米国の週刊誌で「スポーツイラストレーテッド」(SI)という雑誌がある。題字の通り、スポーツ専門の雑誌である。あるいは写真誌といった方がいいかもしれない。
 読み物としゃれたカラフルな、あるいは迫力と躍動感あふれた写真が載っている。特に表紙は写真に文字がうまく絡み合って、今は何のシーズンで、何が話題なのかが当然のことだが、一目瞭然で分かりやすい。


 過日、丸の内の高名な書店をふと訪れた。開幕前はいろいろなスポーツ雑誌の、カレッジフットボールの「イヤーブック」を求める。その中には当然このSI誌も入っている。
 ただシーズンが深まってくると、ペナントレースは外電、つまりAP通信のニュース原稿に頼ることが多いので、週ごとに出るSI誌とはつい疎遠になる。


 ところがこの日は違った。スポーツ物が並ぶ棚へ目が自然に向いた。見慣れぬユニホームを着た選手数人が、手を差し延ばしながら、高々と飛び上がっている。歓喜のポーズの合成写真である。まぎれもなくSI誌の表紙だった。
 ユニホームの色はマルーン(臙脂)とブルーの二つ。早慶? 立命関学? と、これは冗談―。そうなんだ。これがミシシッピ州立大とミシシッピ大のユニホームなんだ。
 両校の顔合わせはまだ先。しかし第6週のAPランキングで両校が同一ポイントの3位に並び、第7週のランキングではミシシッピ州立大が単独トップに立って、カレッジフットボールは新たな局面に入っている。


 何のちゅうちょもなかった。私は雑誌を手にしたままカウンターへ向かった。「ミシシッピ、やりすぎ」とでも訳せばいいのだろうか。白抜きの文字が躍っていた。
 アメリカ合衆国の地理のおさらいをする。ミシシッピというからには、当然あの大河に沿う場所に位置する。が、ここはメキシコ湾から探したほうが早い。
 東から、湾をふさぐように半島が垂れ下がるフロリダ州。その西、画面では向かって左へ目を動かすとアラバマ州。そのまた西へ目をやる。


 ミシシッピの河口が突き出しているのが見える。その河口にニューオーリンズ。川筋に沿って北、つまり地図の上へ上がる。地図でいうとその河の右側がミシシッピ州で、左側がルイジアナ州だ。
 ただ念を押しておくが河川の右岸左岸でいうと、ミシシッピ州は左岸、ルイジアナ州は右岸なので、お間違えのないように。


 形は思った以上に細長く、ルイジアナ州と並んで北進すると、いつの間にか対岸はアーカンソー州になる。そして北はテネシー州に突き当たって終わりとなる。
 面積は日本になぞらえると、東北地方の6県、関東地方の1都6県全部に新潟、山梨両県と長野県の半分ほど。つまり大ざっぱにいうと、本州の東日本ぐらいの広さで、全米では32位だという。人口は300万足らず。こちらは31位だそうだ。


 いわゆる深南部である。ここでは触れないが、人種差別とかの厳しいところともいう。とにかくその州が、ここへきて大きくクローズアップされている。


 全米大学体育協会(NCAA)フットボール・ボウル・サブディビジョン=FBS(旧1部A)の第9週は、10月23日(木)から25日(土)までの週末、各地で激戦を展開した。


 注目のミシシッピ勢だが、この週はランク1位のマルーン色のミシシッピ州立大が、ケンタッキー大を45―31で退けた。しかしブルー(と赤が本来のスクールカラー。表紙は対比させるために青を強調したジャージを使ったようだ)のミシシッピ大は、隣の州を代表するルイジアナ州立大(LSU)に逆転負けした。


 新しいランキングでは、無論ミシシッピ州立大が トップ。2位はこの週お休みだったフロリダ州立大がつけている。ケンタッキー大に食い下がられたので、ミシシッピ州立大のポイントは少し減っているかもと思ったが、逆に両ランクともミシシッピ大に入っていた1位票が全部ミシシッピ州立大へ流れて、ポイントが増えていた。
 現象として面白かった。3位はアラバマ大、4位にオーバーン大とアラバマ州を二分する強豪が続き、APではオレゴン大、監督投票ではミシガン州立大がそれぞれ5位に入った。


 ランキング校が登場した試合は19。ランク校同士の激突は2試合にとどまった。全勝校がどんどん数を減らしているので、全勝校対決もなくなった。また番狂わせもめっきり減った。ランク外のチームがランク校を破るというケースは、監督ランク24位のミネソタ大がイリノイ大に黒星をつけられた試合だけだった。


 さてランク首位のミシシッピ州立大である。この日はビジターとしてケンタッキー州レキシントンへ乗り込んだ。先手は取ったものの、絶えず追われる展開だった。
 第1QはロングドライブからエースのRBジョシュ・ロビンソンが12ヤードを走って先制。追いつかれた後はFGとQBダグ・プレスコットの2ヤードのランを重ねて、前半を17―10で折り返した。


 後半はプレスコットの11ヤードのランで優位に立つ。ケンタッキー大がQBパトリック・トウルズの10ヤードのランで差を詰めると、ミシシッピ州立大はプレスコットがTEブランドン・ヒルへ8ヤードのTDパスを通して突き放しにかかる。
 こうして常に一つか二つのTD差をつけるミシシッピ州立大の試合運びに、ケンタッキー大も慌てず騒がずピタリとついてゆくあたり、実のある攻め合いだった。


 ケンタッキー大がトウルズからWRジャベス・ブルーへの58ヤードのパスプレーを決めて、1TD差で第4Qを迎えたあたりはもう一波乱かと予感させたが、ここでミシシッピ州立大にビッグプレーが飛び出した。このへんがさすがランキング首位を行くチームの貫録だろうか。
 残り11分47秒、ミシシッピ州立大は大黒柱のロビンソンが73ヤードの独走を演じて、再び2TD差。終盤トウルズに4ヤードを走られて、差を詰められた直後のキックオフ。もちろんオンサイドキックだったが、これを手にしたクリスチャン・ホームズが61ヤードを快走。TDを奪って45―31と、とどめを刺した。


 ミシシッピ州民の期待を背負ったもう1校、3位ミシシッピ大は24位23位のLSUと、緊迫した守り合いのゲームを展開した末に逆転負けを喫した。
 ミシシッピ大は第1Qの終盤、QBボー・ウォーリスがWRコディ・コアへ15ヤードのTDパスを通したが、LSUの堅守に得点はこれっきりだった。


 LSUも第2Qに21ヤードのFGを決めただけで、試合は全くのこう着状態に陥っていた。結局第4Qも半ば過ぎの残り5分7秒、LSUはQBアンソニー・ジェニングスが95ヤードの大ドライブに成功した。13プレー目にTEローガン・ストークスへ、3ヤードのパスを通して決勝点。10―7で勝利をつかんだ。
 開幕前のLSUに対する評価を考えると、ランキングの上ではともかく、番狂わせとは言いにくい試合だった。


 これとは対照的に、19位ユタ大が20位21位南加大を24―21で破ったゲームは、ランキングとは矛盾するが、やはり番狂わせというべきだろう。
 試合はユタ大が先行、南加大が第2Qに逆転。ユタ大も第3QのTDでリードを奪い返したが、第4QにTDを許す苦しい内容。残り2分余りとなってユタ大は自陣27ヤード地点から最後の反撃に臨んだ。


 QBトラビス・ウィンストンの必死のドライブの末の11プレー目、残り8秒でボールは南加大陣1ヤード。ウィンストンはWRカーリン・クレイへ逆転決勝のパスを通し、古豪南加大から貴重な勝ち星をものにした。
 ユタ大にとっては太平洋12大学リーグ(Pac12)加盟以来最大の勝利といえる。Pac12では25位UCLAがコロラド大と対戦、2度の延長で40―37とコロラド大を下した。


 延長と言えば、ビッグ10では13位12位オハイオ州立大が、ペンシルベニア州立大と激戦を演じ、31―24で10万を超えるビーバースタジアムの大観衆にため息をつかせた。またこのリーグでは監督投票24位のミネソタ大がイリノイ大に24―28と逆転負けを喫している。


 ビッグ12(Big12)をリードする10位テキサスクリスチャン大(TCU)はテキサス工科大から大量82点を奪い、82―27で大勝した。TCUにとっては最多得点、QBトレボン・ボイキンの7TDパスは同校の新記録だった。
 Big12ではこのほか、11位カンザス州立大がテキサス大から23―0と完封勝ちを収めた。
 往年の南西リーグとビッグ8が一緒になって、組織がBig12と再構築されてから、カンザス州立大にとってはテキサス大からの初めての勝ち星という。また、テキサス大の完封負けは2004年10月9日にオクラホマ大に抑え込まれて以来のことという。

【写真】ここまで全勝をキープして、全米ランキング1位のミシシッピ州立大QBプレスコット(AP=共同)