春のオープン戦が始まって、ほぼ1カ月がたった。秋のリーグ戦に向けての各チームの調整が続いている。5月17、18日は調布のアミノバイタルフィールドへ日参した。一番重きを置いたのは、無論17日の早大―立命大の試合である。


 「自己中」丸出しで申し訳ないが、やはり立命大の力のほどは、知っておきたい。妙な理屈になるが、そのために毎年昭和の日に、駒沢陸上競技場で開かれる早慶戦を見ている。
 この2校とそれぞれの他チームとの、対戦結果、対戦状況、対戦内容などを比較検討して、「その相手」チームの戦力を計る物差しとしてきた。となれば、今回この物差しを使わなくてどうする、ということになる。


 早大だが、近年はオーソドックスで、投げる、走るのバランスが取れた攻撃力がいいチームと認識している。早大学院高を指導し、全国制覇の実績を積んでこられた濱部昇さんの力であろう。
 昨年の春の早慶戦、自陣深くからの最初の攻撃で、粘り強いドライブを見せて慶大の出鼻をくじいたシーンは、早大の新しい姿を見るように思えた。


 位置はフィールドの中盤、慶大のチャージを浴びて、第3ダウンロングに直面したのを打開した一本のロングパス。このプレーを選んだことよりも、このプレーを通すことの、つまりドライブを続けることの重要性を、攻撃チームがはっきりと自覚。一丸となってことに臨んだのを、スタンドから拝見して「あ、これでこの日は決まり」と感じたのを思い出す。
 もっとも、このプレーコールのパターンを「形だけ」秋のリーグ戦に持ち込んだのは、ちょっと工夫が足りなかったのではないかと惜しんでいる。


 ことしはQBの政本悠基君の短めのパスと、吉原猛君と井本浩平君のランで慶大と渡り合ったが、慶大のQB高木翼君の強力なパス攻撃を阻めず、点の取り合いの末1TD差で負けている。
 とにかくAクラスであることは間違いないチームなので、関学大のライバル立命大の戦力を裸にする上で、最適のカードではあるまいか、と期待した。その通りだった。多少のズレはあるものの、おおむね私の希望はかなうことになった。


 立命大は開始2分、DB長尾知哉君が早大の笹本君のパスを奪って攻め込み、3分過ぎにキッカーの栃尾優輝君が42ヤードのFGを決めて3点を先取した。TDは阻まれたものの、実力が競り合ったこうした試合では、先取点は大きい。
 この後、立命大らしいドライブを私は期待した。しかし良かったのはこれだけだった。この第1Q、立命大は2度攻撃権を得たものの、ドライブは実らなかった。
 原因は一つ。センターのスナップが悪かったのである。


 「低いな、あ、また低いな」。観戦仲間と言葉を交わしながら、少しひやひやしていたが、とうとうドライブの途中で、QBが取れないボールがスナップされた。代わったセンターも同様だった。もちろん低いのがいけないと言っているのではない。果たしてあのスナップはQBが要求していた通りのものだったかどうか。


 センターというポジションは、昔から(ほらまた昔が出たぞ)まともにやって当たり前。ミスは決して許されない、因果な役割とされてきた。つまりきちんとスナップするかどうかがすべてで、スナップミス一つでそのプレー全部がダメになる。
 重ねて言う。スナップできるかどうかの技術上の問題ではない。センターなら皆できる。できねばならない。今から、自らのスナップで開始されるこのプレーが、スナップをしくじるとどうなるのか、その想像ができない者はセンターの資格がない、ということなのだ。


 ミスするとダウンが一つ無駄になる。チームメート10人の動きが無駄になる。チームのプランが無に帰す。このような自覚を持っているかどうか。そのような責任感を持ってスナップしているかどうか、に尽きる。
 半世紀の昔に、中学、高校、大学と8年間をシングルウイング時代を含めて、センター一筋でフットボールに打ち込んできた男が言うのだ。間違いはない。


 できないのなら試合に出てはいけないし、出してもいけない。出られるようになるには、練習しかない。センターとはそういう役割なのだ。
 お説教たれて、この問題はこれでおしまい。悔いている選手にこれ以上追い打ちをかけるほど、私は悪人ではない。


 試合に戻る。ペースをつかみ損ねると、こうなるのか、といった典型をこの後バックスタンドから存分に見た。
 6分過ぎ、早大は政本君に代え、1年生の坂梨陽木君を投入した。テンポの良い攻撃が印象に残る。最後はゴール直前から吉原君にボールを持たせてTDを挙げ、逆転した。
 TFPはブロックされたが、第2Qの4分過ぎにはキッカーの佐藤敏基君が44ヤードのFGを加えて9―3。さらに8分ごろには坂梨君が、リズム感のあるドライブからWRの西川大地君へ、30ヤードのパスを通してTDを追加した。


 立命大はQB前田寛二君のパスで反撃を試みたが、まったくの不発。というよりそこへ前田君を追い込んだ、早大のディフェンスを褒めておきたい。
 この守備陣、慶大戦ではQB高木君に届かなかった。その結果が大詰めの失点につながった。高木君ほどのパスをDBだけに任せるのは荷が重い。やはり守備ラインのQBへのプレッシャーが同時に必要である。そこでこの3週間、こうした反省に立ってパサーへのラッシュに努力を重ねたのではあるまいか。


 執拗なラッシュであった。効果は上々だった。前田君はサックを避けるため、ポケットへ逃げ込まざるを得なかった。腕の当たりそうな狭い場所からのパスはコントロールが乱れた。時にはロールアウトも試みたものの成果は上がらなかった。前へ前へ出てくる早大のDLには余裕があり、立命大のランプレーも難なく止めた。


 立命大は第2Qの終盤、前田君からWR中野誠也君へロングパスを決めてTDを奪った。だがTFPに失敗。原因はまたしてもセンターのスナップミスだった。
 一方早大はこの直後、3人目のQBとして内村竜也君を投入した。タイムアウトをフルに使って立命大ゴールへ迫り、残り17秒で4ヤード地点からRB吉原君へのパスを決めて23―9とリードを広げた。


 ここまでの早大はいいリズムの攻撃陣が成果を上げた。守備陣も粘り強い守りを見せた。監督の濱部さんにしてみれば、流れを引き寄せた早大学院高出身の1年生QB坂梨君を軸に、手慣れたプレーを思い通りに繰り出せたのではあるまいか。
 一方の立命大は、後半最初の攻撃を、粘り強くつないで攻め上がった。途中第4ダウン・ギャンブルの成功まで織り込んだ、懸命のドライブだった。消費した時間も9分近く、最後はTBの長谷川航平君が1ヤードを突破して、16―23と早大を1TD差の射程距離に置いた。


 だが、反撃はここまでだった。後半は守備が立ち直り、長尾君のインターセプトなど、転機はたくさんあった。早大を0点に抑えたものの、結局この後も攻撃陣が切れを欠き、期待されたロングドライブも不発に終わった。無論この日の早大守備陣の忠実なプレーぶりは高く評価せねばなるまい。
 ほかの試合も目に付いたものは多かった。でも早大―立命大を今回の「テーマ」にしたい。


 日大は4年生が丸坊主になって桜美林大と戦った。前回触れた名城大戦の空回りの反省だろう。昔からそうだが、真面目なチームである。日大は実力差がある試合では、自らに課題を課してゲームに臨んでいるのだと思う。
 攻撃では全ドライブで得点、ノーパント。守備ではノーファーストダウンや、50ヤード線を越させない、といったような課題だ。そんなことを考えていなくとも、見る方が勝手に「課題」をつくるのも面白い。


 同じ18日の立教大と横浜国立大の試合は、立教大の主将でRBの茂住雄太君の力走が光った。昨季の好成績を今季に結び付けようと、懸命な試合ぶりが好感を呼ぶ。
 横浜国立大も後半の初めに絵に描いたようなTDドライブを見せて、立教大を慌てさせた。こうした内容のある場面こそが、ファンを呼ぶのである。

【写真】昨年、主将として早大学院高の高校選手権4連覇に貢献した、早大の新人QB坂梨(右)=撮影:seesway、2013年、味の素スタジアム