今回のテーマは、今秋の米大学フットボールの勢力分布図である。つまり全米大学体育協会(NCAA)1部上位128校はどこが強いのか。その辺を探って見たいと思っているが、その前に各チームのレギュラーシーズンのスケジュールの組み方をおさらいしておきたい。


 なぜおさらいかというと、こういう仕組みが日本の大学リーグ戦ではまず見られない戦い方だからである。フットボールに限らない。他の多くの競技でも同様である。日米文化の違いと言ってしまえばそれまでだが、このへんのご理解をぜひいただきたい。


 40年ほど昔、慶大OBで、日大、関学全盛の時代に、彼らに伍して全日本のRBとして活躍された後藤完夫さんが、フットボール専門誌「タッチダウン」を立ち上げるときに掲げられたモットーがある。私はそれに深く共感を覚えた。こんな言葉だ。「フットボールを通して米国文化を知ろう」。この試合の仕組みも米国文化の一端を知る好テキストと言える。


 各チームのシーズンの試合数から入る。NCAA1部上位、FBSでは原則12試合である。前年の王者、フロリダ州立大を例にとると、所属する大西洋岸リーグ(ACC)の試合が8試合、リーグ外のチームと4試合を行う。
 ACCの加盟チームは全部で14校。それが7校ずつアトランチック地区とコースタル地区とに分かれる。アトランチック地区に属するフロリダ州立大は、同地区の大学全部と試合を組む。つまり6試合をする。そしてコースタル地区のうち2校と戦う。


 あとの4試合がリーグ外で、今季、フロリダ州立大はビッグ12のオクラホマ州立大、南東リーグ(SEC)のフロリダ大、独立校のノートルダム大といったそうそうたるメンバーと顔を合わせる。
 そして1部下位の南部リーグ(SC)所属のシタデル大と対戦する。フロリダ州立大ぐらいの強豪になると、このほかにレギュラーシーズン終了後に地区1位同士のリーグ優勝決定戦がある。また昨年の例でいえば、全国の王座決定戦と続き、4試合が6試合に増加してシーズンを終えることになる。


 必ずリーグ外と戦う。その結果を通常の成績に必ず組み込む。この考え方が分からないと、米国の大学フットボールを理解できなくなる。つまり各校にとって、リーグ戦以上に大事なカードが、伝統に彩られた歴史豊かな対戦カードがあること。その事実をお互いに認め合っていること。
 総当たりも大事だが、個別の組み合わせもそれに劣らず大事ということ。128校のみならず、1部AAのFCS、2部、3部、別組織のNAIAのほとんどのチームには、そうした「捨ててはならない」試合があることを理解しておきたい。


 前回、アイビーリーグのエール大が、1部Aへの昇格を打診されながら、他の7校との組み合わせを捨てるのを潔しとせず、1部AAへの残留を甘んじて受け入れた話を紹介したが、これなどはその好例と言える。
 なお好選手の入学などを好機と捕らえ、センセーショナルな話題作りに走ることを禁じるために、日程の大筋を4年前から決めておく決まりもご存じだろう。


 さてFBS128校は、10のリーグと独立校4校でスタートする。
 私の手元に届いているイヤーブック(雑誌だが)によれば、ACCのフロリダ州立大、SECのアラバマ大、太平洋12大学(Pac12)のオレゴン大、ビッグ12(Big12)のオクラホマ大といったチームが上位を占め、これをビッグ10(Big10)のオハイオ州立大が追う形となっている。
 各誌とも独自性を出そうと、あれこれ頑張ってはいるが、最終的には似たようなところへ落ち着くのが面白い。


 かつて雑誌を5、6冊集めてそのランキングを集計したことがある。すると記者投票のAP通信、監督投票のESPN、両社のベスト25に大変似通ったものが出来上がった。
 こういうことをやってみて、無意味と取るか、正確なものができる、と取るか、このあたりは、一種の個人的趣味のようなものである。
 ランキングにはもう一度戻ってくるが、その前にどこのリーグが強いのかを、少し検討してみようと思う。


 やり方はリーグ外との対戦成績をトータルするだけである。合計すると、意外に簡単に強弱を示す数字が出てくる。それによると、やはり古くからの、そしてランキングに常に幾つかのチームを送り出しているリーグが、間違いなく上位に出てくる。
 ことしからの新しい選手権試合の4校も、このへんの有力リーグの優勝校が占めるに違いない。有力リーグは五つある。よくご存じの名前で「あー、知ってるよ」という組織ばかりである。ただ並べ方が難しい。


 かつては東から西へ、南へ下がって西進し、太平洋岸へ出るという、雑誌での順番があったが、最近はない。新たにアルファベット順が各誌に登場し始めているのが面白い。雑談はここまでにする。私もアルファベット順に行ってみようと思う。


 まずはACCから。フロリダ州立大がオーバーン大を下した選手権戦を加えて、ACCはボウルゲームを11戦した。その成績を加算して51勝21敗。負け越しを記録したチームはわずかに3で、勝敗差「30」という数字が残る。
 ビッグ10へ行ったメリーランド大の成績は加算、アメリカン体育リーグ(AAC)から加入したルイビル大は外してあるので念のため。


 次はビッグ10。新加入のラトガーズ大とメリーランド大を外して計算、ボウルゲームが2勝5敗と不振だったため、41勝21敗でプラス「20」に終わった。ビッグ12は前回も述べたが、12とうたいながら加盟10校、今季は出入りもなかったので3勝3敗のボウルゲームと併せて、26勝9敗のプラス「17」だった。


 Pac12はボウルゲーム9試合の結果の6勝3敗込みで、38勝10敗。「28」のプラスを記録した。負け越しはカリフォルニア大、ユタ大、コロラド大の3校だが、ユタ大、コロラド大はリーグ外との試合を一つもこぼしていない。
 ここはビッグ12と同様、レギュラーシーズンをリーグ内9試合、外部3試合で戦っている。単純にリーグごとに、数字の大小を比較するのは、そうした意味でまずい。


 南部の雄SECは、ボウルゲームの7勝3敗と併せて53勝13敗プラス「40」の荒稼ぎとなった。14校が東西両地区に分かれ、リーグ戦のロスを外部との戦いで埋めるという形なのは、他の強い組織と同じである。
 この5リーグ、同じような力量の相手とばかり戦うのではないことは、例示したフロリダ州立大のケースを見れば明らかだろう。むしろレベルの低い相手と必ずカードを組むのが普通と見ていい。
 レベルアップのために胸を貸すというわけだ。リーグ外との試合は、伝統の一戦ばかりではなく、こうした「義務」を果たすケースが含まれていることも、認識してもらいたいと思う。このほかどこの組織にも属さぬ、独立校は昨年、29勝23敗とプラス6だった。ここが強いとその年は盛り上がることが多いように感じている。


 レベルの低い他の5リーグも簡単に触れておこう。まず新しいAACは出入りが激しくて、あまり参考にはならないが、ビッグ10へ行ったラトガーズ大らの数字を含めて20勝20敗。これまた新しいサンベルト連盟(SBC)も21勝21敗と五分五分の結果を残した。


 USA連盟(CUSA)はボウルゲームの結果も含めて24勝40敗でマイナス16。中部アメリカン連盟(MAC)はボウルゲームに5戦全敗だったのもあって、21勝38敗、マイナス17を記録した。
 山岳西部連盟(MWC)はボウルゲームが3勝3敗で24勝32敗、マイナス8に終わった。


 最後に現在手元にある雑誌から、ランキングに名を連ねる「有力校」をご紹介する。まずACCのフロリダ州立大。2誌から1位に、1誌から3位に推されて連覇を狙う。もう一つの1位チームはBig12のオクラホマ大となっている。
 ただ他の2誌からの評価はそれほどでもなく、2番手にはSECのアラバマ大が割り込む形だ。4、5位はPac12のオレゴン大と、SECのオーバーン大の競り合い。次いで小差でPac12のカリフォルニア大ロサンゼルス(UCLA)。ようやくBig10の名前が出て、オハイオ州立大が迫る。


 ベスト10にはBig12のベイラー大とSECの南カロライナ大、Pac12のスタンフォード大の名が挙がり、SECのジョージア大が続く。
 このほかBig10からはミシガン州立大、ネブラスカ大、ウィスコンシン大。独立校ではノートルダム大の名も出てくる。


 SECではジョージア大、ルイジアナ州立大(LSU)、ミシシッピ大、フロリダ大、テキサス農工大といったチームが続々と名乗りを上げているが、Pac12は南加大、ワシントン大、Big12はテキサス大が来る程度。ACCにいたっては、フロリダ州立大以外は全く声がかからぬ状態である。

【写真】昨季、全米王座を獲得したフロリダ州立大(AP=共同)