5月25日にEXPOフィールドで関学―関大の試合を堪能した。この春観戦した東西の学生の試合の中で、最も濃いと感じられた試合だった。


 東西の日程が発表されるとすぐ、私は西ではどの試合を見ようかと、点検を始めた。関学OBとしてはいくつか候補があり、同期の木谷直行さんからは「決めたらなるべく早く連絡をくれ」と、メールも入った。
 最終的に24日と25日のゲームに絞り込んだ。そして今、実にいい選択だったと思っている。24日は近大―同大、京大―立命。25日が神戸大―龍谷大、そして関学―関大で締める。


 関西学生リーグ1部8校を見ることができる上に、2日間4試合のメーンイベントが関関戦。その上、昨秋予想外の結果を生んだ京立の再戦もある。大売出しではないが、「お得感」がたっぷりとあった。


 この日、木谷さんは、同じ時期に明大のエンドとして活躍した土屋宗光さんを誘っていた。土屋さんは一度「TURNOVER」に登場してもらったが、この春召天した同期の大藤努さんの「好敵手」で、近年はまるで同窓生扱いだった。
 私たちが語る、勝手気ままなフットボール論がお気に召したらしく、気さくにお付き合いをいただいている。という次第で私を含めて80歳前後のベテラン三人が関学の応援席の真ん中に陣取り、年甲斐もなくわめいていたのだから、フットボールとは面白いスポーツである。


 そんなわけで、今回は関学OB丸出しの観戦記になった。編集長お許しを。


 近年、関学にとって、春最大の相手として常に意識せざるを得ないのが関大である。もちろんこの時期には、両校の体育会にとっての重要なイベント「総合関関戦」がある。
 この日の対戦もそのトップを切る試合として位置づけられていた。伝統のある対校戦というのは、各大学それぞれにとって、それなりの意義がある。もちろん以前から関学は「関大を倒せ」とげきを飛ばし、関大も「関学を倒せ」と応じてきた。


 しかし、ある時期から、そのようなきれいごとでは収まらぬ空気が立ちこめるようになってきた。最近5年間の春の成績は、関学4勝、関大1勝である。関学優勢とはいえ、中身は厳しい。
 関学から見て、昨春の勝ちは21-20と1点差だし、2012年春は30―34で黒星をつけられた。09年も11―10と1点差の辛勝。
 もう少しさかのぼろう。 08年は3―0、06年は16―10の接戦だった。つまり、ヘッドコーチの板井征人さんが、指導者として関大に迎え入れられてから、関学は関大に勝つ難しさに真正面から向き合うことになった。


 板井さんは90年代初めの京大で活躍。1992年の甲子園ボウルではTEとして5年ぶりの勝利に貢献した。1993年には主将。卒業後は鹿島ディアーズでWRとしてプレーした。
 97年から00年まで、欧州のプロチームでレシーバーとして活躍。帰国後鹿島でコーチをしていたが、06年に関大にコーチとして招かれ、09年にはヘッドコーチとなった。この年関大を61年ぶりの関西制覇に導き、甲子園ボウルも大逆転の末に制した。指導者としての実績は、改めて言うまでもない。関関戦が面白くなってきたゆえんである。


 夕方の5時から始まった試合は、最後のエール交換が終わると、7時半だった。いつの間に2時間半が過ぎ去ったのか、まったく気がつかなかった。飛び上がった。モノレールの駅へ急ぎ、最終の「ひかり」に辛くも間に合うという始末だった。
 スコアは関学が38点で関大が14点。結構一方的な点差である。チーム記録も大ざっぱに見ると、ダウン更新が関学の21に対し、関大はわずかに8度。前進距離は関学が397ヤードと、400ヤードに近いのに比べ、関大はわずかに115ヤードに終わっている。


 内訳も関学がラン168ヤードで関大は95ヤード。パスは関学が33本投げて18本成功の計222ヤード。関大は20本でたった4本の成功、1本はインターセプトの憂き目を見、前進距離はまさかの20ヤード。
 この数字を基礎に置いて戦評を書いたら、関学のワンサイド勝ちということになる。しかし一方的などとは、とんでもない。
 そもそも帰りの時刻が念頭からすっ飛んでしまうほどの興奮を味わったではないか。数字に表れなかったもの、それがこの試合の醍醐味といえる。


 それが何だったのか。思いつくままに一つずつ取り上げてみる。まずは終始、この試合に張りつめていたものがある。緊張感である。
 私は昔から、「体をぶつけ合うスポーツ」にはフィールドから自然に立ち昇ってくるものがある、と言ってきた。スポーツ記者として長年生きてきた者が実感として感じる「何か」である。


 この「何か」が多いゲームほど面白いし、中味が充実している証拠となる。これをつかみとれる感受性を養うことが大事、などと若い人に言ってきた。
 体の接触のないスポーツもたくさんあって、その手の競技はそれなりに記者が深い知識や見る目を養う必要がある。コンタクトの多いフットボールは、その意味で向こうから多くの「何か」が押し寄せてくるので、実に親しみやすいスポーツといえる。


 こうした点からこの試合は、初めから緊張感に満ちあふれていた。理由はいろいろ考えられるが、最大の理由は両校選手の一生懸命さ、であろう。手抜きがなかった。常に全力だった。


 終了30秒前、関学は2年生のDB小池直崇君が、関大のQB岸村恭吾君が投じたパスを、まるで自分がレシーバーであるかのような自然さで奪い取った。この試合唯一のインターセプトだった。
 試合後の関学のブログに「狙っていたインターセプトだった」と、素直に喜びを語っていた。つまり先発メンバーとして最初から出ていた選手が、最後まで切らすことのなかった集中力に注目するべきだろう。終盤まで持続した両校の緊張感の実例として、取り上げておきたい。


 それにしても関大が終始見せた攻守のラインの強い当たりは、特筆ものだった。併せて正確な、もちろんこれも鋭く厳しいタックルも、このゲームにかける意気込みの表れと見ることができる。
 関学は第1Q、5分間にわたる自陣14ヤード線からのドライブで、2年生の西岡慎太朗君が32ヤードのFGを決めて先取点を奪った。しかし、関大陣9ヤード地点第3ダウンで、関大のDB松田優一朗君が見せたブリッツが関学のTDを阻み、FGに追い込んだ。この抵抗ぶりも、当然といえばそれまでだが、緊張感の持続を生んでいる。


 第2Qに入って関大が見事な反撃を見せた。自陣44ヤード地点からのTDドライブである。第3ダウンでのダウン更新を狙った「第3ダウンコンバージョン」に3度挑んで、すべて成功。並の力ではない。
 最初は岸村君がこの試合で最初に決めた2年生のWR米田峻輔君へのパスで19ヤード、次は2年生のRB地村知樹君のドロー、そして岸村君のラン。関学ゴールへ迫って、12プレー目、岸村君がRB坂口宗功君へフラットのパスを決めて逆転した。
 3―7とされはしたが、ここで一気に点を取り返すあたりがわが母校である。このへんがいつでも誇らしい。


 逆転ドライブは自陣25ヤード地点から。QB斎藤圭君がWR樋之本彬君へのパスを決め、第3ダウンに斎藤君自ら走って攻撃をつなぎ、続く第3ダウン6ヤードはWR水野良祐君へのパスがきれいに通って関大陣35ヤード地点へ。
 さらにWR森岡優君への21ヤードのパス。最後は2年生のTE杉山大地君への16ヤードのTDパスが通った。約4分を費やしたこのTDマーチで、関学は10―7と主導権を取り戻した。


 後半はQB伊豆充浩君が4度のTDドライブを演出して、次第に差を広げて勝負を決めた。うち3本はパスプレーだった。
 田中雄大君の好リターンから関大陣48ヤード地点で始まった攻撃はたった3プレー。樋之本君がミドルパスを取って17―7。第3Q終わりには左のサイドラインをそのまま縦に上がる2年生のWR芝山拓哉君へ、伊豆君が目も覚めるような正確な44ヤードのロングパス。
 関学の応援席の目の前で演じられたこのTDプレーはこの日のハイライトと言っていい。パスばかりでは、と第4Q2分34秒には、2年生で進歩著しいSB橋本誠司君が8ヤードを突き抜けてTD。


 関大もキックオフリターンで地村君が85ヤードを走り切ったが、この直後、関学はまたも速攻を見せ、5プレー目に伊豆君から森岡君へのTDパスで38―14とした。
 キックオフリターンはあまり気持ちのいいものではない。だが、「取られたら取り返す」というのが2度あったのは、苦戦の中でも一服の清涼剤か。


 最後に岸村君のことをもう一つ書いておきたい。秋、関学はこのQBに苦しめられるのではないか、との危惧がある。この日、あまり品のいい言い方ではないが、とうとう「本性」をあらわにした、との印象を受ける。
 本来はいい脚力を持った選手、と聞いていた。しかし、これまではその片鱗さえ見せてもらえなかった。しかしこの日はベールを脱いだ。いいスピード、いい身のこなしである。今後の活躍が楽しみ、と言っておこう。

【写真】近年好ゲームが続いている伝統の「関関戦」=撮影:山岡丈士、25日、EXPO FLASH FIELD