米国のスポーツは変化に富んだ試合の仕組みを、実にいろいろと考える。ありきたりのやり方だけで「これしかない。どこが悪い」と開き直りかねない日本の競技団体とは、雲泥の相違である。


 共同通信の東京運動部へ転勤してすぐ、海外の雑誌から材料を拾っている仲間の記者が結構多いのに気がついた。上智大出身でフットボール担当の方は、米国のスポーツ誌「ストリート・アンド・スミス」のプロとカレッジの両方の版を使っていた。「スポーツ・イラストレイテッドじゃあないんですか」と声を掛けると、「こっちのイヤーブックの方が、外電を翻訳するときに役に立つんですよ」と答え、「イエナで簡単に手に入るし」と付け加えた。


 学生時代に洋書といえば日本橋の丸善しか知らなかった私は、銀座の新しい洋書の店を知らなかった。行ってみた。彼が持っていた雑誌が、表紙をこちらへ向けて棚に立っていた。求めた。そして虜になった。


 プロはリーグごと、カンファレンスごと、ディビジョンごとにそれぞれのチーム紹介、選手紹介があり、分かりやすい日程がついていた。大学はメジャーの大学に絞って、地域ごと、リーグ(カンファレンス)ごとに、選手にピントを合わせたチーム紹介があった。
 雑誌の一番後ろには、そのたくさんあるチームの日程が、アルファベット順に一覧表になっていた。現実には7、8ページに割り振られているのだが、日付を追ってみると、結構分かりやすかった。


 これなら、これがあれば外電を担当しても、フットボールなら何とかやっていける。そう思った。この当時はあまり必要なかったが、バスケットボールでも大リーグの野球でも、雑誌1冊を参考書にして作業ができた。
 雑誌を手に入れて、真っ先に試みたことがある。日程の整理である。162試合もある大リーグなどは試みる気はさらさらなかったが、NFLの16試合はすぐできて興味深かった。カレッジは一校がたかだか11試合ながら、どのような相手と試合を組んでいるのかという興味があった。1部すべてのチームのスケジュールを、丹念に拾い上げてリーグごとの一覧表に仕立て上げたのが懐かしい。


 当時、日本のプロ野球では、セはセ、パはパだけで試合を組み、現在のようなリーグ間の交流戦は行われていなかった。ところが、NFLを調べてみるとカンファレンス間での交流、ディビジョン間での交流が、普通の形として行われていることが分かった。
 NFLとAFLの合併が実現した1970年からは、互いの交流は当然のように行われた。そしてレギュラーシーズンが終わると、さっとプレーオフに切り替え、トーナメントの準決勝、決勝がNFLファンを大いにわかせ、そしてスーパーボウルを迎えるというスケジュールが展開された。


 各週に行なわれるリーグ戦の、ち密な順位争い。つまりプレーオフ出場の権利を狙う駆け引きの面白さがあふれている。次に、負けたらハイそこまでのスリルにあふれるトーナメントが、別の面白さでファンを引きつけた。
 リーグ優勝からいきなり日本シリーズという、当時の日本のプロ野球に慣れた人間にとって、大詰めで展開する変化に富んだレースには、感じ入るものがあった。
 念のため付け加えておく。今では何の不思議もないやり方である。何を感心しているのだ、と言われたら言葉はない。しかし、1960年台後半から70年台前半までは、勝ち抜き戦だったら勝ち抜き戦、総当たりだったら総当たりといった単調な仕組みの大会ばかりだった。


 こうして米国のいろいろな競技団体が、いろいろなやり方をすることが分かりだしたころ、若い記者からこんなことを聞かれた。「カウボーイズはコルツやブラウンズとも試合するんですね」
 NFCのチームがAFCのチームと戦う。当時はこうしたやり方が疑問に思われた。プロ野球のセ、パ交流戦に沸き立つ今は、AFCのコルツと、NFCのカウボーイズが試合をしても、だれも不思議に思わず処理してしまう。
 半世紀近くたつとこうも変わってくるものか、と思う。で、いつまでも感心していないで、本題にかかろう。


 全米大学体育協会(NCAA)がフットボールの王者を、選手権試合で決めるようにしたのは、ついこの間のことである。2006年度からランキングに基づく1位校と2位校が全米のチャンピオンを争う。はっきりと勝負をつける。開催地は4大ボウルで使用するスタジアムのどれかを、回り持ちで使う。そして、この形の選手権戦は今年まで8回続いた。今回、フロリダ州立大がオーバーン大を倒して王座に就いたことは、先だって書いた。そして来季から、2014年度から形式が少し変わる。


 出場校が4校になる。つまりベスト4の勝ち抜き戦だ。準決勝2試合が行われ、勝者が決勝戦に臨む。日取りは大晦日と元日、各1試合が行われる。決勝戦は準決勝第2試合の後6日を数え、そこから最も近い月曜日、に設定される。
 くどくなるが、ここで言っておかないと、ここから先誤解を生むことが出てくるかもしれない。なので、一つ念を押す。NCAAは原則として日曜日には試合をやらない。もちろん宗教的な理由による。わざわざ「月曜日」と選手権試合の規約で表明するのはそのためである。


 もしお手元にどこかのボウルゲーム、ローズでも、シュガーでもプログラムをお持ちなら、あるいは「スポーツ・アルマナック=年鑑」でもいいが、ボウルゲームの各年度成績の一覧表で、開催日をご覧になっていただきたい。大半は1月1日だが、ほぼ6年おきに1月2日となっているのがお目に止まるはずだ。確かめるまでもないが、2日となっている年は、元日は日曜日である。
 もう一つ、試合はプロでもカレッジでも1週間に1回、という原則があるが、これは事々しく言う必要はあるまい。決勝の日取りは早くて1週間後、最も間隔が開いて13日後となる。14年度は12月31日が水曜日、1月1日が木曜日、なので決勝戦は12日だ。


 使用するスタジアムは、これまでの4大ボウル、ローズ、オレンジ、シュガー、フィエスタのほかに、新しいコットン。それにその昔ピーチボウルといっていた、チックフィルエーが加わり、全部で6か所。今回はルイジアナ州ニューオーリンズのシュガーとカリフォルニア州パサディナのローズで準決勝、テキサス州アーリントンのAT&Tスタジアムで決勝戦が決まっている。


 さてこの4チーム、どのように選ぶのか。これまではコンピューターを使ったランキングで選手権戦に出場する1、2位を決めていた。だが、4校ともなるとそうもいかないらしい。
 あらためてフットボール関係の有識者の「目」で決めることになった。そして昨秋、10数人からなる選定委員会が発足。いよいよ本格的な選手権試合が、NCAAフットボールの1部Aでも始まることになった。


 フットボールの選手権大会は1部AA以下では前から行われており、AAでは1978年に4校選出の形で始まっている。大会規模は81年に8校、82年から12校、86年に16校となって今日に至っている。
 レギュラーシーズンが終わってからの日程だということを考えると、16校だと4日間、つまり4週間が限度であろう。これからこの1部Aの選手権大会が参加校数を増やすのかどうか、興味深い。

【写真】全米選手権でチームを逆転勝利に導いたフロリダ州立大のQBウィンストン=6日(AP=共同)