プレーオフの選考委員会が動き始めた。全米大学体育協会(NCAA)のフットボール・ボウル・サブディビジョン=FBS(旧1部A)の第10週は、10月30日(木)と11月1日(土)に全米各地で熱戦を繰り広げた。
 この週は試合に先立って、28日(火)に全米大学選手権出場校の選考委員会が、第1回の委員会ランキングを発表した。


 実はこの選手権、4校出場のアウトラインは発表されていたものの、その4校をどう選ぶのかがよく分からなかった。最終的には委員会の委員長と、12人の選考委員に委ねる、というところまでは理解できたが、どのような形を採るのかは不明だった。
 どうやらこれから、一つずつその謎が解けていくのだと思うと、この間の約1カ月が楽しくなる。その第一歩が委員会のランキングだった。


 これを見るまでは、現在のAP通信(60人の記者投票)のベスト25校と、有力大学チームの監督62人が投票するベスト25校の二つが使われるのではあるまいか、と想像していた。以前も申し上げたが、60人、さらには122人がランキングづくりをやると、結構常識的なランキングができる。
 突飛なものは多数の中に埋もれるためか、不思議なものは出来上がらない、というようなことを申し上げた。委員会作成のベスト25は、突飛ではないが、それなりに「個性的」であった。


 ご紹介する。ただこれをお読みになっている間に、多分もう一つ新しいのが発表になっているだろうと思う。ウイークリーとはいえ、間に合わないものは間に合わぬので、致し方ない。ご勘弁願いたい。
取り上げたのは、記者、監督のランキングと比べて、どの程度食い違い、どの程度似通っているのかを、比較するためである。


 時系列を整理しておく。10月26日(日)には第9週の結果に基づくAP、監督両ランキングが発表され、28日(火)に今回取り上げた委員会ランキング。11月1日までの第10週の成績による両ランキングは、11月2日(日)に発表、となっている。
 この流れをないがしろにすると「後出しジャンケン」になるので、物書き、特に新聞記者は気をつけねばならない。


 委員会ランキングのリードの中でAP通信はこんな表現を使っていた。「委員会は南東リーグ(SEC)がお好きなようだ」と。
 1位ミシシッピ州立大、2位フロリダ州立大は他のランキングと同じで、委員会のは3位にオーバーン大が腰を据え、この週初黒星を喫したミシシッピ大が4位。一つ飛ばしてアラバマ大が6位につけていた。実はこのあたり、他のランキングとそれほど違っているとは思えない。


 このSEC勢はいずれも西地区で、東地区のチームは委員会ランキングで10位につけたジョージア大だけにとどまっている。西地区はミシシッピ州立大とミシシッピ大、アラバマ大とオーバーン大といった、それぞれの伝統の一戦が11月30日に予定され、まだまだ天下分け目の戦いが繰り広げられる。
 これから「黒星での後退」が起きるわけだ。こうしたことを見越して、この4校を上位に集めたか、とも思いたくなる。


 両ランキングと違うと言えば、ノートルダム大の評価の低さが目立つ。両ランキングでは7位や6位に位置しているが、委員会のでは10位と、三つ四つ低い。
 このあと終盤までマークするのは、アリゾナ州立大、南加大といったあたり。他に強敵がいないせいかもしれない。


 このほかテキサスクリスチャン大(TCU)、カンザス州立大、ベイラー大のビッグ12勢が、11月に次々と対戦するのも興味の尽きぬところ。オクラホマ大が後退し、テキサス大も多くを期待できないだけに、注目したい。
 また委員会ランキングでは、太平洋12大学(Pac12)はオレゴン大、ビッグ10(Big10)はミシガン州立大が上位に挙げられているが、両ランキングとさほど変わらない。


 なお委員会の最終ランキングは12月7日(日)に発表される。その上位4校が優先的に選手権出場となるのか。それともリーグの優勝校としての資格に重きが置かれるのか。あるいはランキングやリーグ優勝といった条件は、重きを置かれるとしても、あくまで委員会のディスカッションの資料にすぎないのか。興味は尽きない。


 さて第10週である。ランキングに名を連ねる25校のうち、5校がお休み。あとの20校のうち、ランク校対決が4試合。12校はランク外との対戦だったので、ランキング校の試合は合計16となる。
その中でランク校同士の対決は、いずれもリーグの主導権争いに直結する組み合わせだった。特にSEC西地区の順位争い、7位9位ミシシッピ大が4位オーバーン大を、地元コリンズワースへ迎えた一戦は、互いに一歩も引かぬ熱戦を展開した。


 一方が取れば、また一方が取り返す。後半の初めに一時、ミシシッピ大が10点差をつけたこともあったが、その差はすぐ埋まり、逆にオーバーン大がリードして最終Qへ入る、といった経過をたどった。
 オーバーン大はQBニック・マーシャルが254ヤードを稼ぎ、これに合わせてRBキャメロン・アーチスペインが143ヤードを走るバランスの取れた攻撃を展開。ミシシッピ大はQBボー・ウォーレスが40回投げて28回成功、341ヤード2TDと期待に背かぬ大活躍を演じていた。


 第4Q初め、ミシシッピ大はQBウォーレスが自らの3ヤードの突進で31―28とリードを奪い返したが、オーバーン大は続くドライブを粘り強く運び、残り10分23秒にアーチスペインが6ヤードを走って、35―31と再び優位に立った。
 このまま終わらせたいオーバーン大。それを許してはとミシシッピ大。そして、ミシシッピ大にとっては思い出したくもない瞬間が訪れた。


 残り3分22秒から始まったドライブは、ウォーレスのパスとRBジェイレン・ウォルトンの快走などで、ゴール前20ヤード線まで到達し、残りは1分30秒。ここでウォーレスはWRラクオン・トレッドウェルへのパスに成功した。
 エンドゾーン目指すトレッドウェル。その前に立ちはだかるWLBクリス・フィスト。ゴールラインの「上」で二人がぶつかり合った。ボールがこぼれた。


 審判団は当初、TDを認めていた。しかし写真判定の末、ゴールラインの上を通過したボールは、トレッドウェルに「保持」されていなかったとの決定が下った。オーバーン大MLBカサノバ・マッキンジーのリカバーが認められ、ボールはオーバーン大の1ヤード線上に置かれた。ミシシッピ大は万事休した。


 20位22位の西バージニア大が10位のTCUを地元に迎えたBig12の王座争いに響く一戦は、息詰まるような接戦を展開した末に迎えた最終プレー。TCUがジャデン・オーバークロムの37ヤードのFGで31―30と好ゲームにピリオドを打った。


 Pac12のランク校同士が対戦した2試合も注目の的だった。ローズボウル(競技場の名前として書いている。このへんは気遣いが必要)に約8万の観衆を集めて行なわれた14位15位アリゾナ大と25位カリフォルニア大ロサンゼルス(UCLA)の試合は、7点を先行したアリゾナ大を、第3QにUCLAが逆転して17―7で勝った。
 ランキングの順位から見れば番狂わせだが、シーズン前の予想、両校の歴史などを併せて考えると、当初から五分五分と考えるのが妥当である。


 15位14位のアリゾナ州立大が、18位ユタ大をアリゾナ州テンピに迎えた決戦は延長戦に突入。FGに失敗したユタ大に対して、アリゾナ州立大はキックに成功、19―16で1敗を守った。
 延長戦といえば24位デューク大がランク外のピッツバーグ大に食い下がられて延長入り。2度の延長を演じて51―48で「サヨナラ勝ち」した。


 番狂わせといえば、9位8位のジョージア大がフロリダ大に20―38と完敗した。NCAAからの制裁がこの週も解けなかった大エースのRBトッド・ガーリーの不在が、明らかに影響した黒星だった。
 アメリカン体育リーグ(AAC)では、東カロライナ大が21位19位とランキングを上げていたが、この週はランク外のテンプル大に10―20と敗れ去った。


 このほかランキング上位校の苦戦、辛勝が目立った週でもあった。1位のミシシッピ州立大はランク外のアーカンソー大に先行され、第4Q序盤にQBダク・プレスコットとフレッド・ロスとの69ヤードに及ぶパスプレーの成功で、貴重な決勝点をものにした。
 2位のフロリダ州立大もランク外のルイビル大に粘られ、引き離されては追いすがる、これまでにはまずなかった苦しい試合。しかし第4QにQBジェーミス・ウィンストンがようやく本領を発揮、TDを連取して42―31と辛くも勝った。


 6位7位のノートルダム大も、ランク外の海軍士官学校と予想外の接戦を演じ、第3Qには一時28―31とリードを許す始末。第4QにQBエバレット・ゴルソンが、パスならぬ力走で、この日の2本目と3本目のTDランを挙げるなどで勝ち越し、49―39で勝った。


 なお全勝校はミシシッピ州立大、フロリダ州立大のほか中部アメリカンリーグのマーシャル大の3校。いずれも8戦全勝である。
 1敗は先週まで18校を数えたが、5校減って13校となった。またミシシッピ大は7位9位のランクを12位13位と落としたが、2敗組の中では一番高い順位にとどまっている。

【写真】パスをインターセプトするランク1位のミシシッピ州立大DBレドモンド(右)、(AP=共同)