世の中にはご存知の通り時差がある。世界の各地で使われている、それぞれの標準時の差である。


 私がこの仕事についた当初は、それほど「時差」について考えずともよかった。しかし、スポーツの取材というものは、時差とのお付き合いなくしては成り立たないものだ、ということを、やがて認識するようになる。
 共同通信の本社へ転勤になってからは、なおさらだった。特に内勤では時差がついて回った。大きな大会の時間割、その競技の成績。海外遠征に同行する記者からの記事の入電時刻。監督や選手のコメントの電話取材。大きな催しがあると、すぐさま夜昼逆転する自らの日常生活を顧みながら、「ああ、地球は丸いな」と、しみじみと思ったものである。


 日本で標準時と言えば兵庫県の明石市を通る東経135度の子午線を基準とした時間が一つあるだけで、普段の生活では「時差」を意識することはない。ところが海の向こう、米国では大西洋から太平洋まで、大陸の中に四つの標準時間帯がある。
 東から大西洋岸の「東部標準時」。これが日本との時差14時間ある。次いでミシシッピ河を挟む「中部標準時」。時差は1時間増えて15時間。ロッキー山脈地帯の「山岳部標準時」が続き、時差16時間。太平洋に面した「太平洋岸標準時」は時差17時間である。面倒なのはこれが夏場になると、夏時間制度のために、日本との時差が1時間減ることだ。


 時差話のついでに標準時と夏時間の境目をお話しすると、米国では夏時間が始まるのが3月の第2日曜日の午前2時からで、終わるのは11月の第1日曜日午前2時。期間にすると、何と8カ月近い期間がサマータイムで、むしろこっちが標準時じゃないのか、と混ぜっ返したくなる。
 なお日本では占領下の1948年(昭和23年)4月に「夏の一定期間、仕事の能率を高めるために」と夏時刻法が公示され、夏時間は48年、49年、50年、51年それぞれの夏に4度施行された。


 しかし、1952年、占領終結の年に法律が廃止され、夏時間は復活することもなく今日に至っている。
 時差、夏時間、面倒な話を並べて大変申し訳なかったが、慣れてしまえばさしたることはない。アメリカ合衆国の大陸を四分割する四つの標準時間帯のほかに、アラスカ、ハワイ、アリューシャン列島の方まで含めると標準時間帯は実に七つになる。
 しかしこのおかげで向こうでは年末年始など、上手にチャンネルを変えていけば、次々とボウルゲームを見ることができるのだ、ということに思いがいたリ、現に行なわれているその仕組みに感服したりした。


 さ、本題に入る。全米大学体育協会(NCAA)FBS(旧1部A)のレギュラーシーズン第4週は9月18日(木)と20日(土)に、米国の各地で行われた。
 ランキング校(ベスト25)の登場はAP、監督の両方を合わせて15試合。東部時刻の正午から、太平洋岸時刻でいえば午後7時30分開始まで(東部時午後10時30分)各地でスリルに富んだ試合が繰り広げられた。


 18日夜にはランク校対決が1試合。南東リーグ(SEC)の5位オーバーン大が、20位のカンザス州立大の地元へ乗り込んだものの、すっかり食い下がられて大苦戦。辛くも20―14で逃げ切った。
 20日は平凡に始まった。正午(東部)開始のゲームは、1部A相手とはいえ格下で、13位14位でSECのジョージア大が、サンベルトリーグのトロイ大を66―0と大差で完封。ビッグ10の11位ミシガン州立大は中部アメリカンリーグ(MAC)の東ミシガン大に73―14と大勝。同ビッグ10の19位17位、ウィスコンシン大はMACのボーリンググリーン大を68―17と退けた。


 東部時刻の3時半になって、情勢がやや緊迫し始めた。ランク3位2位で、SECのリーダー的存在のアラバマ大が、同校のタスカルーサの大スタジアムに10万を超す大観衆を集めたフロリダ大との試合は、第3Q半ばまで追いつ追われつの競り合いで、21―21の好ゲーム。
 しかし地力に勝るアラバマ大は、第3Q残り5分27秒、RBデリック・ヘンリーの3ヤードの突進で勝ち越して試合の主導権を握ると、後は、QBブレイク・シムズが4本目と5本目のTDパスを畳み掛けて42―21で片を付けた。
 シムズはパスで5TD、獲得距離では同校史上第2位に当たる、445ヤードを記録して勝利に貢献した。


 山岳地帯の午後、21位23位の独立校ブリガムヤング大(BYU)が、大西洋岸リーグ(ACC)のバージニア大と、これまた追いつ追われつを展開した。前半、バージニア大に1FGのリードを許したBYUが、後半に入ってQBテイソン・ヒルの、投げてよし、走ってよしの活躍からペースを握り、41―33で勝った。
 しかし、それまでとは違って、この時間帯から波乱の予感が極めて顕著になってきた。そしてこの日の番狂わせが相次いで起きた。


 まずは2週続いてのアメリカン体育連盟(AAC)の東カロライナ大の殊勲に注目しよう。今回その矛先にかけられたのは、またもACC。バージニア工科大に続いて、北カロライナ大が痛めつけられた。
 念のため書き添えるが、北カロライナ大はAPの順位ではランク外ながら、監督のランキングでは25位の間違いなくランク校である。そして試合はまれに見る得点合戦の末にランク外のチームが、70―41で勝つという番狂わせを演じた。


 ヒーローは4年生のQBシェーン・カーデン。均整の取れた体で、AACを代表するQBとして高名である。そのQBが乗りに乗ったプレーを展開した。試合開始直後の55秒、カーデンは全くの新人WRトレボン・ブラウンへ55ヤードのTDパスを放った。7―13と逆転されたが、ランの大黒柱ブレオン・アレンの11ヤードの突進で14―13と再びリード…。
 こんな調子で試合が進み、第2Qはアレンの44ヤードのTDランを挟んで、カーデンが2TDパスと、前半で35―20と優位に立った。


 特に後半開始早々、LBジーク・ビッガーがパスを奪って46ヤードをリターンし、42―20としたのが大きかった。勝負はここまでという感じだった。
 カーデンはこの日、48回投げ、30回成功。438ヤード4TD。第4Q初めには自ら1ヤードを突っ込んで得点を挙げ、トータルヤードは789ヤードに達した。


 互いにインターセプト1ずつで、パントは北カロライナ大が7だったのに対し、東カロライナ大は2と、このあたり決定的な差がついているが、妙なターンオーバーもなく、合計111点という大量点の割には、乱れの少ないゲームだった。
 この時間帯でのもう一つの波乱が、ビッグ10のインディアナ大が18位19位でSECのミズーリ大を31―27で破った試合である。これまた接戦だった。


 第4Qに決着するまでに、4度同点になった。17―17で折り返し、第3QにTDパスでリードしたものの第4Q序盤に追いつかれたあと、さらに残り2分20秒には40ヤードの勝ち越しFGを許した。
 だが最後のチャンスを迎えたインディアナ大は、見事決勝ドライブに成功した。75ヤードを6プレーで乗り切ったドライブでは、RBテビン・コールマンの44ヤードのランが決め手となり、残り22秒、RBダンジェロ・ロバーツが最後の3ヤードを乗り越えた。


 ルイジアナ州バトンルージュの夜間試合は、タイガースタジアムに10万余の大観衆が詰めかけた。ここでSECの仲間のミシシッピ大に、8位の地元ルイジアナ州立大(LSU)があっさり敗れた。
 攻撃力不十分だったのか。それともミシシッピ大の守りがよかったのか。ともかく立ち上がりにミシシッピ大に2TDと1FGの連続3得点を許してはあとが苦しい。後半も同様に2TDと1FGの3連続得点を喫した。
 LSUは第4Qに必死の反撃を見せ、3TDを畳み掛けた。この3TD、2点のTFPが全部入っていれば同点、延長戦だったが、初めの二つをしくじった。


 このほかはランク校の敗退という波乱はなかったが、7時から8時にかけてのナイターは(ナイターが日本製英語なのは百も承知だが、便利だし日本の読者には理解していただけるので、今後とも使う)どれも接戦だった。全部書くと2回分を超しかねないのでつまみ食いをする。


 まず延長戦になったランク1位のACCの1位のフロリダ州立大だが、これはやはりQBジェーミス・ウィンストンの欠場が響いた。この週の初め、ウィンストンは学内で攻撃的でしかも下品な発言をして、ガーネット・S・ストークス学長代理とスタン・ウィルコックス体育局長から、土曜日のゲーム出場停止を申し渡されていたのである。
 次週にも、この処分が続くかどうかは別問題として、こうした「教育の場」での思わしくない行為についての処分は、米国では厳しく早い。


 こんな状態のフロリダ州立大にとって、同じACCの22位24位のクレムソン大はやはり難敵と言えた。ウィンストンの代役は同級生のショーン・マクガイアが務めた。フロリダ州立大はFGを先取したものの、前半はこの3点だけ。クレムソン大はFGとTDの10点を入れて折り返した。フロリダ州立大は第3Qに追いついたが、第4Qも先にTDされ、マクガイアのパスで追いつく苦しい展開だった。


 延長戦はクレムソン大の先攻。フロリダ州立大はQBデショーン・ワトソンをサックし、さらにゴール前16ヤード地点の第4ダウン1ヤードで、ギャンブルに出たRBアダム・チョイスを押さえ込んだ。
 フロリダ州立大は「25ヤード」をRBカーロス・ウィリアムズが2度、13ヤードと12ヤードを快走して決勝の6点を挙げた。


 このほか太平洋岸のナイターでは、2位オレゴン大がワシントン州立大に互角の勝負を挑まれ、前半は21―21。第4Q半ばに31―31とこの試合4度目の同点とされたが、残り5分33秒、QBマーカス・マリオッタがキーノン・ロウへ6ヤードのパスを決めて、辛くも勝利を手にした。
 細部は割愛するが、この夜は14位16位の南カロライナ大がバンダービルと大に食い下がられ、4位オクラホマ大もバージニア大に、24位22位のネブラスカ大はフロリダのマイアミ大に、とランク校が軒並み苦戦した。


 これだけ荒れ模様なら、第4週のランキングは大きく動くのでは、と思われがちだが、上位の順位は第3週と変わらず、フロリダ州立大の1位票が少し減ってアラバマ大と、オクラホマ大が少し増えた程度だった。

【写真】出場停止処分を受けてサイドラインで戦況を見つめる、フロリダ州立大のQBウィンストン(AP=共同)