米大学スポーツの華、フットボールはことし2014年も、全米各地で熱戦を展開する。
 その中で最も高水準で、多くのファンを惹きつける全米大学体育協会(NCAA)のフットボール・ボウル・サブディビジョン(FBS=旧1部A)は8月28日、南東リーグ(SEC)東地区の優勝候補、南カロライナ大が、南カロライナ州コロンビアのウィリアムズーブライス・スタジアムに、同リーグ西地区の有力校、テキサス農工大を迎えて開幕する。


 南北戦争が終結して4年目の1869年の秋、ニュージャージー州ニューブランズウィックで開かれた米大学初のフットボール、ラトガーズ大―プリンストン大の記念すべき試合から数えて145年目のシーズンである。
 レギュラーシーズンは、このあと毎週末のドラマを経て、12月13日にボルティモアで開かれる陸、海軍両士官学校の伝統の一戦で閉幕。引き続きボウルゲーム36試合を経て、選び抜かれた4校による史上初の選手権大会を挙行する。
 元日にはカリフォルニア州パサディナのローズボウルと、ルイジアナ州ニューオーリンズのシュガーボウルで準決勝を行い、12日の決勝でチャンピオンを決めて、今季の幕を下ろす。


 やけに重々しくリードを書いてみた。申し訳ないが、傘寿の爺さんのお遊びと思っていただきたい。その昔、私がまだ駆け出しのころには、大きな大会、例えば夏、冬のオリンピックとか、国内でいえば国民体育大会といったイベントのおりには、結構このような仰々しいスタイルの記事を書いたものである。
 で、今回は物々しい話ではなく、その当時、米国の大学名表記について、運動部の偉い人、あるいは編集局のリーダーの方々、とりわけ、整理部の偉い人たちと丁々発止と渡り合った楽屋話でお茶を濁そうと企んだ次第である。


 実は、なぜこの大学をこう表現するのか、といった素朴な疑問が、ポツリ、ポツリと(私個人に)寄せられているからで、その辺の「統一事項」を一気に解き明かそう、というのが今回の趣旨である。
 カレッジフットボールの話である。まれに高等学校も紛れ込むこともあろうが、出てくるのはまず大学名だ。いろいろある。個性豊かな最高学府である。ありきたりの名前でみんながみんな納まるわけがない。


 大学の表現が実に変化に富む。「University of…」があれば「…University」がある。Universityを使わず「College」もざらだ。「Institute」も多い。「Academy」もそうだ。「School」もあるが、強くないので出てこないだけでもある。


 さあ、これらをどう日本語に置き換えますか? 私は単純明快、ただひたすらに、すべてを「大学」と訳す解決策を採った。
 日本語で「ユニバーシティー」と「カレッジ」を明快に、しかも易しく区別している言葉はない。もちろん総合大学、単科大学とする手はあるだろう。しかし新聞の運動面や、スポーツ雑誌で、このへんにこだわりはじめたら、いくらでも行数が増える。それに記者や執筆者の勘違いで、逆にすることもあり得る。だったらどっちも大学で十分だろう、と私は割り切った。


 お陰で一つ、不思議な訳が残った。どなたもご存じである。「ボストンカレッジ」だ。ボストンという極めて高名な都市の名を付け、似通った名を持つ大学は、ほかにボストンユニバーシティーがある。
 普通のニュース記事などで、どちらをボストン大と訳すか。もうこれは何の疑いもなく後者の「ユニバ」の方だろう。


 ところが、フットボール記事となると「ユニバ」はお呼びでない。フットボールチームぐらいはあるかもしれないが、これを記事として取り上げねばならないことなどまずない。ありえない。反面「カレッジ」は山ほどある。しかし「大」を使えぬ以上、次善の策として「カレッジ」とすることに何のためらいもなかった。
 幸い世間はこれを受け入れてくれた。ありがたかった。かつての東部の雄は大西洋岸リーグ(ACC)の中堅として「ボストンカレッジ」の名を高めている。


 「…University」と「University of…」も、日本語にするときに区別のしようがない。せいぜい「大学…」と「…大学」とにするぐらいだが、肝心の海の向こうからの記事が、このへんの区別などは一切なしで送られて来るのだから、これを正しく訳すなどと言うことは、手間ばかりかかって実り少ない作業となる。
 典型的な例が一つあるので、ご紹介しよう。1部Aのチームだ。


 一つは来日もしたフロリダ州の強豪。もう一つはオハイオ州の伝統ある中堅チームである。どちらもマイアミ大という。フロリダの方は「University of…」でオハイオの方は「…University」なのだ。
 英語で書くときっぱり区別はつくが、それでもそそっかしい人はすぐ間違えるだろう。外電はその意味では親切である。「Miami(Florida)とMiami(Ohio)に区別して送信してくる。


 ただ、気をつけねばならないのがその最終的な日本語への翻訳で、この間の事情をあまり詳しくご存知ない向きは、マイアミ大オハイオ(校)とか、マイアミ大フロリダといった風に表現することがある。
 決定的な間違いだとは決めつけないが、スポーツ記事の世界から見るとほとんど誤りだと言っていい。私はどう書いているかだが、しつこくても「フロリダのマイアミ大」「オハイオのマイアミ大」と区別する。今のところ、これに代わる名案はない。


 話が少し後先になったが、「…大…」という表現にはいささか神経を使った記憶がよみがえる。これもご存じ「UCLA」である。
 今では正式なカタカナに翻訳されるときには、どなたも「カリフォルニア大ロサンゼルス」と何の苦労もなく訳される。だが、40年ほど昔にはこれが骨だった。
 結論を先に言えば日本の高校スポーツなどでの表現が参考になった。フットボールのいいサンプルとして日大桜丘、野球でいえば東海大相模。多くの人が知っていた。これと同じような形でカリフォルニア大ロサンゼルスという表記が生まれた。


 「どこが骨だ」と言われそうである。実はここから先の共同通信整理部との丁々発止は大変だった。記事に「ロサンゼルス分校」と手を入れられたのである。「分校を取れ」と私。米国を知る外信出身の整理マンは「バークリーにカリフォルニア大の本部があるじゃないか。だったら分校だろう」と譲らない。
 すったもんだの末「分」の字を取ることで決着を見た。リーグ戦の成り立ちは「TURNOVER」の読者の方々は先刻ご承知である。


 太平洋8大学(当時は8校だった)という組織の中で、UCLAが他の7校と全く同格のチームであること。カリフォルニア大の大学組織に属しているからといって、分校という一段低いネーミングは間違いの元になること。「…キャンパス」という意味の「校」で終わる分にはなんとか許せること。本部のあるキャンパスのチームは「…大」だけで次の地名をつけないこと等々、私も粘り強く「戦った」。あまり多いケースではない。ほかにはテキサス大とテキサス大エルパソといったケースがあるが…。


 今回、本当に書きたかったのは、実は「State University」の表記である。相手は編集の偉い人というより、運動部の同僚であった。
 オハイオ州立大やフロリダ州立大、ミシガン州立大は何ら問題ない。彼らが引っ掛かったのは、西海岸に多いサンノゼ州立大や、サンディエゴ州立大の類だ。「サンディエゴ州とかサンノゼ州という州はないのになぜこう表記するのか」とよく尋ねられた。
 ごもっともである。そもそも私自身、このケースに関しては「100%正しい」とは思っていないのだ。


 少し苦しい。しかし、これは「State University」という言葉を、一切切り離し不可の一つの単語として考えることで、翻訳するときの理屈が通るのではないかと考えている。
 つまりサンディエゴに設立された「州立大」と読まねばならないのである。突っぱねた言い方になるが「これではちょっと」と思う向きはサンディエゴがどの州にあるのか(カリフォルニア州だが)を確かめる以外に、解決しないであろう。


 1部Aのほとんどのフットボールチームは、州立か私立である。そもそも米国には日本のような国立がないのである。まあ陸、海、空の各士官学校が国立となるが、これも識者に言わせると「国防省立」なのだそうだ。
 州立は大ざっぱに見て、アカデミックな「…大」と、実務的な「…州立大」に分かれるという。1部Aの州立大は、ほとんどは州名と一致しているので、都市名の州立大を覚える方が早いかもしれない。以下の6校である。
 ボール州立大=インディアナ州。ボイジー州立大=アイダホ州。ケント州立大=オハイオ州。フレズノ州立大、サンディエゴ州立大、サンノゼ州立大=以上カリフォルニア州。

【写真】米カレッジフットボールも開幕。ハワイ大戦でインターセプトリターンTDを決める南カリフォルニア大のCBショー(AP=共同)