略語、略称というのがある。私たちの仕事場はそのオンパレードである。こうした余分な話を枕に振りながら進めてきた今年のカレッジフットボールも早いもので、もう10月に入った。全米大学体育協会(NCAA)のFBS(旧1部A)のペナントレースは第5週である。


 さてその略称だが、「TURNOVER」の愛読者の方々は、クオーターバックをQBと記し、LBはラインバッカーのことだということは、百もご承知である。とりわけ米国南部の最有力組織、サウスイースタン・カンファレンスを私が南東リーグと略し、さらにはSECとまで短くしているのもご存じだろう。
 とにかく元のままだと、字数が多すぎて必要な情報が十分に盛りきれなくなるのを恐れるからでもある。


 大学名で有名な略語はカリフォルニア大ロサンゼルスのUCLAだろう。最初の「U」がユニバーシティ・オブで、「C」がカリフォルニア、「LA」はもう誰が見てもロサンゼルスである。これを日本語だけで短くすると「カ大ロス」となろうか。UCLAに比べると字面も発音もUCLAには及ばない。


 私たちが略語、略称を使うときは、その言葉が他を明確に区別できるか、これまでのものと比較して、統一が取れているか、整合性があるかなどを常に点検する。先だってご紹介した向こうの雑誌の一つ「フィル・スティールズ誌」の目次だが、便利にできていたので、コピーしてチームの所属の確認に使うようにした。
 仲間の一人に「使ってみるかい」と渡したら、一つ一つ確認しながら、終わりの方に出てくる大学の略称に目を留めて「このWKUっていうのは何ですか?」と尋ねてきた。


 「え、WKU?」。以前にも申し上げたが、長い間カレッジフットボールの実務から離れていたので、新しい組織や、新興のチームについて分からぬことがたくさんある。これもその一つだ。「W」が方角で多分ウエストかウエスタン。「U」がユニバーシティ。ここまでは見当がつく。問題は「K」だ。カンザス? ケンタッキー? それともどこかの地方都市名?
 降参した。あとで必ず調べます。そう返事をして帰宅後、他の雑誌を見た。この雑誌は略称を使っていなかった。疑問は一瞬で解けた。西ケンタッキー大だった。


 余談をする。このWKU、ケンタッキー州の中央からやや西寄りのボウリンググリーンという町にキャンパスを持つ州立大である。2009年にFBSに昇格し、昨年まではサンベルト・リーグ、今季からはUSA連盟所属の新興チームである。
 一方ボウリンググリーンと言えば、フットボールの世界ではオハイオ州の同名の大学が知られている。ここは歴史も古く、中部アメリカン連盟の中心チームとして名高い。この両校が今年の開幕戦で、初めて顔を合わせた。つまりボウリンググリーンつながりである。


 習慣から言えば、ことしがオハイオ州だったので、来年はケンタッキーということになる。
 ゲームは8月の28日だったので、時期外れのニュースとなったことをお詫びする。結果は西ケンタッキー大が、QBブランドン・ドーティの569ヤードを投げる活躍で、59―31と古豪を下した。


 さて、1部Aのランキング校は9月の25日と27日の2日間合計19試合を各地で展開した。ランキング校がランク外の相手に敗れたのは2試合。いずれも実力的には互角の対戦と言えよう。
一つはSECの好カード。13位15位の南カロライナ大が登場したが、ミズーリ大の追い上げに20―21と苦杯を喫した。
 第4Q半ばに13点差をつけられたミズーリ大は、第4Qに底力を発揮。残り1分36秒、大黒柱のRBラッセル・ハンスブローが9プレー51ヤードのドライブの最後を飾って、1ヤードのTDを奪って逆転勝ちした。


 もう一つは大西洋岸リーグ(ACC)の順位争いに影響する試合。監督ランク23位のデューク大がフロリダのマイアミ大に10-22と競り負け、今季初黒星を喫した。
 このほか、ランキングの上では順当ながら、ランク無関係のスリルに富んだ接戦が多かった。
25日夜の2試合はまず、ビッグ12の好カード。AP24位のオクラホマ州立大がテキサス工科大と接戦を演じた。先手はテキサス工科大。しかしオクラホマ州立大は控えQBダックス・ジャーマンが活躍。第2Q半ばから3連続TDパスを畳み掛けて一気に逆転した。
 この日のジャーマンは31本投げて17本を通し、370ヤード、4TDパス、さらには自らもランで1TDを記録した。


 太平洋12大学(Pac12)では11位10位のUCLAと15位12位のアリゾナ州立大の全勝対決が注目された。
 第1QのFGの交換で始まった試合は、やがて地元アリゾナ州立大がQBマイク・バーコービシーのパスで2TDを記録し、17―6と優位に立った。ところが、UCLAはこうした流れをビッグプレーの連続で一息に断ち切ってしまった。


 まず第2Q残り13分、QBブレット・ハンドリーが自陣20ヤード線から1年生のWRエルドリッジ・マシングトンへパスを通して80ヤードのロングTD。続いてハンドリーは90ヤード、8プレーの慎重なドライブ。
 残り2分13秒にWRネット・エイジーに3ヤードのTDパス。20―17と形勢をひっくり返したUCLAは、前半終了間際にCBイシュメイエル・アダムズがバーコビシーのパスを奪い、95ヤードをリターンして10点差をつけた。
 UCLAのロングゲインはまだ続いた。後半の最初の攻撃の第1プレーで、ハンドリーがWRのジョーダン・ペイトンとのコンビで80ヤードのTDパスに成功。34―17としてアリゾナ州立大の闘志に水を差した。


第3Qの残り9分8秒にはアダムズが100ヤードのキックオフリターンを記録した。TDはあと3本続いたが、これだけ長いのを畳み掛けられては、守る方もたまったものではあるまい。
 なおこの試合、ロングゲインの嵐を物語る数字を一つ上げておく。両校のボールを保持の時間だ。UCLAは25分53秒。アリゾナ州立大は34分7秒だった。


 SECに限らないが、有力リーグのチームはランキングに入っていようがいまいが、互いに顔を合わせると、昔からの伝統があるので、それなりにいい試合をする。
 今季ランク外のテネシー大は27日、ランク12位13位のジョージア大と戦ったが、最後まで粘り、3点差で涙をのんだ。ジョージア大はRBトッド・ガーリーがその威力をいかんなく発揮した。28回走り、208ヤードを獲得し、要所で2TDを記録した。


 6位7位のテキサス農工大とアーカンソー大の試合も同様である。ランク校としてはその分だけ注意を払わなくてはならない。
 追いつ追われつの試合はランク外のアーカンソー大が28―14とリードして第4Qを迎えた。テキサス農工大はここで2TDを奪い、辛くも延長戦へ。先攻の延長戦では、QBケニー・ヒルがWRマルコム・ケネディへ25ヤードのパスを一発で決めてTDを挙げ、アーカンソー大のTDを封じて白星をもぎ取った。


 Pac12でも16位14位のスタンフォード大がランク外のワシントン大と競り合っている。先行したスタンフォード大を追って、ワシントン大が追いつき、13―13で折り返した。守り合いのゲームだった。
 これも延長か、と思われたが残り4分29秒、スタンフォード大はQBケビン・ホーガンが自ら5ヤードを走って決勝点を挙げた。


 ランク1位のフロリダ州立大では、QBジェーミス・ウィンストンがフィールドへ戻ってきた。この日は北カロライナ州立大との全勝対決である。大西洋岸リーグ(ACC)ではこのほかジョージア工科大が土つかずで頑張るが、結局はこちらの一戦がリーグの主導権争いということになる。


 それにしても北カロライナ州立大のスタートは、すさまじかった。第1Qの15分間に何と24点。 始まって18秒、QBジョコビー・ブリセットが54ヤードのパスをWRボー・ハインズへ決めて先行。追いつかれた残り6分5秒には、RBシェイドラック・ソーントンが3ヤードを突進。FGを挟んで残り2分24秒にはブリセットがWRジョナサン・オルストンへ6ヤードのTDパスを決めたのである。


 フロリダ州立大が目を覚ましたのは第2Qから。7―24とリードされた直後から、82ヤードのロングドライブをスタートさせ、10プレー目にRBカーロス・ウィリアムズが4ヤードを突進してTD。続く北カロライナ州立大陣22ヤード線からの攻撃は、ウィンストンからWRクリスチャン・グリーンへのパス1本で追加のTDをものにした。


 後半も北カロライナ州立大の豊かな攻撃力を食い止めるのに少し時間がかかり、フロリダ州立大は28―38と差を開かれた直後から反撃開始。残り5分6秒にウィンストンがウィルソンへ15ヤードのTDパス。3分24秒にはWRのラシャド・グリーンへ4ヤードのTDパスと、得点を重ねてついに42―-38と逆転した。
 第4Qはウィリアムズの2TDでようやくとどめ。ランク1位のチームとしては、辛くも攻め勝ったという内容だった。


 28日発表のAP、監督両ランキングでは、フロリダ州立大はAPでは1位をキープしたものの、監督投票ではアラバマ大に9点抜かれて2位に後退した。1位票の数はトップだったが、この得点経過から見れば、ランキングの変動はやむを得ない。
 このほか、ルイジアナ州立大はニューメキシコ州立大相手に起用した新人QBのブランドン・ハリスが大活躍。3TDパスを投げるとともに、自ら走って2TDと好成績を残した。またノートルダム大はQBエバレット・ゴルソンがパス39本を投げて、32本を通すという高い成功率を示して、シラキュース大を31―15で退けた。

【写真】北カロライナ州立大戦で復帰したフロリダ州立大のQBウィンストン(AP=共同)