春のオープン戦にうつつを抜かしている間に、早くも米国のフットボール雑誌が丸善や紀伊国屋の店頭に並び始めた。私としてはこれがないと商売にならない。早速に買い求め、点検に取り掛かっている。
 昨年米国のカレッジフットボールの担当を仰せつかり、10年ぶりにそのノウハウを古ぼけた頭の片隅から引っ張り出しながら1シーズンを過ごした。


 10年前に比べて、がらりと変わっているわけではないので、昔取った杵柄でしのいできたが、それでもリーグ内の変動や、仕組みの一部分などが、適当に変わってきているので、10年分の細かい作業は欠かせなかった。
 また毎年の変化を、その都度チェックしていれば、それほどのこともないのだが、まとめてするとそれなりの手間がかかった。今年は仕事復帰2年目。昨年ほどのことはあるまいと、高をくくっている。


 なお「リーグ」はカンファレンスとするのが妥当だが、長すぎるし、日本ではリーグという表記になじみがあり、分かりやすいので、これからも大体は「リーグ」で通す。ご理解を賜りたい。


 さてことし2014年の最大の変動は、昨年までの一発勝負の「王座戦」が、いよいよ勝ち抜きの「選手権戦制」となることだろう。出場は4校で「有識者」の委員会で選び出され、今年度は2015年1月1日のシュガーとローズ両ボウルで準決勝。1月12日(月)にテキサス州アーリントンで決勝戦を行う。
 選出に至るまでの道のりは、これまで通り各種さまざまなランキングに基づくのは確かで、従来と大同小異のペナントレースになりそうである。


 ともかく開幕に先立って、米国の大学フットボールの基礎的な知識をおさらいしておくのも悪くはあるまい。
 まず大学フットボールを統括する組織は二つである。一つはご存じ全米大学体育協会と翻訳されるNCAA。もう一つが全米大学対抗競技協会との訳語を持つNAIAである。もっともNAIAが話題に上ることはまずない。


 さてNCAAだが、これは1部から3部に分かれる。私たちが取り上げて、やれ強いの弱いのと御託を並べるのは、1部の、それも上下に分かれた上のグループに限られる。数でいったら比べものにならないが、この秋の関東学生アメリカンフットボール連盟の、トップ8とその下のビッグ8のようなものである。


 昔はこの上位をA、下位をAAと呼んでいた。しかし、今では1部Aだったのを「フットボール・ボウル・サブディビジョン」略してFBS、1部AAを「フットボール・チャンピオンシップ・サブディビジョン」略してFCSと呼んでいる。
 略称を並べると途方もなく分かり難いので、時折1部A、1部AAで便宜上区別することがあるのを、お許し願いたいと思う。


 FBS、つまり1部Aは今年度は128校が名を連ねる。昨季はとりあえず125校としてきた。3校の増加である。増加というより昇格といった方が、わかりやすいかもしれない。
 校名を書く。一つはバージニア州のオールドドミニオン大。昨季はFCS(旧1部AA)の独立校だったのが、今季からUSA連盟(CUSA)に加入し、東地区に属することになった。
 あとの2校はAAの南部リーグ(SC)に所属していた北カロライナ州のアパラチアン州立大と、ジョージア南部大で、ことしから新興のサンベルト・リーグへ加盟することになった。


 FCS、1部AAの方は、米国の週刊スポーツ誌「スポーティング・ニューズ紙」が発行する雑誌から大ざっぱに拾い上げた。大学フットボールのいわばイヤーブックで、巻末にある試合日程表の大学を数えたら123校になったので、これを今季の1部AAの校数とするつもりである。
 もちろん他に新しい資料が出てきて、数え直すことができれば直ちに訂正するつもりである。


 1部校の「肩書」を誇る大学は、こうして合計251校ということが分かるが、2部、3部、それにNAIAとなると、向こうの雑誌にも数字が出てこないので、お知らせすることもできないのが実情である。
 まだ私が若かったころ、多分タッチダウン誌だったと思うが、詳細に調べて各セクションの加盟校数を出したことがあった。
 当時、4年制大学のフットボールは「700校」とされ、放送などでもこの数字が使われていたが、数えて見ると、すべてを合わせて700には少し、届かなかったのを覚えている。
 少しマニアックなところがあるので、数字のフォローなどは嫌いではないが、こうした「労多くして功少なし」といった作業はやはり辛い。


 基礎編をもう少し続けよう。この最上位のグループ128校は、10のリーグと4校の独立校に分かれる。なお次位のFCSは13リーグと独立校5で成り立っている。
 米国のリーグは1部、2部を問わず、原則として各大学の体育局が集まって作り上げている組織で、フットボールチームは他のスポーツチームと一緒に、その体育局の一員として活動する。
 例えば「A」というリーグは、加盟する大学で行われているスポーツ全部のリーグでもあるのだ。フットボールは言うに及ばず、野球、ゴルフ、テニス、バスケットボールなどのリーグ戦や競技会は「A」というリーグ名でまとまる。


 この辺が日本の大学スポーツとは違うところだ、ということを理解していただければありがたい。掘り下げると記事が終わらなくなるので、ここまでにするが、いわば日米の文化の違いが読み取れよう。


 さて10のリーグだが、各大学体育局のさまざまな政策や考え方で、出入りの激しいリーグ、ほとんど同じメンバーのリーグ、と年によってこれまた変化がある。強い弱いを語る上でリーグのメンバー構成をないがしろにはできない。
 開幕前には必ずチェックをしなければならない項目で、基本の中でも一番気を使うところ、といってよい。


 名門リーグからいこう。中西部の雄「ビッグ10」は今年、変化が目立つ。毎年同じ形なので、少し変えただけで人目を引く。まず久しぶりに参加校が増えた。
 大西洋岸リーグ(ACC)からメリーランド大が、アメリカンリーグ(AAC)からフットボール発祥で名高いラトガーズ大がそれぞれビッグ10入りした。
 12校が14校になり同時に「リーダーズ」「レジェンズ」といった気取った名前の地区が、あっさりと東西7校ずつの地区となり、大学の入れ替えも行われた。


 「リーダーズ」のオハイオ州立大、ペンシルベニア州立大、インディアナ大の3校に、「レジェンズ」のミシガン大とミシガン州立大の2校、それに新入りの2校が東地区。残りの「レジェンズ」のネブラスカ大、ミネソタ大、アイオワ大、ノースウエスタン大の4校、「リーダーズ」のウィスコンシン大、イリノイ大、パーデュー大の3校が西地区に回った。


 このほかの強豪リーグは「ビッグ12」の10校、太平洋12大学の12校、南東リーグ(SEC)の14校、いずれも昨年のままで、変動はなかった。
 変化があったのはACCである。アトランチック、コースタルの2地区制だが、アトランチックに移動があった。先ほど述べた通り、メリーランド大が抜け、変わってAACで好成績を挙げたルイビル大が加入した。
 フロリダ州立大が全米チャンピオンになるなど、高水準のリーグだけに見逃せないものがある。


 ルイビル大、ラトガーズ大の2校が去ったアメリカン・アスレチック・リーグ(AAC)は、CUSAから東カロライナ大、チュレーン大、タルサ大の3校を迎え入れ、1校増の11校でレースを展開する。
 その3チームに去られたCUSAは、サンベルト・リーグ(SBC)から西ケンタッキー大と、先に述べた昇格組のオールドドミニオン大を加え、東地区7校、西地区6校の計13校でレースを繰り広げる。
 ミッドアメリカン・リーグ(MAC)は昨年同様の布陣、13校で臨み、山岳西部リーグ(MWC)も山岳、西部両地区に6校ずつ振り分けて戦う。


 新興のサンベルト・リーグ(SBC)は西ケンタッキー大が去ったものの、先に述べたジョージア南部大、アパラチアン州立大の2校の昇格と、ニューメキシコ州立大、アイダホ大の独立校2校の加盟を見て、差し引き3校増の11校で秋に臨む。
 昨季6校だった独立校群は、2校が組織入りして、元の4校に戻った。念のため校名を書いておく。ノートルダム大、ブリガムヤング大、陸軍、海軍の両士官学校である。これもまた日本にはない米大学独特のありようなのだ。

【写真】ユタ大のRBラドリーを追走する南カリフォルニア大のDBショー=2013年(AP=共同)