点数を与え、それを60人分集計して順位を決める。


 放送局ESPNのものは、有力校の監督またはコーチ60余人が25校連記で投票し、AP同様に集計してランキングを決める。この二つを投票者でくくって記者投票、監督投票と表現することもある。


 AP通信社の電文を見ていると、両ランクとも26位以下、1票1点でも得点したチームまで発表している。この部分を整理しておくと、それなりに面白い結果が見える。
 例えば15位前後にいたチームが、成績不振でランクから姿を消すことがあるが、30位までで踏みとどまり、大物を倒して一気に返り咲くケースなども、ランク外の順位が見えているだけに楽しいものである。


 次に何を見るかは人によって違いがあろう。私は各リーグの順位予想を見る。2015年現在、FBSは10のリーグとそのそれぞれのメンバー、3校の独立校から成り立っていることが分かる。
 「改めてそのようなことを確認しなくてもよかろう」という声が聞こえてきそうだが、リーグの数はよく変わるし、変わらなくてもその中身、つまり加盟校は毎シーズン変化があるのが常態なのである。これを放っておくとえらいことになる。


 一昨年、この仕事に「復帰」した私としては、かつてテキサスとアーカンソーの両州をテリトリーとしていた南西リーグの諸校が、いったいどこへ行ってしまったのかを追跡するだけでも一苦労だった。


 定年を少し過ぎただけの、まだ若かりし頃、東部の独立校が結集して「ビッグイースト」をつくった。新たな時代を見ながら、後進にこのカレッジフットボールの仕事を譲ったのだが、一昨年、そんな「ビッグイースト」などどこへ行ってしまったのか。
 大西洋岸リーグ(ACC)はふくれ上がり、アメリカン体育連盟(AAC)と称する組織もメジャーの存在感を誇っていた。合わせて「ビッグ10」へも名の通った東部の学校が参加しているではないか。このへんの交通整理が、カレッジフットボール担当者として、やらねばならぬ「緊急」の「大仕事」となった。


 連盟とその参加校はこのように気をつけて扱うべき「項目」だった。その連盟は米語では「Conference」である。日本では東京六大学野球リーグというように、連盟をリーグと言い換えることが多い。
 ところが米国の大学スポーツを扱えば扱うほどConferenceが目立ってくる。45年ほど昔、現存するアメリカンフットボールの専門誌「TOUCHDOWN」が発刊されたころ、このカタカナ語を思い切って「カンファレンス」と置き換えたのを思い出す。


 今では翻訳カタカナ語として、旺文社の「中辞典」などに載っているのはうれしい。SECを「「南東リーグ」と短く表現しているが、本来は「南東カンファレンス」だとご理解いただきたい。


 次の作業はこうした各リーグの勝敗表の作成である。これも必須である。というのも、米国のカレッジフットボールは、連盟内の試合と併せて、連盟外との対戦も公式戦の成績としてカウントするからである。逆の言い方をすれば、公式戦以外はしない、あるいはできない、と言ってもいい仕組みだからなのだ。


 米国の1シーズンの試合数は選手権戦、ボウルゲームを含めて合計14試合。地区対抗の決勝や選手権戦などの最大2試合を差し引いて、12試合がレギュラーシーズンの限度である。
 ここから他連盟チームとの試合3ないしは4を引くと、残りは多くて9試合。大体8試合が残ることになる。地区制を取る連盟が多くなってきているが、ビッグ10に例えると、各地区7校。地区内で総当たりの6試合を戦い、他地区と2試合、他連盟と4試合といった形である。他の連盟も似たり寄ったりだ。


 そこで勝敗表が強調される。つまり同一連盟といっても、他地区の5校とは試合をしない。他地区の相手が弱いチームだったら、勝率の計算で間違いなく有利となる。したがって最初に勝敗表を作っておくことで、そのチームの1年間のスケジュールが厳しいのかどうかを見ることができる、とまあこんな仕組みだ。


 次は個人のデータ作りに取り掛かる。まず各誌が選ぶオールアメリカを取り上げよう。1軍を取り上げ、2軍に移り、3軍もキープする。次いで連盟毎のオール○○○。これだけでもきちんと整理しておくと、相当な数の「好選手」のリストが手に入る。
 合わせて最近ではポジションごとの好選手リストも登場し始めた。これだけリストアップすればもう不自由はない。


 そして最後に、ハイズマン賞の候補選手リストを取り上げる。確かに有用である。ただこれは攻撃チームのスター、QB、RB、WRに,片寄るので、こだわりすぎるのはまずい。だから、あまりお勧めできない。ほかに幾つか個人賞があるので、ついでに見ておくのもいいかもしれない。


 これで準備は整った。あとはAP通信を使って、主な成績を各週ごと(1週1試合、念のため)にまとめておく。基準をランキングチームにしておくのが無難だろう。
 また忘れずに勝敗表を埋める。同時に各週のランキングも忘れずに。レギュラーシーズンも10月の終わりごろになると、選手権戦の選考委員会のランキングも始まるので、これもキープする必要がある。
 同時にこの頃は、ボウルゲームの組み合わせが話題になっていやでも目に付くので、レギュラーシーズンの暇なときに、今季のボウルゲームを日付順に準備しておくのも大事かもしれない。


 以上を面倒くさいと思うか、楽しみと考えるか。人それぞれなので、こうしろ、ああしろとは言わないが、米国のカレッジフットボールをご紹介するに当たっては、最低この程度はやっておかないと、という話なのである。

【写真】昨季の全米大学最優秀選手「ハイズマン賞」に輝いたオレゴン大QBマリオタ(AP=共同)