「聞いてもいいかなあ」。フットボール仲間の一人が、年の暮にこんな電話を掛けてきた。カレッジフットボールのコラムを書くようになってから、時々思いがけない質問を浴びるようになった。これもその一つだ。


 「どっちの方が入りがいいのかな」。つまりこういうことだ。ボウルゲームの時期を迎えて、各地で次々に試合が行われる。ほとんどが、リーグ戦で普通に使われている競技場であることが多い。ボウルゲームとリーグ戦を比べて、どちらの方がよく観客を集めているか、という質問だった。


 難問だった。あの資料のあれとこれを見比べるとすぐ分かりますよ、と即答できないのが辛い。無論、一つだけなら答えは簡単だろう。だが、これが39試合もあると、それなりの下調べが必要で、年末の忙しい時には、右から左へというわけにはいかない。
 普段から準備をしておかないと無理である。「選手権が終わってからにしましょう」。こう言って話を打ち切ったが、その答え、放り出しておくわけにはいかない。
 めでたくオハイオ州立大がチャンピオンの座を獲得した今、面倒な作業の方に取り掛かってみるのも面白いかもしれない。


 例えばニューメキシコボウル。ボウルゲームが始まった12月20日、場所はニューメキシコ州アルバカーキ。競技場の名前はユニバーシティー・スタジアムという。どこのユニバーシティかというと、山岳西部リーグ(MWC)の山岳地区に所属するニューメキシコ大のことである。
 言うまでもなく、スタジアムの所有者はこの大学で、ボウルゲームの主催者が、試合のために借りているのだ。


 ニューメキシコ大はこのボウルが生れた2006年ごろには、そこそこの成績を残していた。この新しいボウルゲームには最初の2年ほど出場したが、その後は鳴かず飛ばず。今季はMWCから同じ地区のユタ州立大。契約しているUSA連盟(CUSA)からはテキサス大エルパソが選ばれた。ユタ州立大は同じリーグだが、毎年ここで試合するわけではない。


 しかし距離的に言えば、どちらも近い。応援の観衆も出かけやすい場所だったせいもあるのかどうか。この日の有料入場者数は2万9729人を数えた。
 このスタジアムの収容人員は3万9224人。フィルスティールズ誌のデータを借用すると、全米大学体育協会(NCAA)のフットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)の128校中81位の容量がある。
 約4万となると、日本の基準だとかなりでかいが、向こうではこんな程度なのかとも思う。ともかくボウル入場者を率にするとほぼ75%である。


 さて、一方のニューメキシコ大チームはどの程度スタンドを埋めていたのだろう。2014年のデータは持っていないが、前年の2013年の数字をフィルスティールズ誌から借用すると、6試合戦って平均が2万3537人、率で60%だった。つまり今回のボウルゲームの方がよく入ったということになる。


 この調子で幾つか、レギュラーシーズンとボウルゲームとを比較してみた。結論はさまざまだった。そのシーズンが好調だったかそうでなかったいかにもよるし、組み合わせにもよる。
 とりわけ人気のあるチームとのボウルゲームはよく入るし、名前の通っていないところが出場したボウルは、あまり観客は伸びていなかった。また人気の高かったボウルゲームが来年もそうだとは一概に言えないように思う。


 当初の質問についてはこの程度でお茶を濁す。もともと試合会場が同じと言うだけで、そのほかの要素が出場校から何から皆違うのだから、レギュラーシーズンとボウルゲームの観客数の単純比較は、あまりやっても意味がない。


 話題を変える。小生のコラムも2シーズンを過ぎた。カレッジフットボールを担当して、話題を拾い集めながら、昔携わったタッチダウン誌のことを思い出していた。同じフットボールでも全米に数多くの大学チームが散らかり、こまごまとした成績を拾い上げるのに結構手間がかかるので、みな敬遠気味だった。


 いささか我田引水になるが、この仕事に入ったころから、プロ野球の成績、それもチーム、個人を問わず、記録のたぐいをこと細かにノートに付け(付けさせられの方が的確かもしれない)、取材しているゲームのほかに、他球場からの同僚の問い合わせにも応じ続けてきた一記者の習性が、ここにきて「花開いた感」がある。


 そのころは100近い「メジャー」と呼ぶ主力チームを拾い上げ、リーグ別、地域別に仕分けて、歴史などをチェック、リーグ間の対戦をフォローするのが基本動作だった。
 このころプロ野球記者が大リーグの取材によく出かけるようになった。野球自体は日本で見ても、米国で見ても同じようなものである。だが彼らは、米国に到着してすぐ、驚くべきものを次々と目にすることになった。フットボールの競技場である。


 最初は、ここで何か大きな大会でもあったのかな、ぐらいの感じで国立競技場ほどの大スタジアムを眺め、「これいつ使ったの?」「昨年の秋です」。え、そんなイベントあったっけと少し悩み、「じゃあ次は」「今年の秋からですよ」と追い打ちを掛けられ、今秋この容れ物使うような大イベントあったっけ、と少し悩んでから、「これどこが所有しているの」と尋ねて、次の答えで仰天するのが常だった。「この地元の○○大学です」


 これ実話に近い。もう少しかつて聞いた話を紹介すると、この国立競技場規模の大スタジアムが、あっちにもこっちにもあると聞かされる。それもフットボールの競技場としてである。
 共同通信運動部でデスクになったころ、特派員のこの手のびっくり話を聞くのが、何とも心地よかった記憶が鮮明である。


 そこで後年、スタジアムの収容人員が気になり始めた。現在、特派員はもう誰も巨大スタジアムにはびっくりしなくなっている。私も落ち着いてこうした資料の整理に取り掛かれるようになった。


 一昨年の初めにミシガン大の入場者数新記録に触れたような記憶があるが、コラムの前半で書いたような話をまとめるためには、建設年度、天然芝か人工芝かの区別、スタジアムの収容人員と全体の中での順位、学生数、スタンドの充填率などを知る必要がある、と考えるようになった。
 今回はそのような数字でトップに位置するものを、少しご紹介して、稿を閉じたい。無論カレッジだけで、プロは除く。


 まず最大の収容人員を誇るのはさっきも書いたが、ビッグ10(Big10)のミシガン大で10万9901人、次いで同リーグのペンシルベニア州立大の10万6572人。3位は南東リーグ(SEC)のテネシー大で10万2455人。4位に王者オハイオ州立大で10万2329人、5位はSECのアラバマ大で10万1821人、6位はBig12のテキサス大で10万119人。10万人以上のスタジアムはこの六つとなっている。


 Pac12の南加大が使う7位のロサンゼルス・メモリアルコロシアムは1923年の建設で、2度のオリンピックに使われ、9万3607人を収容する。
 8位はジョージア大で9万2746人、9位はルイジアナ州立大で9万2542人とSEC勢が続き、10位にPac12のカリフォルニア大ロサンゼルス(UCLA)が使うローズボウルの9万1136人が続いている区切りのいいことに、ここまでが9万人台のスタジアムで、11位のフロリダ大からは、8万8548人と8万人台だ。


 いくら容れものが大きくても、中味がスカスカだったらお笑いである。その点巨大スタジアムの所有校はいずれもすごい。ただしここで使っている数字はすべてフィルスティールズ誌の2013年分の記録で、14年分ではないことをご承知いただきたい。


 1位は無論ミシガン大。1試合当たりの観客動員で収容人員を上回る11万1592人を記録した。2位にはオハイオ州立大がつけ、10万4933人とこれまた公認分を上回る。そして3位はアラバマ大。10万1505人とこの3校が10万人を超えた。


 単純な入場人員の比較も興味深いが、それ以上に座席の充填率を見るのが実質的であろう。これのトップはPac12のオレゴン大で106・8%。収容人員が5万4000人と少ないからだが、毎試合満員以上の混みようとなる。
 次はBig12のカンザス州立大の105・8%。3位はSECのテキサス農工大が105・5%で続く。いつも満員で知られるノートルダム大は、今回の集計でも不動の100%。8万0795人分の座席はいつも完売と言うわけである。ただ全体の順位では17位となる。


 なおFBSで座席数最小のスタジアムはアイダホ大の1万6000人で1万台はこの1校。かつて1試合平均1万7千人が1部Aの条件の一つだったが、このへんはどうなっているのか。あるいは増設計画があるのかもしれない。
 実質動員数での最下位は中部アメリカン連盟(MAC)の東ミシガン大で、ただ1校四桁の4051人だった。無論同校は座席の充填率でも最下位で13・4%にとどまっている。容れものが3万200人と、「大きすぎ」たせいもあるかもしれない。


 容れものが大きいと言えば、アラバマ大バーミングハムが受け継いだリジョン・フィールドは、チームの「規模」の割には大きく、7万2000人。これで充填率を計算すると、群を抜いて低くなる。
かつてはアラバマ大本体がシーズン中に何度か使っていた競技場だということを考えると、1万548人で14・7%はやむを得まい。

【写真】10万1800人を収容するアラバマ大の巨大なスタンド=撮影:Yosei Kozano、2014年