全米大学体育協会(NCAA)フットボール部の最上位、FBS(旧1部A)の第8週は10月16、18日に全米各地で熱戦を繰り広げた。大半のチームが6試合を消化、いよいよこの週から7試合目に入る。つまりレギュラーシーズンの後半戦の開始となる。


 ランキング校はAP、監督投票とも同じ顔ぶれで、ちょうど25校。ランク校同士の対戦が5試合。ランク校とランク外の対戦は11試合。前回首位に立ったばかりのミシシッピ州立大のほか、オーバーン大、アリゾナ大、東カロライナ大の4校がお休みだった。
 主役の1位チームの欠席はあったが、この週はそれを上回る注目のカードがあった。先々週まで首位を張っていた2位フロリダ州立大が、5位ノートルダム大を本拠地フロリダ州タラハシーに迎えての大一番がそれである。


 開幕当初、トップのフロリダ州立大最大の難敵として、ノートルダム大をこの欄で取り上げたことをご記憶の方はいらっしゃると思う。
 あの時は名前を挙げただけで終わったが、この名門校は数多くの栄冠、王座のたぐいに彩られているばかりではなく、対戦するチームの連勝、栄光等のブレーカーとしても、名だたる存在であった。


 あの1912年、無敵を誇った陸軍士官学校を、だれも考えつかなかったパス主体の攻撃で葬り去ったチームである。1953年から全勝の快進撃を続けて、次々勝利記録を塗り替えるオクラホマ大を、5年目の1957年に7―0で破って、その連勝記録を47試合目で食い止めたチームでもある。
 NCAAの最多勝、最高勝率、最長連勝記録の、いたるところにその達成者としてのみならず、阻止者としても顔を出す「特別な」チームであることは広く知られている。


 フロリダ州立大のジンボ・フィッシャー監督は、この日の相手がどのようなチームであるかは百も承知だった。各ポジションにタレントをそろえ、それを巧みにまとめ、2012年終盤から22連勝を重ねてきた同校としては、今季最も注意を払うべき相手にほかならなかった。ノートルダム大を倒さずに2年連続の栄冠はない。


 夜のドク・キャンベル・スタジアムは定員を少し超える8万2431人が詰めかけていた。スリリングな試合となった。せめてその経過だけでも、お伝えしたいと思う。


 まず第1Qの6分過ぎ、ノートルダム大は自陣16ヤードから念入りにたっぷりと時間をかけたドライブに乗り出し、残り2分10秒、ゴール前1ヤードからQBエバレット・ゴルソンがWRコーリー・ロビンソンへパスを通した。
 先制TDに12プレー6分43秒を費やしたのに対し、フロリダ州立大の反撃は手早かった。65ヤード4プレー、わずか1分51秒の攻撃だった。最後にゴール前11ヤードからQBジェーミス・ウィンストンがWRトラビス・ルドルフへパスを決めて、直ちに同点とした。


 これまで強豪といわれたチームが、反撃にもたついて、いつの間にかノートルダム大のペースにはまりこみ、気が付くと身動き取れない状態に追い込まれていくのを、米国のファンは数限りなく見てきた。
 のんびり構えていると取り返しがつかなくなる。そのような状態に陥りかねないところを、あっさり解消して見せたのはさすがである。


 しかし、試合の流れが決まるには、まだ時間が必要だった。第2Qに入ってすぐ、インターセプトの応酬。相手の31ヤード地点でウィンストンのパスを奪ったノートルダム大は、ゴルソンがWRクリス・ブラウンへ22ヤードのパスを通し、畳みかけるようにロビンソンへ9ヤードのTDパス。あっさりと2本のパスで優位を保った。


 このあとはFGの応酬だった。まず残り4分46秒にはフロリダ州立大。39ヤードを10プレー、3分41秒かけてゴール前へたどり着き、28ヤードのFGに結びつける。続いて残り39秒、今度はノートルダム大が67ヤードを14プレー、4分1秒かけて前進し、34ヤードのFGで7点差を守った。勝負は後半に持ち込まれた。


 カギの一つは言うまでもなく、フロリダ州立大のQBウィンストンである。つまり、パスの出来栄えである。フロリダ州立大は自陣30ヤードから反撃のスタートを切った。ウィンストンは落ち着いてプレーをコールした。
 4分余りを費やした、後半最初のドライブは、9プレー目のウィンストンからWRラシャド・グリーンへの、10ヤードのパスで実を結んだ。17―17の同点となった。


 ノートルダム大もすぐさま、自陣17ヤード線から反撃に転じた。QBゴルソンはパスでフル回転した。3分余りのち、テンポのいい攻めを重ねて11ヤード線へ迫り、WRウィリアム・フラーへ勝ち越しのTDパスを決めた。
 試合は攻め合いの様相を呈した。こうなるとイメージとして、フロリダ州立大の攻撃力の方が強いかな、という気持ちに傾いてくる。75ヤード線から始まった攻めは、こちらもテンポがよかった。3分48秒が消費され、その7プレー目に、RBカーロス・ウィリアムズが左へ走って、同点とした。


 第4Qの3分20秒、第3ダウンでゴルソンがサックされ、ノートルダム大は相手陣29ヤード線からの、46ヤードのFGを余儀なくされた。
 自陣42ヤードから約4分10プレーを費やした末の貴重な勝ち越し点だった。しかしこの3点をノートルダム大が守り切れるとは、誰も考えていなかっただろう。ウィンストンのパスの精度が後半、一段と高まっていたからだ。


 フロリダ州立大は続く75ヤードからの攻撃を確実に前進させた。ノートルダム大同様、約4分を費やしたドライブだったし、プレーの数も10プレーだったが、収穫は一回り大きかった。
 7分39秒、ゴール前1ヤードで、ウィリアムズがスクリメージラインの中央を堂々と駆け抜けた。フロリダ州立大にとって、この試合初めての勝ち越し点であり、しかも勝利に直結するTDだった。


 このあとのノートルダム大がみせた死に物狂いの反撃を見過ごすわけにはいくまい。幕切れはドラマティックだった。その最後のドライブは、相手の49ヤード地点からと、恵まれたスタートだった。
 しかしフロリダ州立大の守りは堅かった。フラーへのパスは成功したものの、マイナス2ヤード、続いてゴルソンがサックされ6ヤードのロス。第4ダウンのギャンブルのパスは、相手の40ヤード地点の少し手前、右のサイドラインぎりぎりで待ち受けるロビンソンの腕にボールはすっぽりと収まった。
 チェーンの棒を横目に、タックラーを引きずりながら突進するロビンソン。この20ヤードのゲインに続き、フラーへのパスで17ヤード、ゴルソンのスクランブルが出て12ヤードとダウン更新を重ねて、ノートルダム大はフロリダ州立大陣8ヤード地点まで前進した。


 互いにここを先途と攻め、守った。第3ダウン、ゴルソンは右のライン際へ走り出ていたWRのC・Jプロサイスへ、パスを投げた。直進したプロサイスはそのままエンドゾーンへ駆け込んだが、ここで反則が発生した。
 他のプレーヤーがパスに向かうディフェンスの選手の動きを妨げたと、パスインターフェアを取られたのである。TDは無論取り消され、球は18ヤード線まで下げられた。第4ダウンのゴルソンのパスはLBジェイコブ・ピューにインターセプトされ、激戦にピリオドが打たれた。


 反則のコールについて、ノートルダム大のブライアン・ケリー監督は「反則になるかどうかを厳密にチェックしながら練習してきたプレーだ。反則ではないと信じている」と語った。


 ほかにもいい試合はいっぱいあった。16日の20位23位ユタ大とオレゴン州立大は、延長2回でユタ大が29―23の勝利。(延長の得点はそのまま加算するのがNCAAのルール。ここでのTDや距離など個人成績もみんな加算する。原則をこの際覚えましょう)。18日には14位カンザス州立大が31―30の1点差で11位オクラホマ大を破った。


 4位ベイラー大が27―41で西バージニア大に敗れたのは、ランク校がランク外に負けたこの週唯一の番狂わせだった。7位アラバマ大が21位テキサス農工大を59―0とシャットアウトしたのは、やはり珍しいとしなければなるまい。
 どちらかというと攻撃力上位の時代に、得点ゼロというのは「よほどのこと」である。12位テキサスクリスチャン大(TCU)は42―9で15位オクラホマ州立大に快勝。17位アリゾナ州立大は26―10で23位20位スタンフォード大を下した。


 ランキングの上位3校は前週のまま。両方の4位にアラバマ大が返り咲いた。5位以下はAPがオーバーン大、オレゴン大、ノートルダム大、ミシガン州立大と並ぶ。監督投票では、顔ぶれはこの4校と同じだが、ミシガン州立大が他の3校を飛び越して5位になっているのが面白い。
 9位はジョージア大。アーカンソー大を45―32で破ったが、RBトッド・ガーリーの出場停止は今週も続いた。

【写真】アラバマ大はテキサス農工大を59―0で完封した(AP=共同)