正直に言うと、つい10年ほど前までは、わが国唯一のアメリカンフットボール専門誌の「タッチダウン」で、いま同様に本場のカレッジフットボールのあれやこれやを書いていた。
 フットボールは大好き。向こうのはNFLのみならず、カレッジにだって大いに興味があるとおっしゃる方は多い。


 しかし、カレッジを地域ごとに仕分け、組織をまとめ、米本土全体の分布図を描いたうえで、その強弱を語るという作業が必要、という段になると、途端に尻込みする向きが増える。最低128校をしらみつぶしに整理しなければならないからで、その数の多さにへきえきしてしまうからでもあろう。


 ともかく、カレッジフットボールに携わっていると、いつの間にかアメリカ合衆国の地理に結構詳しくなる。地理好きの方には笑われそうだが、米国の大西洋に向いた海岸線と平行に、近くて2、3百キロから遠くて5百キロ、西へ行くと、アパラチア山脈があって、この山から西を「西部」というのだと教えられたときは驚いた。では合衆国の大半は西部ではないか。


 確かにフットボールの雑誌でカレッジフットボールの地域分けを見ると、ビッグ10などは明らかに「中西部」という言葉で仕分けられていた。「東部」などと言うのはいたって狭い地域で、南北戦争で南軍に属していた州はいきなり「南部」でくくられていた。
 その意味では地理のみならず、歴史にも詳しくなった。南部はやたら広くなるので、東西に分けて南東リーグ(SEC)あたりは「南東部」。テキサスを中心にした地域は「南西部」と呼び、かつては有力組織の南西リーグ(SWC)があった。


 その北にオクラホマを中心とした地域があってこれは「内陸部」、今ではビッグ12が陣取る。「平原部」という呼び方もあるのだそうだ。この広い広い平原を過ぎると、アパラチアどころではない巨大な山岳地帯になる。ロッキー山脈である。
 相当広いが「山岳部」または「山脈部」で片づけられる。さあ、日本の向こう岸だ。極西部とか何か大げさな名でも付きはしまいかと期待するが、あちらの雑誌はあっさりと「太平洋岸」。


 こちらとしても資料に米国の雑誌を使い、米国発の米国の通信社の原稿を使っているからには、こうした表現にあえて逆らう必要はあるまい。


 さて、全米大学体育協会(NCAA)、FBS(旧1部A)の第3週は9月11日から13日まで、全米の各地で行われた。
 ランキング校の登場は第1週、第2週に比べて少し減り、この週は18試合。11日は独立校でAP25位のブリガムヤング大(BYU)がアメリカン体育リーグ(AAC)のヒューストン大を33―25で退け、12日はビッグ12で8位、7位のベイラー大が、中部アメリカンリーグ(MAC)のバファロー大に63―21で大勝した。


 1位フロリダ州立大はこの週お休み。最高位は2位、4位で太平洋12大学(Pac12)のオレゴン大。山岳西部リーグ(MWC)のワイオミング大を地元に迎え、QBマーカス・マリオッタの独演会かと思われたが、第1Qは調子が出ず、第2Qからの活躍で48―14にとどまった。
 3位、2位の南東リーグ(SEC)のリーダー、アラバマ大はQBブレーク・シムズの活躍もあり52―12でUSA連盟(C・USA)の南ミシシッピ大を下した。4位、3位のオクラホマ大(ビッグ12)は34―10でSECのテネシー大を退けた。


 ランキング校が敗れる波乱は、すべて建国十三州の地域で起きた。先ほどの地域分けでいうと、東部と南部の大西洋岸である。中にはランク校同士の対戦もあるが、そのランクに開きがあると、上位の敗戦はやはり番狂わせとしてもいい。


 まずは前週、ビッグ10のオハイオ州立大を相手ホームで倒して注目され、いきなり17位19位へ挙げられたACCのバージニア工科大が、AACの東カロライナ大に地元ブラックスバーグの6万3000余人の目の前で21―28と敗れ去った。無論、第3週発表のランクからはあっさり姿を消した。


 不思議な得点経過をたどった試合だった。第1Q、東カロライナ大はQBシェーン・カーデンのパスが面白いように通り、開始2分43秒のWRブライス・ウィリアムズへの4ヤードのTDパスを皮切りに、WRトレボン・ブラウンへ15ヤード、イザイア・ジョーンズへ2ヤードのパスをそれぞれ決めて、あっという間に21―0とリードを奪った。


 バージニア工科大は借金の返済でもするように、QBマイケル・ブルーアーのパスでTDを返した。第2QにはWRイザイア・フォードへ21ヤードのパスを通し、第4Qの6分31秒には再びフォードへ15ヤードのTDパス。残り1分20秒にはカム・フィリップスへ18ヤードのパスが通って、やっと追いついた。


 大量点の後、第2Qから第4Qにかけて、すっかり鳴りをひそめていた東カロライナ大は、ここへきて第1Qのパス攻撃を思い出したかのような速攻を見せた。これが的中した。
 キックオフが35ヤード地点で外へ出た後、QBカーデンはWRカム・ウォーシーへ31ヤードと28ヤードのパスを立て続けに決めた。このプレーに挟まって、バージニア工科大に5ヤードの罰退。残り16秒、カーデンが最後の1ヤードを突進して決勝点を挙げた。


 カーデンは47本を投げ、23本成功。率は低いが427ヤードを稼ぎ出した。一方ブルーアーは56本投げ30本成功したものの298ヤードにとどまっている。
 TDの数はともに3本だがブルーアーは2本インターセプトされた。このへんが勝敗の分かれ目だったかもしれない。


 バージニア州で起きたもう一つの波乱は、番狂わせの度合いという点では、一段と意外性が大きいようだ。ランク外のバージニア大が、AP21位のルイビル大を23―21で破ったものだが、近年の成績から見ると、これは間違いなく大番狂わせである。
 ルイビル大は近年、CUSAから移動してきたチームだが、このところ好成績を残して、ランク入りの常連となっていた。昨季は12勝1敗でボウルゲームではフロリダのマイアミ大に快勝している。


 一方、バージニア大の方は、ACCが発足した1953年に真っ先に加入したオリジナル校とほとんど変わらぬ存在である。もっとも近年は不振続きで、昨季にいたってはリーグ戦の成績が8戦全敗だった。
 しかしこの日のバージニア大は、古参の意地を見せた。第1Qは互いにTDパスをやり取りしたが、第2Qからはバージニア大が試合の主導権を握った。


 アイアン・フライのFGで勝ち越し、第3QにはQBグレイソン・ランバート自らの10ヤードの突進で20―7と差を広げた。ルイビル大はここから反撃に転じた。
 RBドミンゲス・ブラウンの8ヤードの突進に続いてQBウィル・ガードナーがWRジェームズ・クイックへ4ヤードのパスを決めて1点をリードした。だがバージニア大は3分42秒、アイアン・フライが42ヤードのFGを決めて逆転。そのまま逃げ切った。バージニア大のACC内の連敗は「11」で止まった。


 SECでは6位にまで進んでいたジョージア大を、24位、23位へ落ちていた南カロライナ大が引きずりおろした。サウスカロライナ州のコロンビアで行われた試合は、各クオーターに双方とも得点する激しい得点合戦のゲームだった。
 南カロライナ大の勝因を探ると、やはりジョージア大のエースRBトッド・ガーリーを何とか抑えたことに行き着くようだ。個人成績では20回走り、131ヤードを稼ぎ出した。平均6・6ヤードは悪い数字ではない。しかしこれがガーリーのものとなると、やはり不満が残る。TDは第3Qの2ヤードのただ一つ。


 南カロライナ大は第1Qの終盤に2本目のTDパスで14―13とリードした後は一度も逆転を許さなかった。
 第2Qの終わりにはTDパスとFGとで11点差をつけた。第4Qにまた差を詰められると、TBのブランドン・ワイルドが24ヤードを快走して10点のリード。最後は3点差に詰め寄られたが、そのまま逃げ切った。ランクは南カロライナ大が14位、16位と上昇し、ジョージア大は13位、14位まで落ちた。


 バージニア州、サウスカロライナ州と来て、最後はマサチューセッツ州のチェスナットヒルにたどり着いた。つまりACC新参のボストンカレッジである。倒した相手は9位、10位でPac12の南加大である。


 その昔、南加大とオハイオ州立大の、生のローズボウルなどを見て「育った」筆者としては、南加大とくればもうパワーとスピードのチーム、そのものなのである。
 もちろん現在でも力を全面に押し出して戦うことに変わりはないのだが、それでもQBのコディ・ケスラーがガンガンパスを投げ、第1Q半ばに先取点、第2Q序盤にも相手にTDされた直後、すかさずパスで追加点を挙げたりするのを見ると、世の中少し変わってきているのだなあ、と感慨にふけったりする。


 先手を取られたボストンカレッジは6―17から反撃。RBジョン・ヒリマンが3ヤードを突進してTD。前半残り1分27秒にはRBのシャーマン・オルストンが54ヤードを独走して20―17と優位に立った。
 第3Qはヒリマンが1ヤードを突破して加点。第4QにはFGの後、一度は差を詰められたが、残り3分30秒、QBのタイラー・マーフィーが66ヤードもの独走を演じて安全圏へ逃げ込んだ。


 南加大は残り1分18秒で、ケスラーがこの日4本目のTDパスを記録したが、焼け石に水だった。5本のTDをすべてランプレーでマークしたボストンカレッジとの、パスとランの対比が、印象的な波乱の一戦だった。
 この週はほかに12位でPac12のUCLAがランク外に落ちた名門テキサス大と接戦を演じ、20―17で逆転勝ちした試合や、11位の独立校ノートルダム大が、QBエバレット・ゴルソンの奮戦で30―14とパーデュー大を倒した試合などが注目された。

【写真】DBのプレッシャーでキャッチミスをするアラバマ大のWRクーパー(AP=共同)