名門オハイオ州立大がオレゴン大を42―20で破って王座に就いた。初の栄冠を狙ったオレゴン大は夢をつかめなかった。


 全米大学体育協会(NCAA)のフットボール・ボウル・サブディディビジョン(FBS=旧1部A)で今季から採用された選考委員会ランキング上位4校によるプレーオフを勝ち抜いた、太平洋12大学のオレゴン大と、ビッグ10のオハイオ州立大の決勝戦は1月12日、テキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで開催。勝ったオハイオ州立大にとっては、2002年度、03年1月3日のフィエスタボウルでフロリダのマイアミ大を延長2度の激戦の末、31―24で下して以来、12年ぶりの王座獲得となった。


 選考委ランク2位のオレゴン大は、今季のハイズマン賞を受賞したQBマーカス・マリオッタを軸としたハイパワーオフェンスで勝ち進み、1月1日のローズボウルでの準決勝で、今季無敗のフロリダ州立大を59―20の大差で退け、決勝へ駒を進めていた。
 一方ランク4位で最後に登場したオハイオ州立大は、準決勝のシュガーボウルでアラバマ大との激戦を42―35で制し、晴れ舞台への登場を果たした。


 今回の新形式の選手権戦以前は、元日の伝統と格式を備えた通常のボウルゲームの後、改めて選抜したランク1、2位校で王座戦を行ってきた。オレゴン大は2010年に2位ランクで1位ランクのオーバーン大と対戦。19―22で涙をのんだ。
 オハイオ州立大は2007年に1位ランクで選手権戦へ進み、2位ランクのルイジアナ州立大(LSU)を迎え撃ったが、24―38で敗れ去った。なお両校の顔合わせは2010年(09年度)のローズボウル以来で、このときはオハイオ州立大が26―17で勝っている。


 キックオフは12日午後7時半(東部標準時でいえば午後8時半、日本標準時で13日午前10時半)に始まった。テレビショッピング関連会社のAT&Tの名をかぶせた競技場は、プロのNFLのダラス・カウボーイズの本拠地として、ダラスに隣接するアービングの競技場に代えて、ダラスとフォートワースの中間の街アーリントンに新たに建設、2009年に完成したばかりのフィールドである。
 通常は定員8万余だが、席の増設で2011年のグリーンベイ・パッカーズとピッツバーグ・スティーラーズのスーパーボウルでは10万3千余の大観衆を収容した。この日は8万5689人が観戦した。


 試合前の予想はオレゴン大7点の優位だった。最大の理由はオハイオ州立大のQBがチームの3番手だったことだろう。正QBは4年生でハイズマン賞の有力候補の一人だったブラクストン・ミラーだったが、なんとシーズン開幕前に負傷で戦列から去っていた。


 2番手のレッドシャツの1年生J・T・バーレットが、ミラーの穴を埋める大健闘を見せていたが、シーズン終盤これまた怪我で、エースQB座を3番手で2年生のカーディル・ジョーンズへバトンタッチしていた。
 ジョーンズは大詰めのミシガン大との試合、リーグ優勝をかけたウィスコンシン大戦、そしてアラバマ大とのプレーオフ準決勝と重要な3試合を乗り切ってきた。しかし、今度はハイズマン賞受賞のマーカス・マリオッタとの対決である。打ち勝つには荷が重い、とする意見が「7点」の劣勢に現れたものとみてよさそうである。


 一方オレゴン大にもちょっとした不安材料があった。薬物違反でWRのダーレン・カーリングトン、RBのエヤール・フォードが使えなくなったのである。しかしオハイオ州立大に比べればたいしたことはなかった」。


 オレゴン大は最初のドライブをあっさり得点に結びつけた。自陣25ヤードからの攻撃で、着々と前進。2分30秒余りを費やしたのち、11プレー目にゴール前7ヤードからQBマリオッタがWRキーノン・ロウへ7ヤードのTDパスを決めて先制した。
 多くのファンはこれがオレゴン大のハイパーオフェンスの始まりと思ったかもしれない。しかし前半で良かったのは結局ここだけ。あとはオハイオ州立大が練り上げてきたマリオッタを封じ込める工夫が効果を上げ、前半のTDはこれだけにとどまった。


 オハイオ州立大の3年目の2年生QBジョーンズは、その大柄な体そのままに、常に強気だった。この日誰の調子がいいのか、誰がいい働きをしているのかをしっかりつかんだプレーをコールした。
 これが的中した。第1Qの中盤、ジョーンズは自陣3ヤード地点から10プレーをかけ、3分16秒を使ってTDを挙げた。ギャンブルを織り込んだ強引なドライブの末、この日のMVP、RBエゼキエル・エリオットが33ヤードを一気に走り切って同点とした。


 ゲームの流れを引き寄せた97ヤードのロングドライブだった。オハイオ州立大はこのあとただの一度もオレゴン大にリードを許すことはなかった。このあとオハイオ州立大は自陣46ヤード地点から速攻をかけ、残り1分8秒に、QBジョーンズがゴール前1ヤードからTEニック・バーネットへ1ヤードのパスを通して勝ち越した。第2Qは互いの主導権争いに緊迫した状態が続いた。


 しかし、攻撃の起点となるマリオッタを徹底的にマークしたオハイオ州立大は、残り7分ごろに50ヤード線付近から攻勢に転じ、6プレー後の4分49秒、ゴール前1ヤードから、QBジョーンズが自ら中央を突いて21―7と差を広げた。手堅かった。
 昔々、同校のあの大監督ウディ・ヘイズさんが強調した「ボールコントロール・オフェンス」の伝統が、ここかしこにちらつく堅実な攻めだった。


 一方オレゴン大は形勢逆転の糸口をつかもうと懸命だった。オハイオ州立大の3本目のTD後、タッチバックの25ヤード線から、策の限りを尽くし、12プレーをかけてオハイオ州立大ゴールに迫ったが、TDには至らず、アイダン・シュナイダーの26ヤードのFGで10―21と差を詰め、後半に望みを託した。


 第3Qはその意味ではオレゴン大にとって申し分のない内容を伴っていた。攻守にビッグプレーが続出したのだ。豊かな攻撃力を持つオレゴン大の反撃に期待した向きも多かったのではあるまいか。
 始まって3分余り、攻め込まれたオレゴン大はジョーンズのパスを奪い返した。自陣30ヤードからの最初の攻撃で、QBマリオッタはミドルゾーンへ出たRBバイロン・マーシャルへ見事なパスを決めた。オハイオ州立大の度肝を抜く70ヤードのTDパスだった。


 続いて残り8分半、オレゴン守備陣はQBジョーンズをサック。こぼれたボールをDTアリク・アームステッドが相手の23ヤード線で押さえた。あとから言えることだが、オレゴン大に続けさまに転がり込んだチャンスは、やはりTDに結びつけておかねばなるまい。逆に言えばここを先途と守り抜いたオハイオ州立大を褒めるべきかもしれない。
 結局オレゴン大は5プレーを費やしたがエンドゾーンへは届かず、6プレー目の残り6分39秒、シュナイダーの23ヤードのFGで20―21と1点差に詰め寄っただけだった。


 リードを奪えるかどうか。その重みに私は改めて気づかされた。「命拾い」したオハイオ州立大は、この直後からこの日の立役者、RBエリオットが手のつけられない大活躍を演じた。


 1点差に詰め寄られた直後から、オハイオ州立大は粘り強くオレゴン大を攻め立てた。時間をたっぷり使い、オハイオ州立大は11プレーをかけてこの75ヤードを攻め切った。TDは第3Qの最終プレー。RBエリオットが9ヤードを走り抜けて28―20と差を広げた。
 第4Qのオハイオ州立大は自陣24ヤードから9プレーを費やし、5分を超すドライブで、再びエリオットが2ヤードのTDラン。残り28秒には86ヤード、7プレーのドライブでエリオットが1ヤードを突進し、42―20とした。


 スタッツ(記録)を見る。オハイオ州立大ではエリオットの数字が群を抜く。36回走り、246ヤードを稼ぎ出した。1プレー当たり6・8ヤードになる。TD数は4、MVPは当然であろう。なお、エリオットはこの3試合で合計696ヤードを走っていることを付け加えておく。
 QBのジョーンズはパス23本で16本成功、242ヤードをマークしている。ランも21回で38ヤード、TD1は悪くない。


 オレゴン大は無論QBマリオッタが中心。37本投げ24本成功。333ヤードを稼ぎ出した。TDパスは2本。インターセプトが1本あるが、これはゲームの最終プレーで奪われたもので、大勢には全く影響のないものだった。
 ランはRBトーマス・タイナーが稼ぎ頭だが、12回で62ヤード。マリオッタもよく走るが、10回で30ヤード。ランを完全に封じられていたさまが、浮き彫りになる。


 四つのターンオーバーを手にしながら、最少得点に終わったのがオレゴン大の敗因だが、このへんの数字がその辺りを物語っているようだ。
 オハイオ州立大のアーバン・マイアー監督は「完璧だった」とスカウトたちの分析力をたたえ、エリオットは「夢がやってきた」と大はしゃぎだった。またマリオッタは「結果はこんなものだったが、これまではこの顔ぶれでいい結果を残してきたんだ」と前向きのコメントだった。

【写真】NVPに選出されたオハイオ州立大のRBエリオット(AP=共同)