右を向いても左を向いても、伝統の一戦ばかりの週となった。全米大学体育協会(NCAA)のフットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)の第14週は11月27、28、29日を中心に米国各地で行なわれた。
 レギュラーシーズンは原則としてこの週と、次の12月第1週で終わりを告げ、シーズンはボウルゲームの時期に突入する。同時に今年は、史上初のトーナメントによる選手権大会が開かれるため、次週はその出場4校が選考委員会から発表される運びとなる。


 その最終週を前に、ほとんどのチームはこの週、豊かな伝統に彩られ、負けてはならないライバルとの試合に臨んだ。大半は州を二分する好敵手との顔合わせだが、ほかにも隣り合った州の代表同士、あるいは所属リーグ内の古くからのライバル、さらに大陸を横切っての歴史に飾られた一戦と、話題には事欠かない組み合わせが目白押しだったのである。


 選手権大会用のランキングはこの週も、前回とほとんど変わらぬ顔ぶれが、前回と同じような順位で並んでいだ。
 11月25日発表の分は、1位アラバマ大、2位オレゴン大、3位フロリダ州立大、4位ミシシッピ州立大。ベスト25の試合は、この週19試合を数え、うち5試合がランク校同士の対戦だった。


 参考までにカードを書いておく。11位アリゾナ大―13位アリゾナ州立大、9位ジョージア大―16位ジョージア工科大、19位ミシシッピ大―4位ミシシッピ州立大、14位ウィスコンシン大―18位ミネソタ大、1位アラバマ大―15位オーバーン大。


 ご存知の方は多いと思うが、ランキングに関係なくこの週のカードを並べると、○○大―○○州立大、××州立大―××大といった組み合わせばかりなのに気がつくだろう。お隣同士は、例示したウィスコンシンとミネソタ。オーバーンはアラバマとアラバマ州の人気を二分するライバル同士である。
 ランキングからは外れているが、南加大―ノートルダム大などは歴史的なカードとしてよく知られる。2校の所在地を考えると、中西部から太平洋岸まで、米大陸を斜めに横断する一戦なのだ。なお今年は南加大が49―14と大勝した。


 組み合わせ話のついでに、次週、レギュラーシーズン最終週の日程についても触れておこう。
 シーズン当初からレギュラーシーズンのカードとして組まれていたのは、ビッグ12(Big12)のオクラホマ大―オクラホマ州立大、テキサスクリスチャン大(TCU)―アイオワ州立大、ベイラー大―カンザス州立大の3試合。アメリカン体育連盟(AAC)のシンシナティ大―ヒューストン大など4試合がある。


 このほかに重要なのが5、6両日に開かれる各リーグの優勝決定戦だ。大西洋岸リーグ(ACC)、ビッグ10(Big10)、USA連盟(CUSA)中部アメリカン連盟(MAC)、山岳西部連盟(MWC)、太平洋12大学(Pac12)南東リーグ(SEC)の、合計7組織の各地区1位校がリーグチャンピオンの座をめぐって対戦する。
 毎年、ここでボウルゲームの最終的組み合わせが決まってきたのだが、今季はこれに選手権大会の出場校決定が絡んでくる(最終発表は7日)ので、勝負そのもの以上に全米の耳目を集めそうだ。
 なお、かの高名な陸海両士官学校の対校戦は、この週の翌週、12月13日に行なわれる。


 リポートに移る。最大の興味を引いたのはアラバマ州タスカルーサに10万1000人余の大観衆を集めた1位アラバマ大―15位オーバーン大の決戦だろう。結果はアラバマ大が55―44で昨年の雪辱を果たした。
 ご記憶の方は多いだろう。試合の大詰め、外れたFGを長躯リターンして、34―28とオーバーン大が劇的な逆転勝ちを収めた試合を。だから、というわけではないが、この日、アラバマ大は第4Qに鮮やかな逆転劇を演じた。


 両チーム合わせて99点が記録されたのを見ても分かる通り、試合は激しい点の取り合いに終始した。第1Qにはアラバマ大が2TDを挙げる好調な滑り出しを見せ、オーバーン大の2FGをしのいだ。だが第2Qから第3Q初めにかけて、オーバーン大がQBニック・マーシャルのパスを軸にフル回転した。
 3本目のFGの後、マーシャルはWRサミー・コーツへ34ヤードのパスを決めて16―14とリード。アラバマ大も前半終了1分23秒前にRBのT・J・イェルドンが1ヤードを突進してリードを奪い返した。


 しかしオーバーン大はタッチバックの後、マーシャルがドローで7ヤード。続いてコーツへのパスプレーがきれいに決まって、68ヤードのTDとなった。
 29秒後の再逆転である。オーバーン大は続けてアラバマ大QBブレーク・シムズのパスを奪い、ダニエル・カールソンが前半終了と同時にFGを決めて、26―21で折り返した。


 ハーフタイム後もオーバーン大の勢いは衰えなかった。第3Q残り11分2秒、オーバーン大はインターセプトからのドライブで、マーシャルがWRクァン・ブレイへの5ヤードのパスで差を広げた。
 アラバマ大に反撃を許し、シムズからWRアマリ・クーパーへのTDパスを浴びたが、TFPを阻んで33―27。第3Q残り3分30秒にはFGを加えて優位を保った。


 ここからだった。アラバマ大の本格的な反撃は。ビッグプレー。試合の転換点。流れを決定づけるそうした種類のものが、この第3Q終盤から第4Qにかけて集中し、アラバマ大の見事な逆転劇へつながっていった。


 まずは第3Q終了3分20秒前、先ほどのオーバーン大のFGの直後である。キックオフの球を直接エンドゾーンへ蹴り込まれたアラバマ大は、シムズがクーパーへ鮮やかなパスを通した。クーパーの快走と相まって、これが75ヤードのTDパスとなった。文句のないビッグプレーであった。
 続いてアラバマ大に試合の流れを一気に引き寄せるプレーが出た。この試合アラバマ大が初めて記録したインターセプトだった。


 オーバーン大37ヤード地点での第3ダウン、QBマーシャルが放ったパスを、アラバマ大のSSニック・ペリーが自陣46ヤード地点で奪い取り、オーバーン大の31ヤード線まで23ヤードをリターンした。
 アラバマ大はこのチャンスにテンポのいい攻撃を重ね、3プレーでオーバーン大8ヤード線へ球を進めた。気負いこんでフォルススタートの反則も出たが、ここで第4Q。QBシムズは落ち着いてまず右へ突進。2ヤード稼ぐと今度は左を突き、11ヤードを走り切って逆転した。アラバマ大は2点のTFPをたたみかけ、シムズがWRデアンドリュー・ホワイトへパスを決めて42―36とした。


 流れはこれで向きを変えた。アラバマ大は残り8分5秒でシムズがホワイトへ6ヤードのTDパス。ポイントにはしくじったが、残り3分46秒、RBデルリック・ヘンリーが25ヤードを快走して加点。大勢を決めた。オーバーン大は終了20秒前、RBコーリー・グラントの5ヤードのランと2点のTFPで追いすがったが及ばなかった。


 QBの活躍はこうした高得点試合になると、どうしても欠くことができない要素で、その内容は記録によくあらわれるものだ。だがアラバマ大のシムズが3本もパスを奪われたのに対して、オーバーン大のマーシャルはわずか1インターセプト。にもかかわらずオーバーン大が奪われたこの1本が、勝敗に大きく響いた。なおSECの西を制したアラバマ大は6日、東の1位ミズーリ大と戦う。


 このほかのランク校同士の対決に触れる。Pac12南の11位アリゾナ大と13位アリゾナ州立大は、アリゾナ大が第3Qの2TDにものをいわせて42―35で勝ち、5日にオレゴン大とリーグ優勝を争う。


 ジョージア州の王座争いはACCの16位ジョージア工科大が延長の末30―24でSECの9位ジョージア大を破った。ジョージア工科大はゲーム終盤、ハリソン・ブッカーが53ヤードものFGを決めて追いつき、先攻の延長戦ではRBザック・ラスキーが2ヤードのTDラン。TFPに失敗したが、ジョージアのパスをCBのD・J・ホワイトがインターセプトして白星を挙げた。


 ジョージア工科大は6日、3位のフロリダ州立大とACC優勝決定戦を行う。フロリダ州立大はSECのランク外フロリダ大と接戦を演じ、24―19で全勝を守った。フロリダ州立大はレギュラーシーズンでは同校史上初めての2年連続無敗。NCAA史上では16度目の記録である。


 一時期騒がれたミシシッピ勢の対決は、19位ミシシッピ大が地元の利を生かし、第3Qに大量17点を挙げ、31―17でミシシッピ州立大を下した。
 Big10では6位オハイオ州立大がランク外ミシガン大を42―28で倒し、18位ミネソタ大を34―24で下した14位ウィスコンシン大との優勝決定戦(6日)に臨む。


 なおCUSAの24位マーシャル大は28日、西ケンタッキー大と激烈な得点合戦を展開したう上、延長戦にもつれた。マーシャル大は幸先よくTDを挙げたが、西ケンタッキー大はTDを返し、QBブランドン・ドーティがWRウィリー・マクニールへパスで2点のTFPに成功。67―66で勝ち、マーシャル大の全勝の夢を断った。

【写真】オーバーン大に勝利して沸く、アラバマ大のファンで埋まったスタンド(AP=共同)